健診・人間ドックの医師転職お役立ちコラム
健診・人間ドックの「訴訟事例」
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1健診・人間ドックの訴訟
〈ここで扱う内容について〉検診や人間ドックでの訴訟や事故はその場ではおき難いかもしれません。しかし見落としのため後々のトラブルに発展していくという事はあります。ここではそうした事例をいくつか紹介しながら、この科目の訴訟リスクの現状を見ていきたいと思います。また見落としに限らず健康診断という通常の医療現場以外の環境、状況だからこそ起こるトラブルもあるようです。
2健診・人間ドックに関連する訴訟事例
〈実際の訴訟事例〉それでは健診・人間ドックに関連する訴訟事例をいくつか見ていきましょう。【事例1】※名前、時期等、内容を損ねない程度に一部変更。大手商社A社勤務の哲夫さん(仮名。死亡当時54歳)は、 普段から健康に気を遣い、A社健康保険組合が都内Y病院で実施する「生活習慣病健診」(日帰り人間ドック)を毎年受診する模範社員であった。健診の結果は、2003年秋も、2004年秋も、異常なしであった。胃部レントゲン検査(直接撮影)で「胃前庭部潰瘍及び腫瘍の疑い」が指摘され、Y病院で精密検査(胃内視鏡検査)を受けたところ、胃癌が見つかった。前年(2004年)のレントゲンフィルムにも早期胃癌の徴候が認められ、これに気づいたY病院は、哲夫さんに、率直に、前年の健診での読影漏れを謝罪し、また医療費は全額負担することを伝えてきた。哲夫さんはY病院に入院し、胃の3分の2の切除手術を受けた。が、翌2006年9月には、胃癌が再発(リンパ節転移)し、同年10月に哲夫さんは死亡した。健診で胃癌を見落とさなければ・・・との思いが、妻の君江さん(仮名)の心の底に澱のように滞っていた。(中略)1年近くの交渉の結果、Y病院は、当初の提示額の十数倍という大幅増額した和解金を提示したが、自らの責任を明確には認めようとはせず、この点に納得できない君江さんは、訴訟で決着をつける決意をした。君江さんと息子さんは、2009年、亡き哲夫さんの無念を晴らすべく、Y病院を相手取り東京地方裁判所に損害賠償請求の訴えを提起した。
引用元: 人間ドック胃癌見逃し死亡事件~31号(2010年8月11日)弓仲・元倉(たんぽぽ法律事務所)
次は医師そのものが対象ではありませんが、在宅の現場を考えさせられる事例です。【事例2】患者(71歳、男性)は、平成20年5月、右季肋部(みぞおち付近)の痛みを訴えて相手方病院を訪れ、人間ドックで全身のPET/CT、超音波(肝臓)、MRI(頭部)、血液検査等の検査を受けましたが、検査の結果、異常は認められないといわれました。患者は、その後も、右季肋部の痛みが治まらなかった為、同年7月30日、再度相手方病院を受診し、造影レントゲン検査で胆嚢を調べてもらいましたが、担当医は「胆泥があります。胆嚢全摘出術をしてもいいですよ。次回、2~3か月後に受診して下さい。」と述べ、ウルソデオキシコール酸を処方しました。その後、患者は、翌年3月に相手方病院で人間ドックを受けるまで同病院を受診しませんでした。人間ドックの問診で、患者は、右季肋部痛を訴え、PET/CTによる全身検査、超音波検査(肝臓)、血液検査、心電図検査などが実施されました(結果報告は4月)。患者は、人間ドックの4日後、海外旅行に出かけましたが季肋部に激痛を覚え現地の病院に緊急入院することになり胆石による急性膵炎と診断され、帰国して総合病院で胆嚢摘出術を受けました。患者は、4月、3月に実施された人間ドックの検査結果を聞くため相手方病院を訪れましたが、胆嚢摘出術を受けたことを告げずにいたところ、内科医から「総胆管に多少拡張があるが、結石や胆泥はない。」といわれました。患者は、胆石の見落としを理由に相手方病院に対し損害賠償請求し、本人で示談交渉を進めた結果、200万円の解決金の提示を受けました。
引用元:過去の医療法律相談『人間ドックにおける胆石の見落としで急性膵炎を発症した事案』(堀法律事務所)
3健診・人間ドック関係の訴訟の現状
〈健診・人間ドックで発生し得る事故〉ここまでに見てきたように、検診や人間ドックでの医療訴訟は見落としによるものが目立ちます。また検診や人間ドックの範囲を少し広げてみると、職場での定期健診でも訴訟にまで発展する例が見られます。これについては集団での検診になるために個々の検診と同じ基準で訴訟を判断して良いのか、というのが以前から議論されているところです。具体的には「定期健康診断は精密検査とは異なる」という解釈で行われた場合、そこで起こった事案が注意義務違反に該当するのかといった事を指します。また見落とし以外にも、健康診断時のトラブルとして内視鏡検査時の穿孔、あるいは採血時に起こる事故がこの分野で報告されています。
4健診・人間ドックの訴訟への対処
〈訴訟や事故に対する医師や医療機関の準備〉時として検診や人間ドックの際は通常とは異なる基準が設定されている事があるようです。しかし医師は検査方法をきちんと選択して、異常が認められれば告知して適切な治療方法等を指導する義務が発生するという考えが世間一般にはあります。これを医師個人、また所属する医療機関が十分に理解しておく事がこの分野での訴訟リスクを減らす事につながっていきます。また内視鏡検査時の穿孔や採血時のトラブルを防ぐためにも、予めルールやガイドラインがきちんと整備されている事が望まれます。医師による具体的なインシデントレポートも出されるようにされていれば、より万全です。医療側にとってはいささか厳しく映るかもしれませんが、過去の判例から見ればこうした備えをしておくのがベストと言えるでしょう。
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