地域によって様々な医師の転職市場。特に医師の募集状況や地域の特徴は二次医療圏ごとに異なります。
中越医療圏での転職成功のため、医師転職ドットコムが徹底調査した地域別の転職お役立ち情報をお届けします。
〈中越医療圏の概要-新潟県中央部の、長岡市周辺の日本海に面した医療圏〉
新潟県の二次医療圏である中越医療圏は、新潟県の中央部に位置する、長岡市、柏崎市、小千谷市、見附市、出雲崎町、刈羽村の4市1町1村にて構成されている医療圏です。
医療圏の総面積は約1600平方キロメートル、平成24年10月1日の新潟県統計課による人口は、約46万人です。
新潟県中部の中心都市で新潟県第二の都市である長岡市を含んだ地区の医療圏で、北側が日本海に面しています。
信濃川流域部の新潟平野南部と、魚沼丘陵、東頸城丘陵の低山岳地帯、そして東頸城丘陵西部の鵜川や別山川流域にあたる柏崎・刈羽平野からなる医療圏です。
〈農業では県有数の米の生産地で、工業では伝統工芸を基礎とした現代の関連産業が発達〉
中越医療圏は、平成の大合併により現在の6自治体に統合されました。本医療圏の主要産業は農業と工業で、医療圏内の各地区によってバランスよく発達しています。
農業では平坦地は水田に利用され、稲作に適した土壌で豊かな穀倉地帯として新潟県でも有数の米生産地となっています。
その中でも特に在来品種のみならず「愛かも米/汐風米」というブランド米も開発・生産されています。
また低山岳地帯では、地域伝統の野菜や畜産業でのブランド牛の生産も行われています。
一方で工業は医療圏内の自治体毎に特色を持って発達しています。
長岡市では工作機械や精密機器など、柏崎市では日本でも数少ない石油の生産地で製油業をはじめ機械金属工業など、小千谷市では江戸時代から続く鍛冶を基礎とした伝統産業の鉄工業など、
見附市では江戸時代の織物「見附結城」以来の伝統で総合繊維産地として、それぞれ発展していました。
近年では医療圏全体として、近隣自治体の影響でプラスチック製品や電気部品の製造業が発展しています。
交通の面では、本医療圏内に上越新幹線の長岡駅があり、県庁所在地の新潟市方面のみならず東京・首都圏方面のアクセスは極めて良好です。
在来線もJR東日本の信越本線が本医療圏を貫き、一方でJR上越線とJR越後線、JR飯山線が本医療圏内から各地に路線を伸ばしています。
鉄道沿線以外はバスの利用になりますが、鉄道、バスとも路線によって便数の極端な偏りがあるため、本医療圏内では地域により公共交通利用の効果はまちまちで、自家用車の利用も考慮しましょう。
道路の面では、自動車専用道では本医療圏内で北陸自動車道と関越自動車道が合流して、両自動車道合計で7ヶ所のICがあり、北陸、首都圏、新潟県内どの方面からも自動車での移動は至便です。
また一般道も国道8号線と17号線、国道116号線を軸として本医療圏内に国道や県道が張り巡らされていて、道路面の整備は山間部以外では整備されています。
〈他の医療圏からの入院患者流入率が県下の二次医療圏で飛び抜けている点の改善が必要〉
中越医療圏の中核病院は、長岡赤十字病院が担っていて、本医療圏内には2014年07月02日の新潟県医務薬事課調べで20の病院と312の一般診療所があります。
本医療圏の医療の現状では、他の医療圏からの入院患者の流入率の高さという問題があります。
新潟県保健福祉課の調査による「平成21年新潟県保健医療需要調査」によれば、本医療圏の病院入院患者の他の医療圏からの流入率は18.3%とトップで、疾病毎の比較でも他の医療圏からの入院患者の割合は、
がんの場合に23.6%、心疾患では29.3%と他の二次医療圏と比較して極端に高くなっている現状があります。
これは本医療圏の医療機関の整備が周辺二次医療圏よりも進んでいることが原因ですが、逆に本医療圏に患者が集中することで、本医療圏の医療機関の疲弊を招きかねない問題となっています。
新潟県もこのような点を改善目標としていて、本医療圏のみならず周辺医療圏の各疾病への医療体制の充実を図り、通常の入院患者であればできるだけ患者居住地の医療圏内での治療が行える方針を立てています。
まず急性期の場合、例えばがんであれば、がん診療連携拠点病院が整備されていない医療圏にて基幹病院の整備などでがん拠点病院の整備を目指すこと、
心疾患であれば急性心筋梗塞等の個々の症状に応じた早期診断や早期治療が可能となるよう必要な設備整備を各二次医療圏に行うことや、緊急を要する患者への適切な医療の提供のために、
ICUやCCUなど集中治療機能の整備を各二次医療圏に行うことなどを施策としています。
一方で急性期を脱した患者については、がんの場合はがん診療連携拠点病院と緩和ケアの医療資源を持つ医療機関や在宅療養支援診療所、
及び一般の診療所等が連携して対応する地域連携クリティカルパスを活用することで、二次医療圏内にて切れ目なく医療を提供する体制の整備を行うことや、
在宅医療での医療や介護従事者の人材育成でのために、自治体や医師会等の関係団体との連携で、多職種での連携や必要な知識及び技術の習得のための研修を行うこと、
心疾患の場合は回復期に適切な心臓リハビリテーションの提供を可能とするため、急性期を担う医療機関と心臓リハビリテーションを行う医療機関の間で診療情報や治療計画の共有という連携体制を整備すること、
心疾患の再発予防として、回復期の医療機関や介護保険サービス事業所等において患者の診療情報や治療計画を共有し、各機関が連携して再発予防や基礎疾患の管理することが可能になるように、
地域リハビリテーション協議会や地域医療連絡協議会にて医療連携体制を整備すること等を施策としています。
このような施策が実行され、本医療圏の入院患者の流入率が下がることで、安定した働きやすい医療圏となりえます。
〈医師不足の解消と同時に、特に女性に極端に多い死亡要因「胃がん」への対策が必要〉
平成22年12月時点での中越医療圏内での人口10万人対医師数は166.9人で、新潟県全県の191.2人、全国平均の219.0人と比較しても少なく、今後の県の医療行政での医師数増対策が課題です。
本医療圏で医師が直面する現状としては、胃がんよる死亡者の多さという問題があります。
平成18年~22年の県保健福祉課の調査によると本医療圏での女性のがん全体のSMR値は全国や新潟県全体と比較しても大きな差はありませんが、
胃がんのみを抽出すると全国値と比較して高く、女性が131.7と県平均を大きく上回り、新潟県の全二次医療圏の中でも特出しています。
一方で男性の胃がんについては県平均と同程度ですが、女性ほどではないにせよ119.8と高い値となっています。このような現状から、新潟県としても本医療圏内での胃がんで死亡する患者の減少を行政目標として挙げています。
特に本医療圏ではがん検診受診率が低いという課題があり、がんの死亡率の低下のために早期発見に有効ながん検診の受診率をアップさせることを行政政策の目標としています。
そのためにも、広報媒体等メディアを有効に活用して、がん検診や精検受診率をアップさせるため、がん検診の有効性・必要性等についての普及啓発を行うこと、医師会等の関係機関と連携して、
がん検診や精検受診を行う体制の整備を進めること、市町村や医療圏内の企業との連携で、特に働き盛りの世代ががん検診や精検受診を受診しやすい体制作りを行い、
精検該当者や精検未受診者への受診の勧奨を一層行うことなどを施策としています。
一方でがん検診の結果で精密検査が必要と判断がされた人が早期に治療を始めることができるように、精検該当者の受診率を医療計画の期間中にアップさせることも施策としています。
このような方策が行われることで、消化器系を担当される医師の皆様にとっては、十分な手腕の発揮が可能な医療圏であると言えます。