医師のキャリアをとりまく環境・未来
真野 俊樹
1987年名古屋大学医学部卒業。医師、医学博士、経済学博士、日本内科学会専門医、MBA。臨床医を経て、95年9月コーネル大学医学部研究員。外資系製薬企業、国内製薬企業のマネジメントに携わる。その後、昭和大学医学部(病院管理学担当)専任講師を経て、現在、多摩大学医療リスクマネジメントセンター教授。
医師と医療経済 第20回 (海外の医療と医師 Part8)
韓国の医療提供体制
今回は韓国の続きです。
医療提供体制では、1次から3次まで病院の規模が決められており、規模によって施設基準、人員配置基準が決められています。規模によって区分しているのが日本の制度を学んだ後で変更した点です。
1次医療機関は病床数30未満の医療機関である診療所を指し、基本的な医療設備を装備すれば届出で開設が可能です。2次医療機関は病床数 30以上の医療機関で病院と称し、人員配置基準及び施設基準が別に適用されます。
1次、2次、3次医療機関の診療単価は、原価を基準にした価格の薬品及び診療材料の実際買入価格に決まった割合の加算をして利潤を保障する形で、1次、2次、3次医療機関の収入の差が発生します。
1次医療機関は集計された医療費原価総額に15%の加算率を適用、即ち実原価の 115%の支払を受けるが、2次医療機関には総額対比療養機関別の種別加算率があります。たとえば100病床以上、必須 7診療科、常勤の専門医の条件を具備した総合病院レベルでは、25%加算、300病床以上、必須 9診療科、常勤の専門医の条件を満たした総合専門療養機関では30%加算といった用に規模で区分されています。また患者の自己負担額も病院の規模によって異なります。
日本に比べてすすんだ点
さて、韓国では急性期と慢性期病院は機能分化されていませんが、大病院などは自主的に経営戦略を立て、自院の役割(得意分野)を明確に打ち出しています。そのため、患者は名の知れた大病院か、または自宅近くの医院に集中するようになり、これといって特徴のない中小病院は避けられがちです。そのうえ、胸部外科・眼科など、一部専門医の求人難とそれによる人件費急増も加わるとなれば、現在、競争力のない中小病院の経営はかなり圧迫されていると言えましょう。実際、専門医の雇用難が原因で休(廃)診した診療科は19%にも上っており、病院全体の倒産率も増加しています。それでいて、倒産病院の引き受けにより医療機関の総数は増加傾向にあるため(医薬分業以降の増加率は医院15%、病院13%)、さらに競争が激しくなって経営が悪化するという悪循環が深刻化しています。韓国の中でもソウルでは、急性期病院市場はまだまだ伸びているが、巨大病院がいくつかできてきたために、特色のない中小病院からの患者離れが起き、100床以下の病院で倒産が多くなってきているというのが背景にあります。
そのほか、韓国の医療提供体制の特徴として、漢方医療が独自の教育体系を持ち制度化され西洋医学と同等の地位を占めていること、総合病院が存続していること、単科専門病院の育成や医療情報システム(レセプトオンライン化など)に対する投資が進んでいることなども挙げられます。
サムスン(三星)ソウル病院
電子化の進んだ病院として最後に現代にならぶ財閥である半導体などで有名なサムズンの「サムスンソウル病院」を紹介しましょう。開院は1994年11月と新しいのですが、規模は地上20階、地下5階、病床1,278、診療科は、40、医者は900余人、看護師は1,200余人、総勤務人数:4,700人といった感じで日本の大きな大学病院クラスと考えられます。
「韓国侮るべからず」と思うのは、こういった財閥の病院では革新的な経営手法が次々と導入され成果をあげている点です。
たとえば「1:5の法則」というものがあります。これは、新規顧客に販売するコストは既存顧客に販売するコストの5倍かかるという法則で、同じように「5:25」の法則は、顧客離れを5%改善すれば、利益が最低でも25%改善されるという法則です。
同じコストで多くの顧客から多くの売上を確保しようとするなら、新規顧客の獲得よりも既存顧客の維持にコストを投下するほうが効率的ということで、これまでのように単に市場シェアを追求するだけではなく、ひとりひとりの顧客のシェアを追求する必要が出てきているという認識です。そこで、サムスン病院では市場シェアとは新規顧客の獲得、顧客シェアとは既存顧客に満足してもらい、リピーターになってもらうことを目指します。
また、「従業員の満足なければ顧客の満足なし」という考え方で、従業員満足、従業員同士のコミュニケーションにも力をいれています。従業員に楽しんでもらう経営を目指します。また、従業員同士の懇親会、サービスがうまく行った従業員の表彰といったことを頻繁に行っています。
韓国の医師の考え方
医師については、全体の86%(医院開設医師に限れば90.3%)が専門医で、特に眼科、皮膚科などの人気科目に偏重気味です。韓国は美容整形が盛んですし、皮膚科を選考した医師が美容整形医になるケースも多いようです。
10万人当たりの病床数は543床だが、うち療養病床は12床にすぎず、都市地域に病医院の92.2%、病床の90.9%が集中しています。MRI導入率は100万人につき7.8台と、アメリカの水準(7.6台)を超える普及ぶりです。この辺りの状況は、20年前の日本の高度成長期に似たところを感じさせます。
大学病院や上述したサムスン病院のような大病院に勤務医している医師はプライドが高く、研究をしたいという気持ちが強いようで、医師のメンタリティも日本に似ているようです。

