地域によって様々な医師の転職市場。特に医師の募集状況や地域の特徴は二次医療圏ごとに異なります。
北勢医療圏での転職成功のため、医師転職ドットコムが徹底調査した地域別の転職お役立ち情報をお届けします。
〈三重県の最北部、伊勢湾の西部沿岸から鈴鹿山脈の範囲に存在する医療圏〉
三重県の北勢医療圏は、三重県北部にある四日市市、桑名市、鈴鹿市、亀山市、いなべ市、木曽岬町、東員町、菰野町、朝日町、川越町の5市5町で構成されています。
本医療圏は、面積が約1100平方キロメートル、平成23年10月1日時点の三重県月別人口調査による人口は約84万人です。
年齢三区分では、年少人口が14.6%、生産年齢人口が63.5%、老年人口が21.1%となり、老年人口の割合は三重県で最少、年少人口と生産年齢人口の割合は最多です。
本医療圏は伊勢平野北部の伊勢湾西部沿岸に面した地域で、北部には鈴鹿山地、西部には鈴鹿山脈の急峻な山々がありますが、全般的には平坦な地形です。
尚、三重県は二次医療圏として4ヶ所を設定していますが、日常的な生活圏、歴史的な地域文化の背景、平成の大合併により生じた行政圏域との整合性を図る目的で、
二次医療圏を補助する目的で二次医療圏に「サブ医療圏」を設置している場合もありますが、本医療圏は該当しません。
〈昭和時代に工業が発展し、現在では日本でも屈指の工業地帯、鈴鹿サーキットでも有名〉
北勢医療圏は、古くから伊勢平野の肥沃な大地を利用した農業が盛んでしたが、同時に天然の良港に恵まれたことから昭和時代に入って工業が発展しました。
本医療圏内の四日市市には日本でも有数のコンビナートが建設され、また鈴鹿市には海軍の武器製造工場である鈴鹿工廠が建設されたことで、
この地域の工業の発展の基礎が築かれ、更に労働者としての人口が爆発的に増えました。
第二次世界大戦終了後には鈴鹿工廠の跡地は民間企業に払い下げられ、本田技研工業をはじめとして数多くの企業が工場を立地して、
コンビナートとともに発達した四日市とともに三重県のみならず日本でも屈指の工業地帯となっています。
また一方で、本田技研工業が製造した「鈴鹿サーキット」は世界的なオートレーシング場として、F-1をはじめとした数々のオートレースが開催され、
日本のみならず世界中のモータースポーツファンの間で「SUZUKA」という名称が知れ渡っています。
公共交通は、JR東海のJR紀勢本線と近畿日本鉄道の近鉄名古屋線が本医療圏内の主な都市を貫通しています。
また近鉄名古屋線から伸びる各支線や、三岐鉄道線、養老鉄道線、第三セクターの伊勢鉄道線などが圏内を走っていて、
各主要駅からのバスの便を含めても本医療圏内は公共交通の便がかなり良好と言えます。
一方道路の面では、自動車専用道で東名阪自動車道が本医療圏内を南北に縦断していて、北端部で伊勢湾岸自動車道と、南端部で新名神高速道路と分岐していることで、
本医療内での交通アクセスは非常に良いです。
更に一般道でも国道1号線、国道23号線、国道306号線を幹として、数多くの国道や県道が本医療圏内を網の目のように通過していて、
全体的には本医療圏内の道路網も十分整備されていると言えます。
〈桑名地域の救急医療体制が課題で、現在は様々な施策を行って対策を実施中〉
北勢医療圏では中核病院の役割を三重県立総合医療センターが担い、地理的及び人口分布の理由から厚生連鈴鹿中央総合病院、四日市市立四日市病院、
厚生連いなべ総合病院が中核病院の役割を分担して受け持っています。
平成26年7月時点での地域内医療機関情報の集計値によれば、本医療圏内には44の病院と540の一般診療所があります。
本医療圏の問題としては、元々本医療圏は大きく分けて4つの地域に分かれますが、その中で桑名市を中心とした地域での医療体制についての問題があります。
この桑名市地域にはいくつかの総合病院が存在していますが、それぞれの病院が医師不足や施設の老朽化等の問題を抱えていることもあり、
桑名市地域の中核となる規模の病院がないという現状が存在しています。
例えば二次救急の面を取り上げると、平成22年4月1日時点では4病院で二次救急の輪番制を担っている状況となっていますが、各病院においての常勤医師数の減少や加え、
地域全体の医療機関での医師不足や医師の高齢化が進んでいるという問題があり、二次救急医療体制が弱体化していて、今後の医療体制に不安が生じているというのが現状です。
このような点に三重県としても対策を行うべく、桑名市地域に距離の近いいなべ地域を統合して新しい桑名地区とエリア再編にていなべ総合病院を地区に含めて対応を行うことや、
桑名市地域にあった病院の統合によって桑名市総合医療センターを設立して二次救急医療を含む地域の中核病院の役割を担うような方策を行うこと、
桑名市において市民からの救急医療や応急処置に関する相談に対して24時間対応可能な電話相談を実施するなどの方策を行うことなどで、
救急医療に対する対応を手厚くするような行政施策を行っています。
〈医師不足と脳卒中の急性期医療の提供が、本医療圏の重要な課題〉
平成22年医師・歯科医師・薬剤師調査よれば、北勢医療圏の人口10万人あたりの医師数は160.6人で、全国での219.0人はもとより三重県全体の190.1人との比較でも低い値となっています。
人口が多い医療圏であり、行政施策としての医師の増が求められています。
また、本医療圏の現状として「脳卒中医療に対する急性期医療提供体制の不足」があります。
同じ統計での脳卒中に対応可能な神経内科、脳神経外科の人口10万人あたりの医師数は、本医療圏では神経内科が3.1人、脳神経外科が4.2人といずれも県平均以下であり、
また脳神経外科については三重県内の二次医療圏では最小となっています。
都市規模が大きな本医療圏でこのような医師不足は問題であり、三重県としても急性期の脳卒中への対応のために関連医師の増強を行政の方策とするとともに、
脳卒中の発症後の速やかな搬送と、専門的な診療が可能となるよう二次医療や三次医療の救急医療体制が整備されるような方策を実行している最中です。
更に脳卒中に関する専門的な診療を行う医療機関が一層整備されるように、県が主体にて対策を進めています。