消化器内科の医師転職お役立ちコラム
消化器内科の「訴訟事例」
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診療科によって様々な医師の転職市場。特に医師の求人・募集状況や転職時のポイントは科目ごとに異なります。消化器内科医師の転職成功のため、医師転職ドットコムが徹底調査した消化器内科医師向けの転職お役立ち情報をお届けします。
訴訟事例-消化器内科
1数字で見る訴訟の現状
〈データによる訴訟件数〉
まずは客観的な数値として、厚生労働省から出されている訴訟に関するデータを見ていきましょう(消化器内科単独ではなく一般内科や呼吸器内科を含む内科全般のデータになります)。少し以前のものになりますが、内科については平成20年に診療科目別既済件数として228件あり、絶対数では最も多くなっています。医師1000人当たりの既済件数で見ると2.5件となり、眼科や泌尿器科と同程度の件数になります。
2消化器内科に関連する訴訟事例
〈実際の訴訟事例〉
次に消化器内科に関連する訴訟事例をいくつか見ていきましょう。
【事例1】
患者(昭和53年生、男性)は平成13年12月末ごろから腰痛を覚え、年明けからは、腰痛に加え咳、口渇、嘔吐、腹部膨隆等の症状が生じたことから平成14年1月7日午前9時過ぎころ、被告病院(個人病院)を初めて受診し、被告医師(被告病院院長、内科)の診察を受けた。患者は、被告医師に対し、2日前から口渇、嘔気、嘔吐、咳、全身の倦怠感、排便停止等の症状があるが、腹痛や空腹感はないこと、関節痛・咽頭痛があり、前日体温が37.5度あったこと、咳は発作的に出て夜間に多く、喀痰はないこと等を訴えた。患者を診察した被告医師は、腹部膨張、鼓音、腸蠕動音の消失等の所見から麻痺性イレウスを疑った。患者は、診察中、吐き気をもよおしたような動作をしたことがあったが、嘔吐はなく、体温、血圧、脈拍は正常であった。
被告医師は、患者に対し、水を飲むことは危険であるから控えるよう注意するとともに、麻痺性イレウスの機序及び危険性について平易な表現で説明し、設備の整った大きな病院へ行って検査を受けるよう説得した。しかし、患者が、帰宅後、家族と相談してから決めることに固執したため、被告医師は、患者に対し、帰宅後、家族と相談し、できるだけ早く大きな病院へ行くこと、容態が悪化したときは、救急車を呼んで大きな病院へ行くよう指示した。
患者は、同日午後3時ころ、自宅で意識不明となっているところを発見され、同日午後4時10分ごろ、死亡が確認された。患者の死因ないし死因に至る機序は、明確ではないが、急性膵炎、糖尿病性ケトアシドーシスのいずれか、あるいは、併発が考えられた。
患者の両親が、被告医師に対し、損害賠償請求訴訟を提起した。
大阪地方裁判所 平成18年3月15日判決 確定
結論: 請求棄却
引用元:
過去の医療事故・医療過誤(医療ミス)の裁判事例 消化器内科 大阪地判平成18年3月15日判決(堀法律事務所)
【事例2】 ※全文アップされた文章から一部抜粋。
Z医師は、非常勤医の日直で、消化器内科が専門。医師資格取得から約5年目。
当日の日直医は4名。内科はZ医師のみ。内科の外来担当看護師は2名。Z医師は、同日、内科における約100名の入院患者と緊急外来患者の診療をしており、多忙であった。
本件患者は64才男性。軽度の肝機能障害、痛風、高脂血症、糖尿病のため、Y病院を掛かり付け医として利用していた。
平成15年3月30日(日曜日)昼12時ころ、自宅で発作。家族がY病院に電話し、Y病院看護師が「心筋梗塞と思われるのですぐに来院するように」と指示。ただちに家人はY病院に連れて行き、12時15分、Y病院に到着。
12時30分ころまでの間に、心電図検査がなされ、心電図上、II、III、aVfにST上昇が見られた。Z医師は、本件患者を問診し、11時30分ころから胸痛が持続していることを聞いた。
12時39分、Z医師は、心筋梗塞を強く疑い、採血オーダーを出した。Z医師は、本件患者が急性心筋梗塞であると判断したが、直ちに近医の三病院(PCIができる搬送病院としてT市民病院、SK病院、HJ病院)の一つに転送するための行動はとらなかった。
12時45分、ソリタT3500mlを点滴してルート確保、13時3分ミリスロールを点滴開始。本件患者の血圧は150/96で、胸部圧迫痛は持続していた。
13時10分過ぎから、12時39分の血液検査オーダーとは別途、Z医師自らトロポニン検査を実施したところ、心筋梗塞陰性との結果を得た。
13時40分、12時39分の血液検査の結果が出て、心筋梗塞陰性だった。
13時50分、Z医師は、転送を決定し、T市民病院に転院の受入れを要請した。
14時15分ころ、T市民病院から受入了承の連絡を受けた。
14時21分、救急車の出動を要請した。
14時25分、救急車到着。本件患者は、内科処置室の被告病院のストレッチャーの上で点滴を受けており、意識は清明。
14時30分、救急車のストレッチャーに移す際に意識喪失、呼吸不安定。ストレッチャーに移された直後に徐脳硬直が見られた。それまでモニターは装着されていなかったし(裁判所の認定。この点については、被告側はモニターは装着していたと主張、容態急変の直後にもモニターは装着されていなかった。
Z医師は、これをみて、脳梗塞を合併したと疑い、救急隊にCT室に運ぶように指示したが(裁判所から「理由は不明である」、「不可解な行動」と評されている)、CT室に着く前に自発呼吸まで消失したので、蘇生のため処置室に戻した。
14時47分、エピネフリン投与。援助を求められた別医師が気管挿管。
15時36分、死亡確認。なお電気的除細動は一度も行われていない。
死亡原因は、急性心筋梗塞の合併症として発症した心室細動(裁判所による認定。被告側は、心破裂、脳梗塞、急性大動脈解離等の可能性もあると主張)。
引用元:
加古川心筋梗塞訴訟・法廷の実相(新小児科医のつぶやき)
からリンクされた内容。
http://www.iryoukago-bengo.jp/category/1597750.html
3消化器内科関係の訴訟の現状
〈訴訟リスクの実際と医師不足の現状〉
上記事例2については、「加古川心筋梗塞訴訟」として転送義務や医療の地域差などさまざまな問題が指摘されています。それだけに消化器内科の事例という枠だけではなく、多くの医師からも疑問の声が挙がっています。
また医療全般の深刻な問題は消化器内科でも同様で、訴訟や医療事故とも関係する問題になっています
4消化器内科医たちの備え
〈医療事故を防ぐための医師たちの取り組み〉このような医療事故の防止に向かい、個人では限界があるために組織的に、という声や取り組みも多くなっています。例えば岡山の医療法人和風会中島病院では「医療安全推進対策委員会」「医療事故対策協議会」などを設置し、組織の整備を進めています。
当院の安全管理について:医療法人和風会中島病院
こうした体制や取り組みも、安心して働ける環境として大切にしたいところです。