地域によって様々な医師の転職市場。特に医師の募集状況や地域の特徴は二次医療圏ごとに異なります。
市原医療圏での転職成功のため、医師転職ドットコムが徹底調査した地域別の転職お役立ち情報をお届けします。
〈千葉県のほぼ中央部、東京湾の埋立地から房総半島中部の山岳地帯にまたがる医療圏〉
千葉県の二次医療圏のひとつである市原医療圏は、千葉県の中央部、房総半島の東京湾沿岸部に設置された医療圏で、市原市全域が該当します。旧上総国の中心部で、養老川の養老渓谷以北及び流域に圏域を持ちます。旧海岸部分及び養老川水系の流域は三角州性低地、それ以外の丘陵部は火山灰台地の平地、房総半島の内陸部は山岳地帯で、現海岸部分の工業地帯は埋立地による人工地形となっています。
〈高度経済成長時代に飛躍的に発展した臨海工業地帯を抱える医療圏〉
市原医療圏は、北側は千葉医療圏、東側と南部は山武長生夷隅医療圏、西側は東京湾と君津医療圏に接しています。市原医療圏全体の面積は約370平方キロメートル、平成24年4月時点での医療圏内人口は約28万3千人です。
交通の点では、市原医療圏内の海岸部分をJR東日本のJR内房線が東西方向に通っていて、沿線は千葉及び東京方面への交通至便な地域として利用されています。また市原医療圏内の北部から南部には小湊鉄道線が通っていて、公共交通機関の乏しい房総半島中央部の貴重な足となっています。更には圏内最北部のちはら台まで、京成電鉄の京成千葉線に乗り入れる京成千原線が通っています。
また、医療圏内を首都圏中央連絡自動車道と館山自動車道、主要国道である国道16号線が千葉方面と房総半島西南部とを結び、国道297号線が市原医療圏を南北に縦断する形で房総半島の外房地区まで伸びていて、各地からの車でのアクセスも容易です。
市原医療圏は臨海部には京葉工業地帯の一角をなす埋立地からなる国内有数の石油化学コンビナートが形成されているのと同時に、国道16号線東側の市原特別工業地区や医療圏北部内陸部の潤井戸工業団地などの新規工業用地を確保して、製造業に力を入れています。一方で更に内陸部は都市近郊の農林業が行われていて、また養老川上流での首都圏を対象とした観光業なども盛んです。更に近年では市内の工業地帯で働く人々のみならず、千葉市内や京葉間地区への通勤を行う人々のベッドタウンとしての役割も果たしています。このように市原医療圏を形成する市原市は医療圏内の地域ごとに様々な面を持っています。
市原医療圏の人口比は、年少人口が12.7%、生産年齢人口が67.2%、老年人口が21.7%であり、ほぼ千葉県全体の人口比と大差ありません。
〈災害拠点病院の立地条件に不安があり、また医療圏の規模に合わせたさらなる整備が必要〉
市原医療圏では中核病院を疾病や事業毎にそれぞれの病院で役割を分担しています。例えば「がん」は千葉大学医学部附属病院及び千葉医療センターが、「救命救急」は千葉県救急医療センターが、「小児救急医療」は千葉県こども病院がその役目を担っているという状況で、更に疾病・事業毎の中核病院に公立、公的、大学病院等がその役割の補助を担っています。このような体制で医療圏内には平成24年4月1日時点で46の病院と669の一般診療所があります。
市原医療圏の問題は、災害時医療体制での設定に弱点がある点です。災害時医療体制時の災害拠点病院としては、千葉大学医学部附属病院、千葉県救急医療センター、千葉市立海浜病院の3ヶ所の病院が指定されていて、うち千葉大学医学部附属病院、千葉県救急医療センターの2ヶ所の病院はDMAT(災害派遣医療チーム)指定医療機関とされています。
千葉県保健医療計画によれば、災害時における医療の循環型地域医療連携システムでは、県災害対策本部と災害拠点病院とが提携して災害発生直後の被災地域の救護活動を円滑に実施するために地域の医療関係団体や関係機関等との連携の強化を図ることが計画されています。
しかし災害拠点病院のうち千葉県救急医療センターと千葉市立海浜病院の2ヶ所の病院は美浜区の『海浜検見浜川の浜』隣接の埋立地に存在していて、関東大震災や東海地震などの巨大地震が発生した際の想定津波や地盤液状化などを考慮すると、災害発生時にこの2病院が災害拠点病院の役割を十分に果たせるかという点に憂慮が生じます。千葉県では本医療圏での医療保健計画において、災害時医療体制の施策については「DMATの体制整備の推進」を挙げていますが、今後は千葉大学医学部附属病院への機能のより一層の整備や、津波想定時の内陸部の公的病院、例えば国立病院機構千葉医療センター等へのDMATの体制整備の推進など、あらゆる災害を想定した体制整備を行うことが必要となります。
〈大病院以外での臨床医の実数と、がんでの死亡率の高さを抑える医療体制の構築が必要〉
平成22年12月31日時点での市原医療圏の人口10万人あたりの医師数は262.7人で、県内平均の168.9人、全国平均の219.0人よりも大きく上回っています。ただし本医療圏には大病院が数多く存在しているため、実際に患者の治療と向き合っている臨床医の数での検証を行う必要があり、今後さらに精査が必要となる点です。
また本医療圏の問題として、死因に占めるがんでの死亡率の高さがあります。もともと千葉県全体の死因の第一位はがんですが、本医療圏ではがんが死因の割合が千葉県全体の割合を更に上回っていて、千葉県全体の死因に占めるがんの割合を押し上げている実状があります。このような状況に千葉県や千葉市も医療行政として、「がんの循環型地域医療連携システム」の構築を方策としています。まずはがんの早期発見につながる特定健康診断の受診率が国や千葉県と比較して本医療圏内の値が低いという点の改善、住民の身近で日常的な医療サービスを提供する総合診療の中心となるかかりつけ医の定着、そしてそのかかりつけ医を支援する地域医療支援病院の整備などにより、がんの早期発見と早期治療を行うことでがんが死因となる患者を少しでも減少すべく方策を立てています。
大都市圏の医療圏であれば、どうしても住民は疾病時により高度な医療を求めて大病院に足を向けがちですが、地域の診療所と病院との役割を分担し、さらにそれを病診連携を構築することによって、医療圏内の住民がその時点で必要な医療を受けられるような体制の構築が現在の本医療圏での行政方策です。この体制が確立されていくことで、本医療圏は病院/診療所どちら側の医師にとっても働きやすい医療圏になります。