放射線科の医師転職お役立ちコラム
放射線科の「訴訟事例」
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1放射線科の訴訟
〈ここで扱っていく範囲について〉放射線科は一般患者には直接イメージがもたれにくいものです。しかしその分野でも少なからず訴訟や事故といった例は挙がって来ています。ここでは放射線科に関係する事例のいくつかについて紹介していきましょう。既にこの分野で多く見られる事故については考察もされていますので、後半はそれを通して見えてくる課題や注意点を含め、訴訟リスクを低め安心して働けるポイントについても紹介していきます。
2放射線科に関連する訴訟事例
〈実際の訴訟事例〉それでは放射線科に関連する訴訟事例を具体的に見ていきましょう。なお事例は放射線科そのものではなくそれに関係するものも含み紹介しています。【事例1】■概要影剤を用いたCT検査を実施する際、患者に対する問診を怠った過失が争われ診療記録上問診した事実をうかがわせる記載が一切ないなどの事情に鑑みれば、問診は行われなかったものと考えられるとして医師の問診義務違反が認められたケース患者(昭和36年生、男性)は、平成12年9月1日、左耳前部が腫れて口を開けられない症状のため、被告病院(大学病院)耳鼻咽喉科を受診し、蜂窩織炎の疑いがあるとして、CT検査を実施することになった。担当医師(放射線科)は、同月5日、単純CT検査を実施した後、非イオン性ヨード造影剤を用いたCT検査を実施しようと、患者に対し、造影剤を注入したところ、患者は、造影剤の副作用であるアナフィラキシー様ショック症状を起こした。患者に対する救命処置がとられたが、患者は、翌6日午前1時5分に死亡した。患者の妻が、被告病院を開設している法人及び担当医師に対し、損害賠償請求訴訟を提起した。東京地方裁判所 平成13年(ワ)第23558号 損害賠償請求事件 平成15年4月25日判決結論:一部認容
引用元:過去の医療事故・医療過誤(医療ミス)の裁判事例 放射線科 東京地判平成15年4月25日判決(堀法律事務所)
【事例2】■概要患者(男性、当時71歳)は、心窩部痛と嘔気を訴えて市民病院救急外来を受診した。救急外来の担当医は、腹部骨盤部CT検査を依頼し、同検査の画像を確認して胆のうの異常を疑い、翌日に消化器科を受診するように伝えたが、放射線科医の読影結果では、胆のうの異常に加えて、本来の精査目的ではない肺野についても、異常を指摘する所見が得られていた。しかしながら、患者が翌日に消化器科を受診した時までに同放射線科医の読影結果が報告されておらず、消化器科の医師は経過観察で良いと判断したため、結局放射線科医の読影結果が確認されないまま1年10ヵ月が経過してしまった。結局、患者はその後肺癌を原因として死亡したため、患者遺族から肺癌の発見および治療が遅れたのは、救急外科の担当医ならびに消化器外科の医師が、放射線科医が行った読影結果の確認を怠ったとして責任を問われ、訴えが提起された。■経過(一部)平成20年、患者Aは心窩部痛および嘔気を訴え、H病院救急外来を受診し、O医師(本件当時研修医である)の診察を受けた。O医師は、問診および腹部の触診等を行った後、緊急血液検査の依頼を出すと共に、放射線科に対してレントゲンおよび単純CT撮影の依頼を行った。放射線科医への依頼内容は、撮影区分を体幹部(腹部骨盤部)、検査項目を腹部とするレントゲン撮影および撮影区分を腹部、検査項目を腹部骨盤部とする単純CT撮影の各検査の依頼であった。H病院では、当時、診療報酬のうちの「放射線画像管理加算2」を加算することのできる施設基準を満たすために、神経内科および脳神経外科を除いた診療科から放射線科へのCTやMRの画像撮影依頼は、オーダリングシステム上、自動的に、放射線科での読影を依頼する読影ボタン(放科読影という名称)がオンになっており、これによって、病院全体で放射線科医の読影率8割以上を満たすシステムとなっていた。H病院放射線科は、O医師の依頼に基づき、Aのレントゲン撮影および腹部骨盤単純CT撮影を行い、これらの画像フィルムを救急外来の診察室に届けた。O医師は、これらの画像フィルムを確認して腹部を精査した上で、心窩部痛に合致する腹部所見として胆のうに異常があるものの、この日は帰宅可能と判断して、Aに対し、その旨および明日必ず消化器内科を受診するようにと伝え、Aを帰宅させた。(中略)Aは、その後、精査のために、J総合病院およびK大学病院を受診し、肺癌の一種である扁平上皮がん(TNM分類・T2N2M0、病期分類・ステージⅢA)と診断された。以後、AはJ総合病院およびK大学病院で、肺癌に対する治療を受けたが、Aの肺癌の進行度、気管支中央部にリンパ節転移があることなどのため手術できず、また、間質性肺炎を合併しているため放射線科治療を行うこともできないと判断され、化学療法単独で治療を行うこととなった。平成23年、Aは、肺癌のため死亡した。
引用元: 放射線科医の読影結果を確認しなかった医師の過失が否定された事例(メディカルオンライン医療裁判研究会)
3放射線科関係の訴訟の現状
〈この分野で多く見られる医療事故〉放射線治療では、誤照射事故が頻発していると言います。誤照射とは、医師の処方と異なる線量を誤って照射する事で起こるものです。今回紹介した事例2はその一つと言えるでしょう。この原因は人的な誤りが多いという事ですが、発生で特に注意すべきタイミングもあるようです。それは治療機器の更新時、あるいは担当者の異動の際に多く発生する傾向が見られると言います。ですからこうした変化がある時期は、一層の注意が必要とされるでしょう。またこの原因について、医療の高度化とそれに反比例するかのような医師不足の現状とに関係を見る事も多くあります。
4放射線科の訴訟への対処
〈医療事故を防ぐための医師たちの取り組み〉こうした放射線医療における事故を防止するためには、医師自らが専門資格を取得するなど正しく高度な知識を身に付ける事も必要です。そのうえで先に紹介した人的エラーを無くす、という事で事故は減らしていけそうです。そして勤務する医療機関に対しても、しっかりとした安全管理体制が敷かれている事を事前に確認しておくべきでしょう。これについては機器の導入や管理はもちろん、マニュアルの整備や施設内でのトレーニングも重要になって来ます。加えてインシデントレポートの作成、その報告や共有できる体制も大切です。医師やスタッフ間の連携の大切さという意味では、職場としての医療機関の雰囲気もなるべく事前につかんでおきたいところです。
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