内分泌・乳腺外科の医師転職お役立ちコラム
内分泌・乳腺外科の「訴訟事例」
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1内分泌・乳腺外科の訴訟概要
〈内分泌・乳腺外科で起こり得る訴訟について〉
訴訟が起こり得るものとしては、乳癌が挙げられます。訴訟内容としては納得できる検査結果や十分な説明があったか。もちろん手術や治療についてもあります。また死に至り訴訟というケースも出ています。乳癌以外に甲状腺に関する医療訴訟もあります。
これから実際の訴訟事例を見ながらこれらについて想定しうるケースを見ていきましょう。なお内分泌・乳腺外科が訴訟の対象となった訳ではなく、乳癌や甲状腺など同科で起こり得る症状から起きた訴訟を紹介していきます。
2内分泌・乳腺外科に関連する訴訟事例
〈実際の訴訟事例〉
まずは乳癌の訴訟事例からです。
【事例1】
1995年、石田智子さんは左乳房のしこりに気づき、病院で受診。諸検査の結果、乳がんの疑いがあると告げられ、東大病院第2外科であらためて触診、マンモグラフィ、超音波検査、および2度の穿刺吸引細胞診をうけました。2度目の細胞診で、病理部は細胞の異型度をクラス4(がんの疑い)と判定し、がんかどうか確かめるため「要組織診」としました。担当医である小池道子医師は、これまでの検査結果を総合すると乳がんであるとし、手術前に組織診をすることなく乳房切除術を施行しました。しかし術後の病理検査で、乳がん細胞は発見されなかったのです。原告は深い精神的打撃をうけ、真実を明らかにするために提訴しました。
【事例2】
B型肝炎ウイルスキャリアの女性(死亡時46歳)が、大学病院において乳癌摘出術を受けた後、ステロイド剤(デカドロン)を併用した化学療法(FEC療法)の施行中に劇症肝炎を発症し、生体肝移植を受けたが死亡した事案。遺族が訴訟を提起し、担当医師の証人尋問後、裁判所の和解勧告に応じて大学病院が謝罪し6278万円を支払うことで和解が成立した。
引用元:
B型肝炎ウイルスキャリアの女性が乳癌摘出術を受けた後、化学療法の施行中に劇症肝炎を発症し死亡: 弁護士法人奔流
次に甲状腺関係の事例です。
【事例3】
患者(昭和19年生、女性)は、平成11年11月、甲病院(大学病院)において甲状腺癌摘出手術(前回手術)を受けたが、頸部左側リンパ節の郭清は行われなかった。患者は、平成12年2月、下頸部中央に腫瘤が発見され、不安を感じており、前回手術創のケロイドを気にしていたため、手術がうまいと聞いていた被告病院(甲状腺の専門病院)を、平成12年11月7日、受診した。
同月20日、エコー下での左鎖骨状のリンパ節及び右総頸動脈背側リンパ節から穿刺吸引細胞診が行われ、その結果、本件左側リンパ節から癌細胞が発見され、甲状腺乳頭癌の転移であると診断されたが、本件右側腫瘤からは癌細胞は認められず、癌と診断するには不十分であるとされた。
患者は、手術を受けることとし、平成13年3月7日、被告病院に入院し、同月9日A医師の執刀により甲状腺癌摘出手術(本件手術)が実施された。午後2時45分、A医師は、鎖骨上2横指頭側(前回手術の手術創と同位置)に襟状切開を置き、皮下を剥離した後、癒着の強度を確認し、本件右側腫瘤の摘出を行うかどうかを判断するべく、同腫瘤を検索するため、右頸動脈の拍動を確認した後、ケリー鉗子を使用し、本件右側腫瘤の1.5~2cm頭側から、鉗子の彎曲部分を下に向けて入れて開き、上から下へ向かつて繊維性癒着と頸動脈の剥離操作を開始した。本件右側腫瘤に至る以前の剥離操作開始後5分後から10分後(午後2時55分ころ)、右総頸動脈の右鎖骨下動脈との分岐部の損傷(本件頸動脈損傷)が確認された。損傷部位を縫合したが、癒着がひどく、動脈硬化が強かったため、クランプするのに手間取り、出血が多かった。A医師は、本件右側腫瘤の摘出を断念し、全身状態が落ち着いたところで、左頸部の郭清を行い、午後5時7分、本件手術を終了した。
本件手術後、患者に、左半身の動作が見られない状況が続き頭部MRIによって右大脳に多発性の梗塞を認めた。
患者は、同月19日、被告病院を退院し、丙病院に入院し、その後、丁病院に転院したが、同年10月28日、丁病院を退院し、現在は自宅で介護を受けている。
患者は、同年7月19日、脳梗塞による体幹機能障害及び左上肢機能障害により、身体障害程度等級1級の認定を受けた。
東京地方裁判所 平成16年1月26日判決
結論 一部認容(認容額合計170万円)
引用元:
過去の医療事故・医療過誤(医療ミス)の裁判事例 耳鼻咽喉科 東京地判平成16年1月26日判決(堀法律事務所)
3内分泌・乳腺外科関係の訴訟の現状
〈訴訟に対する医療側の反応〉
事例1は乳房切除術をした後に誤りだったという、乳癌治療では多く懸念される典型的な内容です。これに対しては医療側からの意見も集められています。争点としては診断と説明、そして切断の適否がありましたが、これを念頭に置きながらさまざまな意見が出ています。その中からひとつ挙げるとすれば外科医(この時の訴訟対象)と病理医、医局などの連携不足に関する意見がいくつか見られました。
4内分泌・乳腺外科の訴訟への対処
〈医療事故を防ぐための医師たちの取り組み〉
前項の訴訟に対する医師や現場での連携についてですが、乳癌の分野で著名なドクターからも手術を行う外科医と画像診断医、病理医や麻酔医との連係の重要性が言われています。
乳癌治療にあたっての取り組み方を説いたものですが、欧米では見落としや要精密検査の多発があれば訴訟沙汰になるという事も踏まえながらの言葉になっています。
こうした事からも医療現場での科目間の連携の大切さがわかります。訴訟や医療事故のリスク対策としても、コミュニケーションが取りやすい職場かは大切なポイントとなりそうです。
また乳癌学会や日本甲状腺学会でも、ガイドラインの策定や学術集会などで訴訟リスクの対応、回避などへの取り組みがされています。
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