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医師転職ドットコム医師のキャリアをとりまく環境・未来 > 医師と医療経済 第16回

医師のキャリアをとりまく環境・未来

真野医師

真野 俊樹

1987年名古屋大学医学部卒業。医師、医学博士、経済学博士、日本内科学会専門医、MBA。臨床医を経て、95年9月コーネル大学医学部研究員。外資系製薬企業、国内製薬企業のマネジメントに携わる。その後、昭和大学医学部(病院管理学担当)専任講師を経て、現在、多摩大学医療リスクマネジメントセンター教授。

医師と医療経済 第16回 (海外の医療と医師 Part4

今度は

前々回、前々前回と発展途上国であるタイやシンガポールの医師を考えてみました。前回はドイツの医療と医師をみてきました。

引き続き、他国の医療を覗きながら医師の立場を考えて見ましょう。今回はフランスです。

フランス

フランスはGDPではアメリカ、日本、ドイツ、イギリスに続く世界第5位の経済大国です。人口は60,424,213人(2004年)、GDPは2005年で、2兆2162億ドルです。また観光客入国数では世界一、農産物輸出額では世界第2位を占めます。意外ですが、農業は生産額世界第6位と依然としてフランスにおける重要な産業であり、EU諸国中最大の規模を誇っているのです。

歴史をさかのぼれば、カール大帝を継承した息子敬虔王ルートヴィヒの死後、王国は3つに分割されました。そのうち、シャルル1世が継承した領土(西フランク王国)が今日のフランスにあたります。市民革命を経た国としても有名ですが、社会党政権時代に産業国有化が進められたため、政府が経済全体で果たす役割は大きくアメリカやイギリスなどと比べても国家資本主義の色彩が濃いようです。現在のフランスは、直接選挙で選ばれる大統領(任期5年、2002年以前は7年)に首相の任免権や議会の解散権など強力な権限が与えられ、立法府である議会より行政権の方が強い体制が敷かれています。このため、先進国の中でも日本などと並んで官僚機構が強いと言われることが多いです。

フランス本土は、22の地域圏(レジオン)に区分され、その下に96の県(デパルトマン)があります(各レジオンが2〜8のデパルトマンに区分されている)。地方分権の試みもなされていますが、しかしながら、たとえばドイツと比べれば中央集権の色彩が強い国です。

なお、現在先進国で出生率が2人を超えている国は他にアメリカ合衆国とニュージーランドぐらいであり、フランスはヨーロッパ一の多産国となったといわれます。フランスは早くから少子化対策に取り組み、GDPのおよそ2.8%にも相当する巨費を投じ国を挙げて出産・育児を支援する制度を様々に取り入れてきました。この結果、1995年に1.65人まで低下したフランスの出生率は2000年1.89人に、2006年には2.005人にまで回復しました。

フランスの医師

医師に対する出来高払いによる診療報酬と自由開業制をもつという意味で、日本の医療に似ています。フランスでは開業医は3種類あります。セクター1と呼ばれる保険医、セクター2といわれる、混合診療を行う医師、セクター3と呼ばれる自由診療のみを行う医師です。

フランスでは、これらは全てセクター1の保険協定医により診断、処方され、協定医療機関を利用した場合の償還率で、混合診療を行うセクター2の可超過報酬協定医の場合、保険協定料金を超過した分は自己負担となります。セクター3という非保険協定医の場合は、公的保険償還はほぼ皆無です。このあたりもドイツと似ているが、ドイツに比して、完全な自由診療の医師が多いことが特徴です。なお、この自己負担の金額に関しては民間保険で償還されるものもあります。

フランス人たちは、ストに対して概して寛大です。もちろん、理由に説得力を欠く場合やあまりにも長期化すれば、不満も出てきますが。むしろ、ストを応援しているようにさえ思えます。

国鉄や公営交通がストをすること自体は、ほとんど非難の対象になりません。ストが長期化した場合に噴出する不満にしても、ストをしている労働者に向けられる以上に、政府や経営側の不手際に向けられることの方が多いのです。

しかも、フランスの場合、一番よくストをするのは、身分の安定した公務員なのです。雇用が保障された公務員がストをせずして、誰が勤労者の権利を守るのか、という理屈です。したがって、医師もドイツでも触れましたがストを行います。また、勤務医の休暇も長く、年に長期休暇が80日くらいあるようです。

フランスの開業医も、セクター2や3などの1部を除いてさほど給与は高くありません。さらにきわめて難しい国家試験を受け、また医師になれないものも多くいるのに何がそのインセンティブになるのでしょうか。

もちろん、最近では医師への人気は落ち気味だという人もいますが、高い地位を得るためには、財力(経済資本)だけでなく、エリート社会集団で価値あるとみなされている財に関する洗練された知識やライフスタイル――ブルデューが文化資本と呼ぶもの――も必要、というのが伝統的な価値観です。それは、経済資本があっても、文化資本がないと、「にわか成金」として扱われるからだそうで、医師はそういった意味で、洗練された知識やライフスタイルを持っている証といえるのかもしれません。

かかりつけ医制度

フランスでは医療記録管理制度を創設し、患者側のもたらす過剰需要をコントロールしようと試みたが、紙媒体の医療手帳では普及せず、失敗に終わりました。そこでICカードを利用し、1999 年から1 人1 枚の情報記録媒体としての役割を兼ねた保険証カード(カルト・ビタル)を配布しました。それを医療情報化による情報インフラと組み合わせることにより、医師側、患者側ともに管理できる医療情報システムがつくりあげられたのです。しかし、まだ医療データの共有化までには時間がかかりそうです。

旧来フランスでは、イギリスのような登録制のかかりつけ医制度をとっていませんでしたが、2005年からかかりつけ医制度を導入しました。英国と同様に、かかりつけ医の登録制であるが、かかりつけ医の紹介状がなくても専門医を受診することは可能です。その意味では厳格に運用されているとは言いがたい。また、専門医とかかりつけ医、病院医師とかかりつけ医の壁もかなり厚いようで、頻繁な情報交換は行われていないようです。

なお、完全に厳密な区分ではないがフランスではクリニックは私的な医療機関、ホピタルが公的な医療機関です。診療所という概念はなく、開業医になります。

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