神経内科の医師転職お役立ちコラム
神経内科の「訴訟事例」
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1数字で見る訴訟の現状
〈データによる、近年の訴訟件数〉
まず客観的な数値として、最高裁判所の中に設置された「医事関係訴訟委員会」で出されている医事関係訴訟に関する統計データを見ていきましょう。平成25年で178件、平成26年で187件となっています。なおこの数値は神経内科単独ではなく、一般内科や呼吸器内科を含む内科全般のデータになります。
神経内科は超高齢化社会へ向け強化が掲げられる一方、内科としての訴訟リスクも孕んでいると言えるでしょう。
2神経内科に関連する訴訟事例
〈実際の訴訟事例〉
次に神経内科に関連する訴訟事例をいくつか見ていきましょう。
【事例1】
患者(大正14年生、男性)は、平成13年1月20日、被告病院(大学病院)神経内科に、脳梗塞のため入院し、パナルジンの投与等による治療を受けていた。
患者は、同年2月7日午前9時前ころまで話をすることができていたが、翌8日午前6時15分、呼吸困難が生じている状態で発見され、同7時30分ころ、患者に対し、ヘパリン投与が開始されたが、以後、患者はしゃべることができるまで回復することなく、同年3月24日に死亡した。
本訴において、被告病院を開設する法人は、患者の妻(相続人)に対し、損害賠償債務を負っていないと主張して債務不存在確認請求訴訟を提起し、反訴において、患者の妻が、被告病院を開設する法人に対し、ヘパリンを早期に投与すべきであったと主張して損害賠償請求訴訟を提起した。
東京地方裁判所 平成15年4月24日判決
結論: 本訴請求認容、反訴請求棄却
引用元:
過去の医療事故・医療過誤(医療ミス)の裁判事例 神経内科 東京地判平成15年4月24日判決(堀法律事務所)
【事例2】
次に紹介するものは、神経内科医を定年退職した元医師のブログからでそこに書かれた考察も少し記載しておきます。
ある医院で無菌性髄膜炎と診断されていた22歳男性が、実は、ヘルペス脳炎であったため、言語障害、記憶力障害などの重度な後遺症が残った事例。
大阪地裁 1998年10月の判決では、ヘルペス脳炎に罹患しているかどうかについて、鑑別するための設備がなかったにもかかわらず、大きな病院に転送しなかったとして、その医院に責任があるとしました。その医院は、「無菌性髄膜炎と診断した時点では、意識障害などは認められなかった。脳炎では、早期段階で脳波検査やCTスキャンをしても、異常が認められないことが多いので、検査設備がないことが、転医・転送の義務違反にはならない」と、主張いたしました。
しかし、裁判所は、転医・転送の義務違反と後遺症との間に、因果関係があるとしました。「期待権の侵害」という難しいケースさえありますよ。
ある医院に小学校6年生の子供が、急性脳症で来たのです。症状が悪化して、意識が混濁してきたので、総合病院へ転送いたしました。結局、この患者さんには、常時介護を必要とするような運動障害が残ってしまったのです。患者側は、「軽度の意識障害を疑わせる言動がみられた時点で、転送していれば、後遺症は残らなかった」と、主張したのですね。それは、1審、2審では認められなかったのですが、結局、最高裁まで行って、2003年11月に判決がでました。その判決は、後遺症が残らなかった可能性も少しはあったので、その分の慰謝料を払いなさいというものですよ。
すなわち、統計上、急性脳炎に罹った場合には、22%の患者が完全に回復するとされているそうですね。1審、2審では、そんな低い確率では、転送したら後遺症が残らなかったとは言えないと、判断したのですが、最高裁は、22%というのはゼロではないのだから、その分の慰謝料を払いなさいとしたわけですよ。22%といえども、患者には期待する権利があるとしたわけですね。どう、思われますか ?
引用元:
医療裁判(その3): 元神経内科医あまりすのお気楽日記
3神経内科関係の訴訟の現状
〈訴訟リスクと昨今の医療環境の実際〉
事例2で紹介したケースのように転医、転送していれば、命が助かったはず、あるいは後遺症が残らなかったはずという理由で訴訟を起こされる事もあります。結果としてクリニックや小規模の病院は患者を大病院に送るようになり、大病院の勤務医はますます忙しくなるという懸念が示されています。これなどは医療崩壊や医師不足という一言では括れない、一般メディアからは出て来ない貴重な意見と言えるでしょう。
4神経内科の訴訟への対処
〈医療事故を防ぐための医師たちの取り組み〉
訴訟のリスクに対応する事について、医師、弁護士の立場から注目すべき意見もあります。
・医療裁判は最後の最後まで泥仕合。
・判事としてはナースの記録に重きを置く。
・カルテと看護記録の整合性が判決をつかさどる。
・実際に訴訟になってしまった場合は、診療経過表の作成や反論の裏付けとなる医学文献の収集などいくつかの準備が必要。こうした事は医師個人で対応できる範囲を超えています。どんな状況でも訴訟は無いとは言いきれませんので、その備えが病院として用意されているかを転職の際は予め調べておく事も、訴訟リスクに対する個人のリスクヘッジと言えるでしょう。