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医師転職ドットコム医師のキャリアをとりまく環境・未来 > 医師と医療経済 第14回

医師のキャリアをとりまく環境・未来

真野医師

真野 俊樹

1987年名古屋大学医学部卒業。医師、医学博士、経済学博士、日本内科学会専門医、MBA。臨床医を経て、95年9月コーネル大学医学部研究員。外資系製薬企業、国内製薬企業のマネジメントに携わる。その後、昭和大学医学部(病院管理学担当)専任講師を経て、現在、多摩大学医療リスクマネジメントセンター教授。

医師と医療経済 第14回 (海外の医療と医師 Part2

 

前回は、発展途上国であるタイの医師を考えてみました。一言で言えば、こういった国々では医師は尊敬の対象であり、高収入でありました。

引き続き、こういった国の医療を覗きながら医師の立場を考えて見ましょう。今回はシンガポールです。

シンガポールは、東南アジアのマレー半島南端に隣接するシンガポール島を領土とする都市国家。16世紀以降、東南アジアの交易ルートを制するシンガポールの地理的重要性に着目したイギリス人のトーマス・ラッフルズが1819年近代的なシンガポール港を開き、1826年イギリスの海峡植民地となり、以後、東南アジアの要港として発展を遂げました。

同じ名前を冠しているものに、私的病院グループであるラッフルズメディカルグループがあります。ラッフルズホスピタルは380ベッド、シンガポールにおける40あまりのクリニックと、香港で6つのクリニックを運営しているラッフルズメディカルグループの病院です。

430万の人口のうち、75.6%が華人(中国系)です。シンガポールはタイに比べれば、かなり先進国です。1人当たりGDPは23,700ドルで、タイの10倍近いのです(なお、マレーシアはタイの2倍弱、ベトナムは4分の1強)。東南アジアの先進国ですし、1人あたりGDPについては韓国や台湾よりも大きいのです。

日本では観光のイメージが強いですが、金融や商業の街です(国といっても、都市国家ですが)。

また、日本との因縁があります。

1941年12月8日に太平洋戦争が始まると、シンガポールは山下奉文中将が攻撃。この攻撃は1942年2月7日に開始され、同地を守るイギリス極東軍司令官パーシバル中将が無条件降伏した2月15日に終わりました。この後、日本による軍政が敷かれ、シンガポールは「昭南島」と改名されました。

1945年8月に太平洋戦争が終結、日本の敗戦によりイギリスの植民地支配が回復され、1963年にマレーシアの一部として編入されましたが、1965年に連邦から追放される形で都市国家として分離独立しています。

反日ということはないのでしょうが、戦争について触れた博物館も残っています。ただ、日本に学ぶという姿勢は強く、私たちもよく訪問しますし、逆に日本に来て講演をもらったりもしています。

2001年の国民医療費は7.6ビリオンシンガポールドル(1シンガポール・ドル=78.79円(2007年1月21日現在))で6000億円くらい、国民医療費はGDP比でみて3.8%となっています。アメリカが約14%、日本が約8%、シンガポールはさらにその中の政府負担はわずかに、1.8ビリオンシンガポールドル、0.9%ですから、日本の、約7%(社会保険含む)と比べればとても少ないのです。

この医療費の少なさはひとつには高齢化が進んでいない、若い国であるということが挙げられます。

さらに、医療費は基本的に個人負担となっており、政府は基礎的な医療しか責任を持たない仕組みです。個人による貯蓄を個人で利用するシステムを政府が管掌している点で、社会保険の枠組みで個人から徴収し資金を公的に配分する日本の医療保険システムと大きく異なっているのです。日本においては、公的保障の観点から医療コストに対する意識が薄く、医療費抑制が働きにくい側面がありますが、シンガポールでは個人の積み立てによるアカウントを個人で利用する観点から、医療費の抑制や医療サービスの質でシビアに医療機関を選択する傾向があるように思われます。しかし、一方ではこれは格差医療につながっています。

医師

医師は高給です。次回にお話をする韓国もそうですが、日本の勤務医よりは給与が多い勤務医も多い、と想像されます。

理由は大きく分けて二つあります。病院での人事評価が厳密でありかつ適正という点、もうひとつは、これは病院によりますが、高額な医療を行っていて収入が多い病院があるという点です。

人事評価は厳しいです。もちろん勤務医のアルバイトは認められません。日本やタイの一般的な病院とは異なり、経営者は経営者として位置づけられています。言い換えれば、お手盛り的な経営はしていません。

また、独立はしましたがイギリス連邦の一員です。歴史を反映して英国で勉強する医師が多いのも特徴です。

日本でも公立病院の民営化が話題になっていますが、シンガポールでは1990年代から、国立病院を民営化しています。今では、2つの病院グループに分かれて運営管理をしています。2000年代になって最後にアレキサンドラ病院が民営化され、病院はすべて民営になりました(もっとももともと数が少ないです、アレキサンドラ病院が属するNHGというグループでは4病院、1センターです)

また、単に民営化すればいいというものでもなく、質の管理も厳密です。たとえば、民営化された病院はISOの取得やBSCの導入、シンガポール・クオリティ・クラブ加盟、といった努力をしています。

このような歴史を経て、近代経営が成立したのです。

開業医に関しては2種類あります。上述したラッフルズグループのように民間病院と提携している医師、この場合にはアメリカと同じように自らもオフィスを持ちますが、病院の施設を利用し、自ら執刀することもあります。こちらの収入は、実力次第で、米国と同じです。

もうひとつは、公的な開業であるポリクリニックに属する場合があります。これは、普通の開業医で、病院への患者の割り振りなども行います。

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