地域によって様々な医師の転職市場。特に医師の募集状況や地域の特徴は二次医療圏ごとに異なります。
県南医療圏での転職成功のため、医師転職ドットコムが徹底調査した地域別の転職お役立ち情報をお届けします。
〈福島県の県南医療圏の概要〉
福島県の二次医療圏である「県南医療圏」は、白河市、西郷村、泉崎村、中島村、矢吹町、棚倉町、矢祭町、塙町、鮫川村の9自治体からなる医療圏です。本医療圏は福島県の内陸部の南部で、南側を栃木県に接しています。東部を阿武隈山地のなだらかな山地部分、西部を奥羽山脈の急峻な山岳地帯に挟まれた、福島県では「中通り」と呼ばれる阿武隈川流域地区のうち白河盆地及びその周辺部分からなる医療圏です。
本医療圏の面積は約1230平方キロメートル、平成22年国勢調査時点で人口は約15万人です。
〈古代から有名な「白河関」を持ち、近年は関東圏からの製造業の進出がめざましい医療圏〉
県南医療圏は古代に「陸奥国の入り口と称される白河関」が設置されたことから、古代からたびたび歴史上及び文学上で登場する由緒正しい地域です。また「江戸時代後期に寛政の改革を行った老中・松平定信」という名を日本史で習った方も多いでしょうが、その松平定信が老中になる前に治めていたのが本医療圏内に存在した「白河藩」ということでも有名な地域です。
元々阿武隈川流域の肥沃な土地での農業が盛んで、米を中心として野菜や果物等の農産物を生産していましたが、東北新幹線や東北自動車道の開通以来は「関東に最も近い東北地域」として、製造業を中心とした工業の工場の進出が数多くあり、福島県南部の工業の拠点となっています。
公共交通の面では、本医療圏内に東北新幹線の新白河駅がある他、JR東日本のJR東北本線が本医療圏を南北に縦断していて、この沿線では公共交通機関の便はとても良いです。一方で本医療圏東部をJR水郡線が南北に縦断しています。また鉄道沿線以外はバスの利用となりますが、JR水郡線やバス路線は運行の頻度があまり高くないため、本医療圏内の移動では移動先毎に公共交通機関と自家用車とを使い分けるのが良いでしょう。
一方道路網の点では、本医療圏内に自動車専用道の東北自動車道が南北に通り、医療圏内2ヶ所のICがあり、郡山市、県庁所在地の福島市はもとより、関東圏へのアクセスは非常に良好です。一般道でも、国道4号線や国道289号線を幹として、国道や県道が本医療圏内や圏外各方向に通じています。医療圏内には山深い地域もありますが、白河盆地内部の各地区やや山間部の集落間を結ぶ道路網は十分に整備されています。
〈周産期医療に課題があり、今後の行政施策として産科医の増員が課題〉
県南医療圏では福島県厚生農業協同組合連合会白河厚生総合病院が中核病院の役割を担い、本医療圏内には平成22年の医療施設調査で、病院11ヶ所、一般診療所93ヶ所が存在します。
本医療圏の医療体制の課題として、周産期医療の脆弱性があります。本医療圏には地域周産期母子医療センターに指定された病院はなく、中核病院の福島県厚生農業協同組合連合会白河厚生総合病院が周産期医療協力施設に指定されて地域周産期母子医療センターは隣接する県中医療圏の病院に頼っている状況ですが、平成24年4月1日現在で本医療圏の周産期医療協力施設ではGCUが未整備な点や、県内の医療圏別の産科医師数を出生数千人対で見ると本医療圏では5.5人と、産科医が不在の南会津医療圏を別とすれば産科医師数か最も少ない点など、本医療圏での周産期医療に課題を残している現状があります。
この点を福島県としても行政施策としていて、県が立ち上げた周産期医療協議会等にて周産期医療体制の現状や課題、周産期医療のあるべき姿についての協議を進め、県内の周産期医療システムの充実を図る方策を立てるのと同時に、周産期医療機関の一層の充実を図るために、周産期医療に必要な施設や設備の整備や運営への支援を行う方策を立てています。
具体的には不足している周産期医療を担う医師の養成や確保に努めること、現在周産期医療現場を支えている医師の負担増に対して、医師の処遇改善を図る医療機関の支援や処遇の確保の推進を行うこと、病院勤務産科医については、病院と診療所の連携の推進を行うことなど、分娩を扱う産科医の負担を軽減することに向けた施策を行っています。
また一方で公立大学法人福島県立医科大学医学部の入学定員増と同時に創設した「緊急医師確保修学資金」制度を活用して、卒業生の福島県内の医師確保を図りながら、産科医の確保行う施策を進めています。更に周産期に関する高度かつ複雑なものとなっている業務に対して、周産期医療機関の医師や助産師、看護師等に対しての研修会の開催など、質の高い周産期医療を提供するような環境づくりを施策として進めています。
特に「中通り南部の工業地域」として生産年齢人口が増加しつつある医療圏なので、今後地元に定着して在住する人々のためにも、周産期医療分野の医療資産の向上が望まれています。
〈県内でも特に医師増が施策として必要、更に在宅医療の提供体制整備がより求められている〉
平成22年12月末現在の厚生労働省の調査によれば、県南医療圏の人口10万人あたりの医師数は132.6人で、全国平均219.0人や福島県全体の平均182.6人との比較でも極めて低い値となっています。県の医療行政としての医師の不足解消が必要です。
また本医療圏の現状として、在宅医療の提供体制備が課題となっています。平成20 年の厚生労働省の患者調査によれば、在宅看取りを実施している診療所・病院数は本医療圏では診療所が2ヶ所のみで病院は0ヶ所、平成21年の厚生労働省の介護サービス施設・事業所調査によれば、ターミナルケアに対応する訪問看護ステーション数が6ヶ所と、いずれも県内の医療圏で最少のレベルとなっています。このような現状を福島県としても行政施策と考えていて、在宅医療の提供体制に関する多職種の連携を推進するような方策を立てています。すなわち在宅医療においては、医療機関のみならず多くの職種の連携があって十分な医療提供が行われるため、その推進には特に医療分野と介護分野の連携が欠かせないという現実があり、特に本医療圏をはじめ高齢化が進んでいる地域では、高齢者単身世帯や高齢者のみの夫婦世帯の増加により、疾病により自宅での生活が困難であることも多くあるため、医療分野と介護分野の連携がより重要になりつつあります。
このような多職種の連携の推進のために、福島県では関係団体等と連携の上で多職種の連携の窓口となりえる在宅療養支援診療所の増加を図ることを具体的な方策としています。また一方で看取りについての体制確保を方策として掲げています。すなわち住み慣れた場所での病期療養や最期を希望する患者や家族に対して、必要な医療が正しく提供されるように在宅医療についての情報の発信を行うと同時に、訪問看護に携わる認定看護師の養成の支援を行うことや、在宅医療に関係した機関と連携しての各医療従事者の研修の機会を確保すること、また多職種による在宅サービスの調整の場の構築等の看取りに関する多職種連携のための環境を整備することや、介護サービス施設等と看取りを実施する医療機関の連携を促進し、介護サービス施設等において看取りができる環境の整備を進めること、そして在宅医療の際のメリットについて住民の理解をうながすための啓発活動を行うことを具体的な方策としています。