循環器内科の医師転職お役立ちコラム
循環器内科の「訴訟事例」
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診療科によって様々な医師の転職市場。特に医師の求人・募集状況や転職時のポイントは科目ごとに異なります。循環器内科医師の転職成功のため、医師転職ドットコムが徹底調査した循環器内科医師向けの転職お役立ち情報をお届けします。
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1数字で見る訴訟の現状
〈データによる訴訟件数〉
まずは客観的な数値として、厚生労働省から出されている訴訟に関するデータを見ていきましょう(循環器内科単独ではなく消化器内科や呼吸器内科を含む内科全般のデータになります)。少し以前のものになりますが、内科については平成20年に診療科目別既済件数として228件あり、最も多くなっています。また医師1000人当たりの既済件数で見ると2.5件となります。訴訟内容の細かな内訳は数字からだけでは見えませんが、一般的に循環器内科は訴訟リスクが高めとも言われています。
2循環器内科に関連する訴訟事例
〈実際の訴訟事例〉
次に循環器内科に関連する訴訟事例をいくつか見ていきましょう。
【事例1】
被害者は、大動脈解離の悪化を防ぐための血圧のコントロール等が必要であり、循環器内科に2か月に1回、外科に3か月に1回それぞれ通院し、服薬を続けていること、1回の診療について循環器内科では4250円、外科では1040円の診療費をそれぞれ要すること、平成17年3月17日の時点において、被害者は外科の主治医からは、3か月後の次回の診療で通院をいったん打ち切り、それ以降は体調の悪くなった場合に通院すれば足りる旨指示されていることを認めることができる。そうすると、症状固定後の治療費として、循環器内科の年間2万5500円を平均余命の範囲内である16年分、外科の年間4160円を3年分、それぞれ本件事故と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。
引用元:
被害者の症状固定後の循環器内科と外科の治療費につき事故との相当因果関係を認めた事例(ありあけ法律事務所)
【事例2】
患者が心臓部の痛みを訴えるため、検査のために中心静脈栄養(IHV)を実施する際、カテーテルの操作を誤り、同先端が右心房内に刺突し、心タンポナーデが発症したにも関わらず、これに対する治療をせず、かえって増悪する処置を行い、心不全で死亡した事案で6247万9381円の賠償が認められた例。
呼吸困難等を訴えて救急車で搬送された患者が、入院翌日に肺塞栓症で死亡した事案について、医師は狭心症を疑ったが、心カテーテル検査及び心エコー検査を行ったが、心カテーテルの検査の結果、狭心症の疑いが消えたのであるから、肺塞栓症の疑いをもってその検査・診断を下すべき義務を怠り、また肺塞栓症の治療のためのヘパリンの投与が遅れた過失により患者を死亡させたとして、6869万円の賠償が認められた例があります。
3循環器内科関係の訴訟の現状
〈訴訟リスクの実際と医師不足の現状〉
少し違った角度になりますが、専門外による診断で起こった訴訟事例も循環器の関連として紹介しておきます。
【概要】
本件は、Aは、Hが開設するI病院を受診した後、帰宅途中に救急搬送され、急性心筋梗塞により死亡したところ、Aの相続人Bらが、I病院のO医師に診療上の過失があると主張して、Hに対し不法行為に基づく損害賠償請求をした事案である。第1審は、Bらの請求を一部認容して損害賠償を認めたことから、Hが、これを不服として控訴したところ、O医師がAに見られた所見から急性心筋梗塞を含む急性冠症候群の疑いを持つことが可能であったと認めることはできないとして、第1審の認容部分を取り消し、Bらの請求を棄却したというのが本判決である。
【争点】
O医師に診療上の過失があるか。
【裁判所の判断】
O医師は、消化器内科を中心とする一般内科を専門とする医師であり、これまで急性心筋梗塞の診断や治療に携わった経験はなかったのであるから、O医師に循環器専門医と同等の判断を要求することは酷といえ、同人が心電図におけるAの急性心筋梗塞を疑わせる所見を見逃したことは、やむを得なかったというべきである。
引用元:
専門医でない当直医の過失(メディカルオンライン)
これはよく聞かれる医師不足の問題とも関連し、訴訟のリスクは至る所にあると感じられる事例と言えます。
4循環器内科医たちの声
〈医師たちの実際の声〉
では実際に医療現場に携わる医師たちは訴訟のリスクに対してどう感じているのでしょうか。
・今は仕事をしていて楽しくありません。
・治療をしていてもうまくいったときの喜びよりもうまくいかなかった時のリスクばかりを考えるようになってしまいました。 ちょっとしたことで患者さん(家族)が攻撃的になりすぐに訴訟をちらちらさせる。
実際に医療訴訟全般に対して、1970年頃から10年で2倍程度の増加があると言います。さらに1999年頃からはメディア報道が過熱し、一層訴訟リスクが高まってきたという声も聞かれます。
また「コンビニ受診」と呼ばれる緊急性がないのに急患としてやって来る患者の行動が、医師にとって診療時間の増加とストレスを与えているといった意見もあります。医師個人ではもちろん限界があり、リスクに備えられた職場環境に身を置くというのも一つの対策でしょう。