地域によって様々な医師の転職市場。特に医師の募集状況や地域の特徴は二次医療圏ごとに異なります。
芦北医療圏での転職成功のため、医師転職ドットコムが徹底調査した地域別の転職お役立ち情報をお届けします。
〈熊本県の芦北医療圏の概要〉
熊本県の二次医療圏である「芦北医療圏」は、水俣市、芦北町、津奈木町の1市2町からなる医療圏です。
本医療圏は熊本県の南西部の八代海沿岸部に位置し、南側を鹿児島県に接した九州山地の山々が八代海に没する地区からなります。
本医療圏の面積は約430平方キロメートル、平成24年10月1日の熊本県推計人口は約5万人で、年齢3区分人口では年少人口が11.7%、生産年齢人口が53.3%、老年人口が35.0%で、
熊本県全件と比較し9ポイント程度老年人口が多く、本医療圏内住民の1/3以上が高齢者という熊本県内でも最も高齢化が進んでいる医療圏です。
〈特徴を持った農産物の生産と、温泉観光が中心産業となっている医療圏〉
芦北医療圏の基幹産業は農業と観光業です。農業では、温暖な気候を利用した甘夏みかんやデコポンをはじめとする柑橘類果物の栽培、
無農薬緑茶やサラダ専用タマネギなどの特徴を持った野菜、「あしきた牛」とブランド名の付いた肉牛などの農畜産物の生産が盛んです。
一方で観光業では、八代海に面したリアス式海岸が自然の景勝地を造り出していて、また多くの温泉の源泉を持ち、温泉観光施設にも恵まれています。
公共交通では、本医療圏内に九州新幹線が通り、新水俣駅が設置されています。そのため県庁所在地の熊本市や九州最大都市の福岡市、及び関西圏、首都圏への足はとても便利です。
また本医療圏内の海岸部を第三セクターの肥薩おれんじ鉄道が、北東部の球磨医療圏との圏境部に沿ってJR九州のJR肥薩線が通っています。鉄道の沿線以外はバスの利用になりますが、
鉄道、バスとも地域や時間帯によって便数に大きな差があるため、本医療圏内の移動手段には自家用車の利用を検討する必要があります。
一方で道路網では、本医療圏内の主に海岸線部分を通る国道3号線を幹として、県道が本医療圏内外の各方向に通じています。
医療圏には山岳部が多いですが、山深い地域を除いた各集落間や市街地と山間部を結ぶ道路網はある程度整備されていると言えます。
〈県境を越え本医療圏に入院する鹿児島県の出水/姶良・伊佐の両医療圏の患者への対策要〉
芦北医療圏では国保水俣市立総合医療センターが中核病院の役割を担っています。
本医療圏内には平成24年4月1日現在の熊本県医療政策課の「病院台帳、診療所台帳、歯科診療所台帳」によれば、病院11ヶ所、一般診療所49ヶ所が存在します。
本医療圏の医療体制の課題として県境医療対策があります。本医療圏は鹿児島県の出水医療圏や姶良・伊佐医療圏と接していることから、両医療圏の居住者が本医療圏に県境を越えて入院するケースが多く見られます。
本医療圏の全入院患者で比較すると平成23年度熊本県入院患者調査による県外患者は8%ですが、国保水俣市立総合医療センターに限れば平成24年での紹介患者の医療圏別状況では、
鹿児島県の上記2医療圏の割合が32.9%、救急患者の医療圏別受け入れ状況では、鹿児島県の2医療圏の割合が11.2%にも及んでいます。
このような状況を熊本県としても重要な課題としていますが、このような状況となっているのは鹿児島県の2医療圏に専門医が不在の疾病があるために本医療圏に患者が県をまたいで紹介されて入院するためです。
そのため熊本県としても、将来的に鹿児島県の医療計画において出水医療圏や姶良・伊佐医療圏に十分な医療機関が整備されるまでの間は、両医療圏の関係各所との医療連携体制の整備を行うことや、
芦北地区地域保健医療計画が見直しを行う際や評価を行う際には、鹿児島県のこの2医療圏との協議内容も反映させる施策を行う計画です。
〈政策としての医師増が必要で、また虚血性心疾患での医療圏内での治療率の向上が課題〉
平成22年の厚生労働省の医師・歯科医師・薬剤師調査によれば、芦北医療圏の人口10万人あたりの医療施設従事医師数は262.9人で、全国平均219.0人や熊本県全体の平均257.5人との比較では高い値となっています。
ただし、医療圏内の地域によって医師の偏在が見られ、無医地区や準無医地区もあることから、偏在の解消が課題となっています。
また本医療圏の現状として、虚血性心疾患での医療圏内での入院率の低さという問題があります。本医療圏内で住民が傷病で同一医療圏内の医療機関へ入院する割合は、
平成23年度の熊本県入院患者調査結果によれば86.6%であり、本医療圏内で医療がほぼ完結しているという結果となっています。
しかしこれを疾病別のデータとしてみると、糖尿病では90%以上、脳卒中でもは88.9%といずれも高い割合となっている一方で、虚血性心疾患においては28.6%ととても少ない割合となっていて、
主に八代医療圏への入院率が42.9%、熊本医療圏への入院が28.6%と他の医療圏への入院率が高くなっています。
この原因については本医療圏内に虚血性心疾患における急性期、回復期、維持期の各病期における医療機関が十分に整備されていない点が問題と考えられます。
この点は熊本県としても問題と考えていて、本医療圏の住民が住み慣れた場所で安心して生活が営めるように、保健分野と医療分野、福祉サービス分野を継続して患者に提供できるよう、
本医療圏内の機関や団体が協力の上で対策を検討する方向としています。
現在施策として立案されているのは、虚血性心疾患における「予防と早期発見」「急性期」「回復期」「維持期」の各段階にて、
保健医療が十分に提供可能な医療資源の整備や、各機関の連携体制の整備を行うこと、並びに本医療圏内の医療機関の機能の分化を行い、
中核病院である国保水俣市立総合医療センターを中心とした本医療圏内の病診連携の推進を行うことの2点です。