老人内科の医師転職お役立ちコラム
老人内科の「訴訟事例」
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1数字で見る訴訟の現状
〈データによる、近年の訴訟件数〉
まず客観的な数値として、最高裁判所の中に設置された「医事関係訴訟委員会」で出されている医事関係訴訟に関する統計データを見ていきましょう。平成25年で178件、平成26年で187件となっています。なおこの数値は老人内科単独ではなく、一般内科や呼吸器内科を含む内科全般のデータになります。高齢化社会だけに65歳以上の人口を考えると、老人内科が負うリスクは数字以上に大きいと言えるかもしれません。
2老人内科に関連する訴訟事例
〈実際の訴訟事例〉
次に老人内科に関連する訴訟事例をいくつか見ていきましょう。
なおこれは老人内科として起こる可能性があるものとして高齢者の事例をピックアップしたもので、実際の担当は高齢者内科と限定されません。
【事例1】
患者(明治45年生、女性)は、平成5年より甲老人ホームに入所した。
患者は、昭和50年、完全房室ブロックを発症し、乙病院(総合病院)で心臓ペースメーカーの植え込み手術を受け、乙病院に通院して、心房細動及び一過性脳虚血性発作が認められたので、ワーファリンによる抗凝固療法を受けていた。患者は、平成5年10月、血栓が原因と考えられる右上腕動脈閉塞を発症し、平成6年1月当時、ワーファリンを1日に2.5錠服用していた。平成6年1月31日、患者は、入所していた甲老人ホームの自室前で転倒し、右腰部を床に打ち付けた。患者は右大腿骨に激痛を訴え、2月2日に甲老人ホームに併設されている甲診療所でレントゲン検査を受けたところ、右大腿骨頸部の骨折が認められたので、翌3日、被告病院(総合病院)整形外科に入院した。
(中略)
2月13日、患者の家族が患者の様子がおかしいと看護師に連絡し、看護師が患者の状態を確認したところ、患者は、収縮期血圧110で、左片麻痺及び尿失禁が認められたが、呼名に対する返答ははっきりしていた。当直のC医師が呼ばれ患者を診察したところ、嘔気や嘔吐は認められず、簡単な返答はできる状態であった。C医師は、脳梗塞の発症を疑い、絶食とした上、経鼻カテーテルによる酸素投与及び脳圧降下剤のグリセオール、抗生物質等の点滴投与を開始し、ワーファリン等これまでの内服薬の服用を中止するよう指示した。患者に対し、頭部CT検査が実施されたが、明らかな高吸収域は認められなかった。
2月14日、患者は内科へ転科し、B医師が患者を診察したところ、対光反射は左は正常であったが右では認められず、左顔面麻痺が認められ、左上肢が弛緩していたことから、B医師は、塞栓による脳血管障害であり、広範囲に及んでいる可能性が高いと判断した。
B医師は、輸液に脳循環代謝改善剤レコグナンを追加するなど脳血管障害に対する治療を行ったが、脳血管障害に対する治療について、出血性梗塞を起こす危険があることから、抗凝固剤は使いにくいと考え、ワーファリンの投与の中止を継続した。
2月21日、B医師は、患者が変わりなく経過していると判断し、流動食を開始するなどしたが、2月24日、両下肢のチアノーゼが出現し両下肢の大腿動脈について、急性動脈閉塞症と診断された。患者は、急性動脈閉塞症による両下肢の壊死が進行したため、肝障害、腎障害と感染症により全身状態の悪化を来し、その後、多臓器不全の状態となって3月19日に死亡した。
患者の家族(子)が、被告病院を設置する法人に対し、A医師らは、ワーファリンを適切に投与し、脳梗塞に対する抗凝固療法を実施すべきであったのにこれを怠ったとして、損害賠償請求訴訟を提起した。
大阪地方裁判所 平成19年3月30日判決
結論: 一部認容(認容額220万円)
引用元:
過去の医療事故・医療過誤(医療ミス)の裁判事例 循環器内科 大阪地判平成19年3月30日判決(堀法律事務所)
【事例2】
過去の脳出血の後遺症のため、体幹機能障害で立位困難、発語困難な男性(当時76歳)が夜に腹痛を訴え、救急車搬送により公立病院の救急外来を受診した。診察に当たった医師は腹部を触診したが明らかな所見は無く、各種検査の結果も正常範囲であったこと、また腹部仰臥位X線画像でも所見が無かったことから、点滴を投与したうえで3時間経過観察をした後、帰宅可能と判断した。しかし、男性の状態が苦しそうであったため、家族の申し出により男性は帰宅せずに、翌朝消化器内科を受診するということで、救急外来のベッドで点滴2本を投与して一晩を過ごした。翌朝、消化器内科ならびに外科の医師による診察の結果、男性は消化管穿孔と診断され、抗菌薬等による保存療法が行われたが、救急搬送から2日後に男性は死亡した。
本件は救急搬送時の医師に対し、腹部CT検査を行うべきであったと約4000万円の損害賠償を求めた事例である。審理の結果、1590万円の賠償請求が認められた。
引用元:
消化管穿孔による腹膜炎患者に対する夜間救急外来での対応(メディカルオンライン)
3老人内科関係の訴訟の現状
〈介護施設に絡む訴訟リスク〉
医療の最前線とも言える病院以外でも高齢者の訴訟リスクはあります。大きなものでは介護施設です。実際に医療スタッフがいない事からケアをめぐる民事訴訟が増えてきているという報告があります。今後医療との連係が増えればそれに伴う訴訟のリスクもますます大きくなるのでは、とも考えられます。
4老人内科の訴訟への対処
〈医療事故を防ぐための医師たちの取り組み〉
超高齢化社会に対する医療そのものの対応と共に、訴訟のリスクも増えていくジレンマが現場にはあるでしょう。また高齢化社会は単純に医師の数や医療とのバランスだけでなく、医療費についても医療訴訟と関係してくるかもしれません。それだけに医師や病院単位では解決できない事も多く、行政がこれについて積極的に目を向けてもらう必要がありそうです。