救命救急の医師転職お役立ちコラム
救命救急の「訴訟事例」
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1救命救急の訴訟
〈訴訟の傾向や要因〉
“救命救急”という言葉は広がっているものの、厳しい現実があるのも事実です。この分野が“たらい回し”という言葉とセットで語られる事が多いのも、その一つの表れと言えるでしょう。かつては救急車が最初の病院で断られ、次も、またその次も・・・という感じだったのが最近は救急本部や病院からの電話に「対応できません」と返される、そんな状態になっていると言います。
もちろんこれについては医師不足と密接な関係があります。救急救命センターの数は全国で245(2011年)、救急専門医の数は3,374人(2012年)。これは人口に比べれば極めて少ない状態とされています。
2救命救急に関連する訴訟事例
〈実際の訴訟事例〉
次に救命救急に関連する訴訟事例をいくつか見ていきましょう。なお事例は救命救急そのものではなく、それに関係するものも含み紹介しています。まずはたらい回しについての事例からです。
【事例1】
■概要
妊婦が分娩中に脳出血を発症して死亡したことにつき、被告病院医師がCT検査等を実施しなかった点に過失はなく、死亡との因果関係も認められないとして、損害賠償請求が棄却された事例(大淀病院事件)。
本件は、C(以下「C」という )が分娩のため大淀町立大淀病院(以下「被告病院」という)に入院中、脳内出血が生じたところ、被告病院産婦人科の被告D医師(以下「被告D医師」という )が、子癇であると誤診して頭部CT検査を実施せず、速やかに高次医療機関へ転送すべき義務を怠った結果、Cが脳内出血により死亡したと主張して、Cの夫である原告Aが、被告らに対し、不法行為に基づき、連帯して、損害賠償金4728万3748円及びこれに対する平成18年8月8日(不法行為日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を、Cの子である原告Bが、被告らに対し、同様に、4078万3748円及び上記起算日・割合による遅延損害金の各支払を求めた事案。平成22年3月1日 大阪地方裁判所
引用元: 裁判所
次は、たらい回しではなく一旦受け入れた後に自宅へ返され死亡したという事例です。
【事例2】
■概要
平成14年10月10日カルバマゼピンを夜間過量服用して強い薬物中毒症状を発した患者さんが救急車で搬送されたが、病院では点滴処置を受けただけで入院もさせてもらえずに、帰宅途中に死亡した事例。奇しくも、裁判上の和解成立日(平成18年10月10日)が事故発生日から丁度4年目の命日であったため、和解成立直後に林弁護士は遺族のご自宅を訪ね、被害者の仏前で事件の解決を報告した。
●医療機関:
公立病院
●患者の年齢・性別・身体的特徴:
33歳・女性 体重93kg 下顎未発達
●病歴:
患者は境界型人格障害の診断で、被告病院精神科にて、月に2回くらいのペースで約5年7ヶ月間外来診療を受けていた。カルバマゼピン(てんかん治療薬・精神安定薬)を処方されていた。
●薬物過量服用から死亡まで:
患者は死亡の前夜12時頃、自殺目的でカルバマゼピンを8錠から20錠を服用し、服用から約1時間20分後に救急車で被告病院に搬送された。夜間救急外来担当の医師は意識レベルの診察と点滴処置をおこなった。受診後約2時間後に帰宅させられた後、帰宅途中のタクシー内で死亡した。
引用元: 医療過誤事件 事例3 救急医療事件(林哲郎法律事務所)
3救命救急関係の訴訟の現状
〈医師不足の実際〉
事例2に関する考察として、冒頭でも挙げた日本の医師不足について触れられています。日本の救命救急医不足はアメリカなどの先進国と比較しても明らかで、考察にはこれに加えて夜間当直の専門外の医師が診察せざるを得ない現状(事例2がまさにその例)について述べられ、医師不足のため現場で対応した医師が訴訟の渦中に、といった現実を物語ります。一方で事例2については、現在の医療体制下でも対応ができない訳ではなく、最低限の手順さえ踏めば対処できるという意見もあります。
また、非番中に救命処置を行った救急救命士が処分されたという事例もあります。
事例:非番中に救命処置を行った救急救命士、停職6ヶ月の懲戒処分(企業法務ナビ)
これについては救命救急士法を逸脱する行為であったためというのが処分の理由ですが、救命救急において医師だけでなく関係する職務でもさまざまな問題が起こっている事が見えて来ます。
4救命救急の訴訟への対処
〈医療事故を防ぐための医師たちの取り組み〉
絶対的な医師不足という現実があるため、その影響が全く無い医療機関はほぼ皆無と言っても良いでしょう。そんな中で例えば仙台市医療センター仙台オープン病院では市民一人一人の意識改革が大事という活動を、市民講座等を通じて行っています。病院側がどういった体制を取っているか、考え方をしているかをよく理解して勤務先を選ぶのは、訴訟リスクを減らす自己防衛と言えるかもしれません。
最後に少し違う形での対策についての紹介です。救命業務の妨害や現場での暴行陽が複数報告されるのも救命救急の特徴と言えます。医療訴訟に関する対策だけでなく、そうした場合で所属する医療機関がどういった準備やノウハウを持っているかも、安心して日々の業務を行うポイントとなるでしょう。