地域によって様々な医師の転職市場。特に医師の募集状況や地域の特徴は二次医療圏ごとに異なります。
下北地域医療圏での転職成功のため、医師転職ドットコムが徹底調査した地域別の転職お役立ち情報をお届けします。
〈青森県の下北医療圏の概要〉
青森県の二次医療圏である下北医療圏は、青森県の北東部に存在する医療圏で、むつ市 大間町 東通村 風間浦村 佐井村の5つの自治体から構成されています。
圏内の総面積は約1400平方キロメートル、人口は平成22年国勢調査でおよそ8万人です。
本医療圏内は下北半島の先端部にあり、周囲を太平洋、津軽海峡、陸奥湾に囲まれています。
〈水産業と観光業が盛んで、また海上自衛隊の重要基地である大湊港を抱える医療圏〉
下北医療圏では、主産業は水産業と観光業です。水産業の分野では、ニュースなどで有名なマグロ漁やイカ漁の一大漁港である大間港が本エリア内にあり、また陸奥湾で行われている帆立貝の養殖も水産業の大きな柱となっています。また観光業では本医療圏内にイタコで知られる恐山華厳寺や本州最北端の大間崎、「最果ての地」と称する尻屋崎を持ち、自然遺産にも恵まれています。
また一方で、本医療圏内むつ市の大湊港は「日本でも有数の規模の海上自衛隊の重要基地」とされていて、それが縁で「大湊海軍コロッケ」なるグルメの開発があるなど、自衛官の地元での消費や海上自衛隊の地元企業への発注を含めて本医療圏内の産業の振興に一役買っています。
公共交通の面では、JR東日本のJR大湊線が、本医療圏むつ市の大湊地区まで伸びています。鉄道沿線以外はバスの利用になり、むつ市の田名部地区の「むつバスターミナル」を拠点として医療圏内各地に路線を伸ばしています。しかし鉄道、バスとも本数にかなりの偏りがあるため、本医療圏内の移動には自家用車の利用を考える必要があります。
一方で道路網では、本医療圏内中心部の急峻な山岳部分を除けば、国道279号線や国道388号船が本医療圏を含む下北半島を一周しているなど、医療圏内の平野部、沿海部に限れば道路は整備されていると言えます。
〈医療圏内に数多くの無医地区/準無医地区を抱えていて、へき地医療の向上が課題〉
下北医療圏の中核病院は、むつ総合病院が担っていて、圏内には2014年7月現在で3の病院と29の一般診療所が存在します。
本医療圏の課題として、へき地医療の問題があります。本医療圏内には平成21年の県医療薬務課の調査で、無医地区/準無医地区を合わせて9ヶ所が指定されていて、それとは別にへき地診療所も2ヶ所の地区に開設されています。無医地区/準無医地区の多くが、隣接自治体のへき地医療拠点病院への毎日の患者輸送によって、かろうじて住民の医療を維持している状態であり、またへき地診療所も1~2週に1回の医師派遣による医療にて住民の医療の維持が行われている状態です。いずれの地区も青森県の地区分類では「比較的交通手段の確保が容易な山村型」の地区であることから、天候や距離による患者輸送や医師派遣の問題は無いとはいえ、今後のへき地医療に不安を抱えています。
このような点を青森県も重要な課題と考えていて、へき地医療に対する方策を立案しています。具体的には「へき地における保健指導の機能」「へき地における診療の機能」「へき地の診療を支援する医療の機能」「行政機関等によるへき地医療の支援」の4つの機能を維持発展させるために、例えば将来的にへき地勤務を希望する医師を増やす目的で、弘前大学医学部が行う6年生対象のクリニカル・クラーク・シップにて自治体医療機関での受入を積極的に支援すること、全国の医学部学生のへき地での卒前教育として県内各自治体が受け入れに協力すると同時に、本県でへき地医療実習を行った医学部学生のネットワーク化の支援を行うことなどを行い、将来的な青森県のへき地医療の担い手としての医師を確保する計画を持っています。
一方現時点で行う方策としては、へき地医療体制を人的な面から支えるために、中核病院が弘前大学医学部や県との調整を行いへき地医療拠点病院との周期的な人事異動体制を確立して、中核病院と拠点病院との連携及び協力体制の強化を行うことや、青森県地域医療支援センターに登録された医師による日当直支援を行うなど、へき地医療拠点病院の勤務環境改善を行うことで、医師がへき地医療体制の中で働きやすい状況を構築する計画です。またへき地医療体制を組織の面として支えるために、へき地医療拠点病院の機能を強化した上で、自治体が無医地区/準無医村地区への巡回診療を当該自治体の状況に応じて必要な巡回の回数の確保や、へき地診療所の支援としてへき地医療拠点病院がより一層へき地診療所への医師派遣や医師不在時の代診医確保による診療の実施などの対策を強化する計画です。
このように現在の施策では、へき地医療拠点病院やへき地診療所への支援を手厚くすることや弘前大学医学部及び県、地元自治体のバックアップを充実させることで、へき地医療のさらなる充実を目指しています。
〈青森県での医師不足の解消と、急性心筋梗塞の医療供給体制の充実が課題〉
青森県では慢性的に「医師数不足」という問題があり、平成22年12月31日現在での人口10万人あたりの医師数は、青森県は182.4人と全国の219.0人を大きく下回り、全国でもワースト6位、東北・北海道地区の道県でもワースト2位という深刻な状況です。さらに下北医療圏の人口10万人あたりの医師数は135.8人と青森県内でも少ない方から3番目で、県の医療行政として医師不足の解消が行政施策となっています。
また本医療圏の医師の問題として急性心筋梗塞の医療提供体制への問題があります。本医療圏内には救命救急センターに設定された病院が無く、最も近い救命救急センターは2つ隣の青森医療圏もしくは八戸医療圏になります。また、第二次救急医療もむつ総合病院と大間病院が救急告示病院に指定されているのみで、両病院の救急患者に対する疲弊が問題となっています。
このような点を青森県も問題と考えていて、「冠動脈バイパス手術」等の外科的治療を要する医療資産の投入など、初期の病態評価と迅速な専門的治療の開始などが行われるように本医療圏内の病院の体制整備人的にも設備的にも行うこと、及び実際に患者を搬送する救急救命士を含む救急隊員が、地域メディカルコントロール協議会の定めたプロトコルに即して、救急蘇生法等の適切な観察、判断、処置を行うこと、及び急性心筋梗塞の医療を担う医療機関への搬送にかかる時間の短縮を行うことなどを行政施策としています。