形成外科の医師転職お役立ちコラム
形成外科の「訴訟事例」
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1訴訟の現状とここで扱う範囲
〈近年の訴訟件数、またここで扱う形成外科の訴訟や事故の範囲について〉
まずは最高裁判所の医事関係訴訟委員会から出されている、医事関係訴訟に関する統計データを使い、客観的に形成外科の訴訟状況を把握しましょう。医事関係訴訟事件(地裁)の、「診療科目別既済件数」です。
平成24年は24件、平成25年は29件、そして平成26年は28件(速報値)となっています。
ただし裁判所の統計は過去から美容形成分野を含んだものとして出されています。この項では美容をメインにした美容形成外科を除く事例について扱っていきます。
2形成外科に関連する訴訟事例
〈実際の訴訟事例〉
形成外科に関する、あるいは近しい訴訟や事故の事例を見ていきましょう。
【事例1】
患者(平成11年当時26歳、女性)は、平成11年8月27日、左下腿部に黒色腫ができたため被告病院(大学病院)形成外科を受診した。担当医師(形成外科)は、患部の所見と患部から出血が続くとの患者の訴えから、悪性の皮膚腫瘍を疑い、最も悪性度の高い悪性黒色腫との鑑別のため、腫瘍部の組織検査を兼ね、できるだけ早く腫瘍部を完全摘出する必要があると判断し、同日午後、黒色腫の切除術を施行した。
同年9月7日、切除部の病理組織検査の結果、スピッツ母斑(良性の皮膚腫瘍)と考えられるが、スピッツ母斑にしては核異型が強いので経過観察が必要と診断されたため、担当医師は、皮膚科の診断も経て確定診断する必要があると考え、患者に対し、皮膚科を受診するよう勧めた。
患者が、皮膚科を受診したところ、基本的にはスピッツ母斑でよいと思うが、悪性黒色腫と異型性母斑との鑑別判断を要するため、患部から5mm離して切除し経過観察を要すると診断された。
(中略)
患者は、退院後、形成外科を外来受診し、左下肢の腫れと疼痛を訴え、リハビリテーション科でリハビリテーションを受け、平成13年6月には甲病院(総合病院)にて瘢痕切除術を受け、同年9月19日、被告病院形成外科を外来受診した際、左下肢の下3分の1から足先までしびれ感があり、左踵部後方に浮腫があって、長時間歩行すると疼痛が出ると訴えた。患者が、被告病院を開設する法人に対し、損害賠償請求訴訟を提起した。
大阪地方裁判所 平成13年(ワ)第12186号 損害賠償請求事件 平成14年9月25日判決
結論:請求棄却
引用元: 過去の医療事故・医療過誤(医療ミス)の裁判事例 整形・形成外科 大阪地判平成14年9月25日判決(堀法律事務所)
【事例2】※一般に「日本医大問題」と呼ばれる事件についての概要です。
1997年12月15日に、日本医大附属病院形成外科で下顎骨整復固定手術を受けた埼玉県の高橋陽子さん(当時20歳)が、手術後2日で急死したことが発端です。
助手を務めた郡家正彦医師は手術中に骨折固定用のワイヤが脳内に誤って刺入されたのを目撃、執刀医のA医師にその場で、また、術後にもこれを指摘しましたが、無視されました(日本医科大学はこの事実を否定しています)。
(中略)
ところが、01年12月、日本医大とA医師は、郡家医師が遺族に医療ミスがあったと告白したこと、これを報道機関に伝えたことが名誉毀損に当たるとして損害賠償請求訴訟を起こしたのです。報道による名誉毀損では、報道機関も訴えるのが普通ですが、今回の裁判は郡家医師だけを訴えるという異例なものでした。
引用元:日本医大問題を知るために(医療の良心を守る市民の会)
【事例3】
■概要
原告の経営する「医療法人Aわたなべ皮フ科形成外科」に約10カ月勤務していた医師が、そこから数百メートルの場所に「わたなべ皮フ科」を独立開業させた。これが不正競争行為にあたるとして争われた裁判。「わたなべ皮ふ科」「わたなべ皮ふ科形成外科」「わたなべ皮フ科形成外科」などの表示を使用してはならない、また「わたなべ皮ふ科」の表示を看板や広告物からの抹消等を求められた。結論は、被告表示の使用は自己の氏名を不正の目的でなく使用する行為といえ、被告表示の使用に不正競争防止法2条1項1号は適用されないとして請求棄却。
※上記概要は、下記の引用元の内容を基に再構成したものです。
引用元:平成20年(ワ)第13162号 不正競争行為差止等請求事件(裁判所)
わたなべ皮フ科事件(不二商標総合事務所)
3形成外科関係の訴訟の現状
〈訴訟のさまざまなパターン〉
事例2は内部告発と名誉棄損、事例3は不正競争防止という事で一般的な医療訴訟のイメージとは違ったものを紹介しました。この他でも形成外科については2015年夏に美容クリニックの不正開設について中京病院の形成外科部長が有罪になる、といったニュースが流れました。
形成外科特有の訴訟パターンという訳ではありませんが、医療訴訟以外のさまざまな形の訴訟も昨今見られています。
また形成外科は訴訟が多そう、というイメージがあるようです。それに対して日本形成外科学会は、見た目に関する患者の要望やクレームはあるものの、命に関わることや重大な後遺症を残すことが少ないため訴訟になる事はほとんどない、としています。しかし治療内容に対するもの以外にも、さまざまな訴訟が起こっている事を知っておくと良いかもしれません。
4形成外科の訴訟への対処
〈医療事故を防ぐための医師や病院での取り組み〉
訴訟はどういった形で起こるかわかりません。形成外科だけに限りませんが、医療現場では事故や訴訟のリスクに対する医師一人一人の意識の差も出てくるようです。専門医を取得して知識に厚みを持つ、医師個人での医師賠償責任保険加入など、もしもの時の対策もしておくのが良いかもしれません。
また医療界全体でも、日本医療安全調査機構により平成27年から医療事故調査制度の施行がされるなど関連した動きがあります。こうした事故への意識の高まりを敏感に感じ取り、安全対策を行っている勤務先を選択する。それも大きな訴訟対策と言えるかもしれません。
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