地域によって様々な医師の転職市場。特に医師の募集状況や地域の特徴は二次医療圏ごとに異なります。
筑紫医療圏での転職成功のため、医師転職ドットコムが徹底調査した地域別の転職お役立ち情報をお届けします。
〈福岡県中央部、福岡市の南部に位置する医療圏〉
福岡県の二次医療圏である筑紫は、福岡県中部の内陸に設定された医療圏です。
筑紫医療圏は、筑紫野市、春日市、大野城市、太宰府市、那珂川町の4市1町で構成されています。
筑紫医療圏の面積は約233平方キロメートルで、平成24年8月1日現在の福岡県人口移動調査での圏域内人口は約42万6千人です。
〈古代以来歴史にも多々登場する地域で、福岡市のベッドタウンとして若者が増えつつある〉
筑紫医療圏は福岡県の県庁所在地で政令指定都市である福岡市の南側にあります。
この医療圏内には古代には九州地区の政治的中心地であり遠の朝廷とも呼ばれた大宰府政庁や観世音寺、大野城跡などがあり、記紀など日本の正史にも必ず登場する古代以来の有名な地です。
現在は従来の歴史的史跡を守りつつ、県庁所在地で政令指定都市の福岡市に隣接する医療圏として、福岡県に職場を持つ人々のベッドタウンとして年々人口が増えています。
鉄道は筑紫医療圏内のほぼ中央部をJR九州のJR鹿児島本線と西日本鉄道の西鉄大牟田線が貫通して通り、また医療圏内の太宰府市には西鉄太宰府線が、
那珂川町には隣接する春日市との境界付近にJR西日本のJR博多南線博多南駅があり、医療圏内の中で鉄道が通っている平野部分の交通の便は良いと言えます。
しかし、医療圏の東部には三郡山地、南西、西部には背振山地があり、この山地の地域は公共交通の便が良いとは言い切れません。
一方で道路については、国道3号線が筑紫医療圏の平野部を南北に縦貫していて、医療圏西部を南北に縦貫している国道385号線とともに医療圏内の重要な足となっています。
更に九州自動車道と福岡都市高速2号線とが「太宰府JCT」で接続されていて、流通など乗用車を利用した九州各地からのアクセスは良好です。
年齢区分別人口割合は、年少人口が16.0%、生産年齢人口が66.2%、老年人口が17.8%で、福岡県内では老年人口の割合が最少、
その分年少人口と生産年齢人口の割合はどちらも福岡県内で多い方から2番目という全体的に若い人が多い医療圏です。
〈拠点病院が圏内に無く隣接する医療圏に頼りがちな点が、二次医療圏として問題〉
筑紫医療圏の圏内には28の病院と285の一般診療所があります。 筑紫医療圏内の病院の問題点としては、確固とした中核病院が存在していない点があります。
例えばがん拠点病院はエリア内に無く、周産期医療については福岡徳洲会病院、災害拠点病院については共済会二日市病院、小児科救急に関しては福岡徳洲会病院と福岡大学筑紫病院が担うというように、
例えば他の医療圏のような5疾病5事業をほとんど網羅可能な中核病院が存在しない点が実状です。
ただし筑紫医療圏の場合、福岡市内まで15km圏内で久留米市まで20km圏内ということで、平成20年の患者調査による筑後医療圏の入院患者流出割合は38.1%と福岡県内でも同率2位と多く、
福岡市内や久留米市内の医療機関に入院患者が流れている実状があります。そのために実質的には最低限の拠点病院はあるものの、
全てを網羅した医療圏内中核病院の確保は福岡県の医療行政の上でも優先順位が後回しになっている実態が見えます。
行政としても医療圏内の役割分担のみならず、中核病院を設定した上での医療圏内の医療サービス提供ネットワークを設定して、
より「二次医療圏内で治療が完了する」方策を計画立案して欲しいものです。福岡県内で今一番人口が増加しつつある医療圏なので、人口増に合わせた医療行政対応が必要です。
〈県全体の医師不足への対応と、特に生活に密着した糖尿病治療への地元専門医が不足〉
平成22年12月31日時点での筑紫医療圏の人口10万人あたりの医師数は167.9人で、福岡県全体の274.2人はもちろん全国平均の219.0人よりも大幅に少ないです。
福岡県の医療行政としても、筑紫医療圏の人口増に見合った医師増を行政施策として実施中です。
また、筑紫医療圏内の医療の問題として挙げられるのが、生活習慣病のひとつである糖尿病対策です。
同じ時点での筑紫医療圏内には、糖尿病を専門に扱う代謝内科の医師は3名、人口10万人比では0.7人と、福岡県の全医療圏で同率最下位の人数となります。
むろん筑紫医療圏の地理的条件から治療を久留米医療圏や福岡・糸島医療圏で行うことも可能でしょうが、生活習慣病の中でも糖尿病は、
より患者の生活に寄り添い日頃から患者の健康状態をチェックできるかかりつけ医の存在が必要になります。
この点を福岡県も行政の上で、今後代謝内科の医師の筑紫医療圏への派遣や定着を推し進めていく必要があります。