地域によって様々な医師の転職市場。特に医師の募集状況や地域の特徴は二次医療圏ごとに異なります。
北秋田医療圏での転職成功のため、医師転職ドットコムが徹底調査した地域別の転職お役立ち情報をお届けします。
〈秋田県の北中部内陸部で、秋田県の北秋田市の鷹巣盆地を中心とした医療圏〉
秋田県の二次医療圏である「北秋田医療圏」は、北秋田市、上小阿仁村の1市1村からなる医療圏です。本医療圏は秋田県の中では北中部に位置し、出羽山地と太平山地、白神山地に囲まれた鷹巣盆地を中心として、米代川や阿仁川の流域に位置する医療圏です。
本医療圏の面積は約1400平方キロメートル、平成22年国勢調査時点で人口は約3万9千人、年齢3区分別の割合は年少人口が約9.7%、生産年齢人口が約53.3%、老年人口が約37.0%となっていて、秋田県の平均割合と比較して老年人口の割合が7ポイント程度多くなっています。
また本医療圏の上小阿仁村の老年人口の割合は秋田県最高の44.5%となっており、本医療圏は山地が多く豊かな自然に恵まれている一方で、過疎と少子高齢化が進んでいて対応が急務です。
〈農業や林業が盛んな地域で、近年は各製造業も進出。「マタギの里」という観光資源も持つ〉
北秋田医療圏は、平成の大合併の時期に旧鷹巣町と周辺の町村が合併して現在の北秋田市となり、上小阿仁村とともに本医療圏を構成しています。
本医療圏の主要産業は、稲作を中心とした農業や秋田杉を生産する林業が中心でした。現在ではこれらの産業に混じって、林産品の加工を行う木材製造業をはじめとして、その環境を活かした衣服や電子部品などの製造業が行われています。また本医療圏のある地域は「マタギ」と呼ばれる狩猟の民が生活していた地域としても有名で、現在はそのマタギ文化の歴史を伝承する資料館や祭り、そして自然の景観等が観光資源となっています。
公共交通の点では、JR東日本の奥羽本線が本医療圏内北部を東西に通過していて、さらに第三セクターの秋田内陸縦貫鉄道の秋田内陸線が鷹ノ巣駅から圏内を南北に縦断して大仙・仙北医療圏にある秋田新幹線角館駅まで結んでいます。鉄道空白地帯はバスの利用になりますが、鉄道、バスとも本医療圏内の地区により運行本数の偏りがありますので、医療圏内の移動に自家用車の利用を検討する必要があります。
道路網の点では、医療圏北部を国道7号線が東西に横断し、また国道105号線が本医療圏内を南北に縦断していて、さらに国道285号線が本医療圏から県庁所在地の秋田市への短絡道としての機能を持つなど、山地部が多い地形ではあるものの各集落を結ぶ道路網はある程度整備されていると言えます。
尚、本医療圏内北部に大館能代空港があり、羽田空港との直通便が運行されていて首都圏との足は確保されています。
〈面積が広く高齢化率が高い本医療圏内で、どのように在宅医療の支援を行うかが行政課題〉
北秋田医療圏では、平成22年に3つの公立・公的病院を統合して開設された北秋田市民病院が中核病院の役割を担っています。本病院を含め、本医療圏内には平成23年度の秋田県鷹巣阿仁福祉環境部業務概要調査で、病院2ヶ所、一般診療所34ヶ所が存在します。
本医療圏の医療体制の課題として、在宅医療の問題があります。本医療圏の一般世帯数の中で65歳以上の世帯員がいる割合は66.7%と全世帯数の2/3に上るとともに、夫婦のみの世帯や独居世帯や多い点、さらには本医療圏には訪問看護事業所が3カ所ありますが、本医療圏自体が秋田県で3番目の広さを抱えることから訪問看護師の患者宅への訪問には移動時間がかかる点、また本医療圏内の訪問看護事業所1ヶ所平均で5.3人の訪問看護師が勤務し14.7人の医師からの訪問看護指示書を受けていますが、本医療圏内の人口高齢化の急速な進展があり患者への充分な支援を行うために訪問看護師の増員が必要な点が課題となっています。
秋田県としても本医療圏でも在宅医療の推進にあたり、本医療圏内での医療部門、保健部門、福祉部門の連携による在宅医療体制をより整備することを行政施策としています。具体的にはまず在宅医療を受ける患者の在宅生活の支援のために、かかりつけ医と救急医療機関、訪問看護ステーションのみならず、かかりつけ薬局や介護支援専門員等を含めた連携について推進すること、また在宅医療のサービスの向上のために、訪問看護に携わる看護職員の養成及び資質向上の目的での研修を継続的に行うこと、患者が希望される場所での看取りが可能なよう、患者の家族や関係者に対する医療、介護、看取りに関する充分かつ適切な情報を提供すること等を施策に織り込んで実施しています。
〈県内最低数の医師数の解消と、医療圏内の脳卒中死亡率の減少が重要な施策〉
平成22年12月末現在の厚生労働省の調査によれば、北秋田医療圏の人口10万人あたりの医師数は109.9人で、全国平均230.4人や秋田県全体の平均213.6人との比較でも著しく低く秋田県内で最も少ない値となっていて、医師不足の解消が行政の急務となっています。
また本医療圏の現状として、脳卒中の死亡率点が挙げられます。秋田県衛生統計年鑑によれば平成22年の人口10万人対の脳卒中による死亡率は、秋田県自体が159.2で全国値97.7よりも極端に高いのですが、本医療圏では163.6と秋田県の中でもさらに高い値を示しています。
その上北秋田市消防署の平成23年疾病分類別搬送人員調の統計によれば、本医療圏内で平成23年1年間に救急車での搬送患者の疾患別で12.9%が脳卒中を含む脳疾患であり、各疾病の中で最も多い割合を占めていますが、本医療圏内で救急搬送が可能な医療機関は北秋田市民病院のみであるという点、平成24年9月時点で本院に脳外科医が不在である点、本医療圏内には回復期リハビリテーション病棟が不在である点などがあり、救急期から回復期に至る充分な脳卒中の治療が十分に行えていない現状があります。
この点を秋田県としても重点課題としていて、脳外科医の充足を最重要の施策としていますが、充足までの期間は脳卒中の疑いで患者が救急搬送された場合には北秋田市民病院にて速やかに重症度の判断、及び手術等処置が必要な場合は他の医療圏の専門的医療機関と連携した上で治療が開始可能な体制づくりを施策として行っています。
また回復期については本医療圏にあるリハビリテーション対応の可能な医療機関2ヶ所にて病期に応じたリハビリテーションが可能な体制等の構築を施策として目標としています。さらに本医療圏内住民に対して脳卒中の発症予防という視点から、高血圧の発症の予防とそれに関する食塩摂取量減少や野菜・果実摂取量増加等の食生活改善の取り組みの推進、喫煙対策としての禁煙外来の紹介及び受動喫煙の防止対策の推進等を行い、脳卒中の発症を抑えるための啓発活動を実施しています。
このような施策の実施により脳卒中発症時への対策も進むこととなる上に、脳卒中予防の視点から本医療圏内の住民の健康に寄り添う「かかりつけ医」の必要性がより大切になり、需要が増すでしょう。