内科・総合内科の医師転職お役立ちコラム
内科・総合内科の「訴訟事例」
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訴訟事例-内科・総合内科
1数字で見る訴訟の現状
〈医事関係訴訟委員会のデータによる、近年の訴訟件数やその推移〉
まずは客観的な数値として、最高裁判所の中に設置された「医事関係訴訟委員会」で出されている医事関係訴訟に関する統計データを見ていきましょう。医事関係訴訟事件(地裁)の、「診療科目別既済件数」です。内科関連はここ3年間で次のように推移しています。
平成24年 164件
平成25年 178件
平成26年 187件
注1)この数値は、各診療科における医療事故の起こりやすさを表すものではありません。
注2)複数の診療科目に該当する場合は、そのうちの主要な一科目に計上されています。
注3)平成26年の数値は速報値です。
2内科・総合内科に関連する訴訟事例
〈実際の訴訟事例〉
次に内科に関連する訴訟事例をいくつか見ていきましょう。
【事例1】
患者(昭和28年生、男性)は平成9年5月13日、肩痛、頸肩痛を訴えて被告診療所を受診(初診)。患者を診察した担当医師は、頸椎のレントゲン検査を行い頸肩腕症候群と診断し、精査目的で他院にMRI検査を依頼するとともに、低周波治療(理学療法)を実施し鎮痛剤等を処方した。
患者はその後も痛みが改善しなかったため5月16日、被告診療所を受診。担当医師は患者の頸肩痛に対し、左右の肩甲部の疼痛部位にステロイド剤である0.4%デカドロン1A(0.5ml)とプロカイン(局所麻酔薬)2Aを筋肉注射した。患者は、5月20日にも、被告診療所を受診し、担当医師から前回と同様の筋肉注射を受けた。患者は5月30日、被告診療所を受診した際、初めて口渇感及び体重の減少を訴えた。担当医師は、糖尿病を疑い、尿検査及び血糖値を測定したところ、検査値はいずれも高値であった。
患者は、被告診療所を経営する医療法人に対し、担当医師が糖尿病の罹患の有無について予め確認しないでステロイド注射を行ったことに注意義務違反があり、そのため患者の糖尿病が悪化したなどと主張して、損害賠償請求訴訟を提起した。
大阪地方裁判所 平成17年11月30日判決
結論: 請求棄却。
引用元: 過去の医療事故・医療過誤(医療ミス)の裁判事例 その他内科 大阪地判平成17年11月30日判決(堀法律事務所)
http://www.iryoukago-bengo.jp/article/14339035.html
【事例2】X(本件当時59歳の男性)は平成8年5月2日、発熱、咳、痰等を訴え、学校法人Yが経営するY大学病院(以下Y病院という)内科・外来を受診した。Y病院内科医師はXの胸部エックス線撮影、尿検査、血液検査を行い、抗生剤等を処方して、一週間後の来院を指示した。Xは同月9日、再度来院して診察を受け、抗生剤等が処方された。同月14日昼ころ、Xは救急車でY病院に来院し、2、3日前から39度の発熱、呼吸困難があるなどの症状を訴えた。
(この間の経過略)
Xは、鎮静剤から覚醒した同年6月2日、褥瘡による激痛を看護師に訴えた。Y病院は、Xが覚醒する以前である同年5月24日、Y病院皮膚科の医師を往診させてXの褥瘡の診察、治療を行わせ、その後も、同年6月28日から退院までの間に合計8回仙骨部褥瘡の壊死組織のデブリートメント(除去術)を行うなど、褥瘡の治療を行った。Xは、同年9月18日、Y病院を退院し、以後肺炎及び褥瘡について、Y病院の呼吸器内科及び皮膚科にそれぞれ通院し治療を継続した。平成11年(2月現在)Xの仙骨部には有痛性瘢痕が残存している。
Xは、学校法人Yには1ないし2時間ごとの体位交換、皮膚の清拭、マッサージ、栄養補給等を確実に実行して褥瘡の発生を防止すべき看護管理上の義務があったにもかかわらず、その義務を怠ったとして、損害賠償を求めて訴えを提起した。
横浜地方裁判所 平成14年7月16日判決
結論: 請求棄却。
引用元: No.219「大学病院に入院した患者に褥瘡が発症。病院の褥瘡発生防止義務違反を否定して患者の請求を棄却した地裁判決」(Medsafe.Net 医療安全推進者ネットワーク)
http://www.medsafe.net/contents/hanketsu/hanketsu_0_234.html
3内科・総合内科関係の訴訟の現状
〈内科は訴訟件数では1番多いものの、医師に対する割合で見るとそれほど高くない〉
ここでこの3年間の「医事関係訴訟事件の処理状況」のデータを挙げておきます。
平成24年 新受 787件 既済 844件
平成25年 新受 805件 既済 804件
平成26年 新受 877件 既済 792件
注1)医事関係訴訟事件には、地方裁判所及び簡易裁判所の事件を含みます。
注2)平成26年の数値は速報値です。
最初に挙げた内科の訴訟件数と照らし合わせると、内科の訴訟件数の多さがわかるはずです。実際に訴訟件数としては全科目の中で1番多くなっています。しかし医療施設に従事する医師数で見ると内科医の割合は突出して多いので、これを考慮するとそれほど多いとは言えません。平成18年に出された厚生労働省のデータによると、医師1,000人あたりの訴訟の既済件数では2.7件、と全体の5番目の多さとなっていました。
4内科・総合内科医たちの声
〈内科医の多くが医療事故に対する不安や実際にひやりとする経験を持つ〉
とはいえ、内科医が訴訟のリスクと隣り合わせなのは間違いありません。ベテランの域に入った時期の勤務医の回想でも「重症例が多く占めるので医療ミスが起こらないか内心不安だった」「重症患者の急変時の対応の際に、訴訟すれすれで、冷や汗をかくことを何度か経験」などの心情が吐露されている例も見られます。これと同様の不安を持ち、常に細心の注意を払い治療に取り組む内科医たちの姿が垣間見えます。