呼吸器外科の医師転職お役立ちコラム
呼吸器外科の「訴訟事例」
医師の転職にお役立ちの情報満載!
診療科によって様々な医師の転職市場。特に医師の求人・募集状況や転職時のポイントは科目ごとに異なります。呼吸器外科医師の転職成功のため、医師転職ドットコムが徹底調査した呼吸器外科医師向けの転職お役立ち情報をお届けします。
▲医師の転職お役立ちコラム一覧へ訴訟事例-呼吸器外科
1数字で見る訴訟の現状
〈データによる近年の訴訟件数やその推移〉
外科は訴訟リスクが高いと言われます。データで見てみましょう。最高裁判所の中に設置された「医事関係訴訟委員会」で出されている医事関係訴訟に関する統計データでは、平成26年に114件、平成25年に124件、平成24年に145件となっています。医師数の違いもあるので単純な数だけを見て多いか少ないかは判断しにくいでしょう。
少し前ですが平成20年に厚生労働省が出している訴訟に関する資料では、医師1000人当たりの既済件数で見ると外科は5件になっていて、産婦人科と整形外科・形成外科に次いで3番目に訴訟件数が多い科目となっていました。訴訟リスクはやはり高めと言えそうです。
なおこれは呼吸器外科だけでなく脳神経外科や心臓血管外科を含む外科全般の件数になります。ただし平成24年からの外科の訴訟件数が減って来ているように、実は医療訴訟は近年減少傾向にあります。日々の医療行為を少しでも安心してできるためにも覚えておきたいポイントです。
2呼吸器外科に関連する訴訟事例
〈実際の訴訟事例〉
では呼吸器外科に対する、あるいは関わる可能性がある訴訟事例を見ていきましょう。
【事例1】
胃ガンと診断され、胃全摘手術や術部の縫合を行った後に、患者において発熱が生じCT検査の結果、左横隔膜下に液体の貯留が認められたが、縫合不全の発見が遅れて抗生剤物質の投与など全身治療がなされなかったため術後管理の過失が認められた事案で、慰謝料として100万円の賠償が認められた例があります。
【事例2】
(概要)
平成11年1月11日(月)、横浜市立大学医学部附属病院の手術室において、外科病棟(第1外科)の患者(A氏、B氏)の手術を行う際、A氏をB氏と、B氏をA氏と取り違え、それぞれ本来行うべき手術(A氏は心臓手術、B氏は肺手術)とは異なる手術(A氏は肺手術、B氏は心臓手術)を行った。
(その後の委員会設置経過)
市立大学においては、本件事故の発生に気が付いた時、直ちに、市長に報告するとともに、当日(11日)の夜に、患者の家族へ説明を行い、公表することについて相談した。
翌12日(火)の午前中に、警察に報告した。
その後、本件事故の公表について家族と話し合いをしていたが、1月13日(水)一部新聞に本件事故に関する報道があり、急遽、夕刻に事故の発生について記者会見を行った。翌14日(木)に改めて記者会見を行い、事故の概要を公表するとともに、市立大学学長の指示により、附属病院内に病院長を委員長とする事故対策委員会を設置した。
事故対策委員会では、本件事故の事実関係の確認と防止対策について検討を行ってきたが、本件事故は、極めて重大かつ異例なことであるため、附属病院内部の事故対策委員会とは別に、幅広い視点から真相究明にあたるため、1月21日(木)に、本市助役を委員長とし、医学部長のほかに、外部委員の参加も得て、市立大学事務局を事務局とする委員会が設置された。
その後、会議を2回開催したが、外部委員から事実関係の確認及び原因究明を行うには、客観的な視点からの調査、検討が必要であるため、本件事故の当事者である市立大学関係者が参加しているのは適当ではないとの指摘があり、第3回目以降は、医学部長の辞職後、市立大学関係の委員を置かないこととし、また、事務局を市立大学事務局から衛生局・総務局に変更した。
また、専門的な医療領域の問題に関しては、2月27日(土)に、心臓血管外科及び呼吸器外科の専門医を特別委員として委嘱し、調査、検討を行った。
引用元:
横浜市立大学病院改革について(横浜市立大学)
3呼吸器外科関係の訴訟の現状
〈萎縮医療や医療崩壊という言葉も頻繁に〉
冒頭で書いたように外科は訴訟リスクが高いという事で、萎縮医療という言葉も一緒に語られます。それに伴い志望者減で医療崩壊などがあり、外科の関連学会ではこれらについて多くの議論がされています。医師からは個人の力が及ばない範囲の事、過失が認められない場合に対して何か補填する制度の必要性も訴えられています。また「日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会」というNPO法人も発足するなど、さまざまな活動が行われ始めています。
4呼吸器外科の訴訟への対処
〈医療事故を防ぐための医師たちの取り組み〉
長期的な視点以外に、思わぬ所からやって来るかもしれない身近な訴訟のリスクに対しては、どう備えておけば良いのでしょうか。事例2では病院自らが事故に関する情報を公開しています。また事故対策委員会の設置や専門医を招いての調査なども行われているようです。事故や訴訟に対して勤務する病院がどういった姿勢でいるのか。これはいつ訪れるかわからない訴訟に備える大きなポイントと言えるでしょう。