受診先の決め手は?医師が患者として選ぶ病院の条件ランキング―医師1,662名へのアンケート調査より―

医師にとって病院は働く場所ですが、体調を崩して患者の立場になることも当然あります。医療現場の事情を良く知っている医師は、自身が病院を受診したいと考えた時、どのようにして病院を選ぶのでしょうか?

会員医師1,662名へのアンケート結果をもとに、医師の病院選びの条件について紹介します(回答者の属性)。

 

受診先の決め手は?医師が患者として選ぶ病院の条件ランキング―医師1,662名へのアンケート調査より―

医師が患者として選ぶ病院の条件ランキング

医師が体調を崩したりけがをしたりして、病院にかからなければならなくなった時、どのような条件を重視するのでしょうか。10項目の条件について調査した結果、最も重視されるのは医師の専門性や能力であることがわかりました。

ランキング結果は下記表のとおりです。

医師が患者として選ぶ病院の条件ランキング
1 在籍する医師の専門性や能力、実績

92.2%

2 立地・アクセス

89.9%

3 在籍する医師の人柄

88.4%

4 機器や設備

84.4%

5 診療時間

83.8%

6 症例数

76.7%

7 連携先の医療機関

65.4%

8 病院の理念や経営方針

52.5%

9 在籍する医師の出身大学や大学医局との関連

36.5%

10 学会や研究活動への取り組み

33.2%

最も票を集めたのは「在籍する医師の専門性や能力」で、92.2%の医師が「重視する」「どちらかといえば重視する」と回答しました。自分の症状に関する確かな知識や技能を持つ医師に診てもらうことが重要だと考えている医師が多いことが分かります。病院選びの際には、在籍医師の専門医資格の有無など、勤務する医師の専門性について調べてみるといいかもしれません。

僅差で2位となったのは「立地・アクセス」(89.9%)でした。一般的にもいえることですが、特に多忙な医師にとって、通院における利便性は重要な要素であることがうかがえます。5位にランクインした「診療時間」(83.8%)も、同様の理由から選ばれたものと思われます。

3、4位の「在籍する医師の人柄」「機器や設備」の条件も、8割を超える医師が重視している結果となりました。医師とのコミュニケーションや受けられる医療の質などに関わってくる要素を重んじ、診察の質を大事にしたいという考えが伝わってきます。

また、反対に重視するという回答が3割程度にとどまったのは、「在籍する医師の出身大学や医局との関連」(36.5%)、「学会や研究活動への取り組み」(33.2%)でした。医師の間では、高名な大学を出ていたり研究活動に熱心に取り組んでいたりしたとしても、臨床能力が高いとは限らないという認識が一般的であるといえます。

「自分ならここに行く!」医師が名前を挙げた病院をご紹介

医師が実際に「受診したい」と考える病院はどこなのでしょうか?アンケートの中で具体的に名前が挙がった病院を地域別にご紹介します。

北日本

    • 手稲渓仁会病院(北海道)
    • 北海道大学医学部附属病院(北海道)
    • 仙台循環器病センター(宮城県)

東日本

    • 虎の門病院(東京都)
    • 聖路加国際病院(東京都)
    • 亀田総合病院(千葉県)
    • 東京医科大学病院(東京都)
    • 慶應義塾大学病院(東京都)
    • ニューハート・ワタナベ国際病院(東京都)
    • 東京都立墨東病院(東京都)
    • 東京都済生会中央病院(東京都)
    • 東京西徳洲会病院(東京都)
    • 東京科学大学病院(東京都)
    • 東京大学医学部附属病院(東京都)
    • 国立がん研究センター中央病院(東京都)
    • 日本赤十字社医療センター(東京都)
    • 日本医科大学付属病院(東京都)
    • 前橋赤十字病院(群馬県)
    • ひたちなか総合病院(茨城県)
    • 東海中央病院(岐阜県)
    • 藤田医科大学病院(愛知県)
    • 名城病院(愛知県)
    • 名古屋掖済会病院(愛知県)
    • 独立行政法人地域医療機能推進機構 中京病院(愛知県)
    • 浜松医科大学医学部附属病院(静岡県)

西日本

  • 公益財団法人 聖バルナバ病院(大阪府)
  • 豊中敬仁会病院(大阪府)
  • 京都大学医学部附属病院(京都府)
  • 奈良県立医科大学附属病院(奈良県)
  • 神戸市立医療センター中央市民病院(兵庫県)
  • 福岡大学病院 総合診療科(福岡県)
  • のぞえ総合心療病院(福岡県)
  • 長崎大学病院(長崎県)
  • 日本赤十字社 長崎原爆病院(長崎県)
  • 【自由回答】医師が病院選びでチェックしているポイントとは

    医師が受診する病院を選ぶ時に気をつけている条件について、医師から寄せられた自由回答を分類してまとめました。

    医師の質と能力

      • 急性期病院では医師の専門性を最重要視します (60代男性、一般外科)
      • 在籍する医師の経歴。一般病院や大学病院でのスタッフとしての勤務歴があるかなど専門分野の経験についてチェックします (50代女性、消化器内科)
      • 最近の標準的な治療を知らない高齢医師は避ける (30代男性、精神科)
      • 担当医が話をきちんと聞いてくれて、ちゃんとわかりやすく話してくれること。その説明内容と矛盾なく、医療が適切になされること (60代男性、整形外科)
      • 手術であれば症例数、処置のある内科であれば処置数(内視鏡検査など) (30代男性、一般内科)
      • 症例数や学会認定状況などの情報開示を積極的に行っている方が安心できる (40代男性、麻酔科)

    医師の人柄

      • 専門とか権威とかではなく丁寧な医者は、ずっと丁寧。雑な医者はずっと雑なので、この点を気を付ける (50代男性、美容)
      • 医師は最低な人柄の方も多く、実際に患者として受診した時に、ものすごく傷つけられました。医師に技術も人柄もと両方望むのは不可能かもしれません。以降は自分の患者さんに対する態度を完全に改めました。 (50代女性、一般内科)
      • 誠実な医師 (60代男性、一般内科)
      • 目を見て診察しない人は避けます (70歳以上男性、精神科)
      • 「普通の人格をもった」医師に診てもらいたい (40代女性、精神科)

    病院・スタッフの雰囲気や安定性

      • 医療チーム全体の印象を重んじると思います (50代男性、一般内科)
      • 看護師の態度や受付の雰囲気 (50代男性、消化器外科)
      • 働いているスタッフ全員の態度、人柄 (40代男性、総合診療科)
      • 医師が頻繁に変わらないこと (30代男性、神経内科)
      • スタッフがすぐ辞めるところはダメ (60代男性、整形外科)

    病院の診療体制や機能

      • 診療科がそろっているか (60代女性、婦人科)
      • 急変時の対応の体制 (60代女性、婦人科)
      • 休日夜間の緊急時の対応の可否 (60代男性、呼吸器外科)
      • 学会施設認定 (40代男性、消化器外科)

    アクセスと利便性

      • 居住地と近いところ (50代男性、緩和ケア)
      • カード決済できるか、wifiがあるか (40代男性、循環器内科)
      • 診察や検査の日程に融通が利く (60代男性、一般内科)
      • 予約取得方法。順番予約だとありがたい (30代女性、総合診療科)
      • 待ち時間があまり長くないとよりいい (40代女性、耳鼻咽喉科)
      • 受診したいときは困っているときなので今すぐ診てくれるか(予約制の場合は予約がとれるか)、自分の求める薬を相談して処方してくれるか (40代女性、麻酔科)

    患者との関係性・コミュニケーション

      • 患者への説明の仕方や接遇 (40代女性、産婦人科)
      • 共感してくれる医療機関かどうか (30代男性、精神科)
      • 親身になって診察してくれるかどうか (30代男性、整形外科)

    その他

      • 施設認定、トラブル(外科があるか等)時の対応能力、専門医/指導医のバックUp体制の有無、診療科の数(少なくて他院に転院などの可能性が生じるか否か)、急性期病院かどうか(手術や入院までの待ち機関に影響)、関連病院かどうか(つてがあるか) (40代男性、消化器外科)
      • 軽症なら診察時間に融通がきいたり、ネットで予約ができる病院を選びます。重症ならその症例の専門医の意見を参考にします (40代女性、精神科)
      • 患者に対するポリシーが病院全体で統一されていること (60代男性、老年内科)
      • 疾患によって選ぶ病院は違ってくる (60代男性、麻酔科)
      • 侵襲的な処置や手術に対して痛みの緩和(鎮静や麻酔)をしっかり行っているところ (30代男性、一般内科)
      • できれば知り合いの医師がいる病院の方が安心はできるかなと (50代男性、リハビリテーション)

    【自由回答】患者として病院を選ぶ時に医師が感じることは?

    普段患者の診療を担当する立場にいる医師は、患者の立場に立った時にどんなことを感じているのでしょうか?
    アンケートに寄せられた自由回答をご紹介します。

    病院選びの情報源について

      • 医者仲間の意見が最も参考になる (50代男性、美容)
      • 狭い社会なので、人づてに評判をきくことが多い (40代男性、放射線科)
      • ホームページは重要な情報源なので、ホームページがない病院は避けたい (40代男性、麻酔科)

    病院選びの難しさ

      • 自分が患者側になると病院選びは難しいなと実感する (40代女性、耳鼻咽喉科)
      • 疾患によりけりだし同じ病院でもDrによりけりでは (50代男性、消化器内科)

    実際に受診する大切さ

      • 予防接種などで実際受診をしている。その時医師との会話から相性を見極めている (60代男性、ペインクリニック)
      • 最終的には実際に受診してみてそこで治療や通院を継続したいと思えるかで決めると思います (40代女性、消化器外科)

    その他

      • 「え〜、アタシが診るんですか〜?」、「もう午後4時だから〜、アタシじゃなくて当直の先生に診させて〜」、「お前がワシに患者を診させるとは10年早いぞ」的な医師がいない (60代男性、在宅診療)
      • 予約がその日の開院前の早朝から事前に取れる耳鼻科があるのですが、予約時間ではなく、予約番号と診察中の番号がネットから確認出来て、家で呼ばれそうになるまで待てたり、出先から予約をとって呼ばれそうな時間に来院するなどできて便利なので重宝しているので、もっと広まればいいなと思います。(予約時間のでとるところは枠が少なすぎて争奪戦になってとれないか、指定時間から結局診察されるまでの時間のラグが多くて待ち時間が多くて困る) (30代女性、健診・人間ドック)

    おわりに

    この記事では、医療現場をよく知る医師の方々が患者の立場に立った時、どのような視点で病院を選ぶのかについて、アンケート調査結果をもとにご紹介しました。

    治療を必要とする疾患によるところもありますが、多くの医師が主治医の専門性や人柄といった治療の質に関わる要素と、通院の負担を左右するアクセスなどの利便性を重視している傾向が明らかになりました。

    「患者の立場になると、医師でも病院選びに迷う」といった意見も聞かれ、やはり最終的には実際に受診して、医師との相性や病院の雰囲気を確かめることが重要であることが分かります。

    今回のアンケートでは、普段医師の方々が接している患者の立場でご回答いただきました。アンケート結果をご覧いただき、改めて患者がどのような診療を受けたいと感じているか、またご自身がどのような医療を提供していきたいかについて、考えるきっかけにしていただければ幸いです。

     

    【参考】回答者の属性

    調査概要

    調査内容 医師の病院選びに関するアンケート
    調査対象者 株式会社メディウェルに登録している医師会員
    調査時期 2024年12月16~24日
    有効回答数 1,662件

     

    年齢

    年齢 回答数 割合
    29歳以下 35

    2.1%

    30代 436

    26.2%

    40代 507

    30.5%

    50代 393

    23.6%

    60代 244

    14.7%

    70歳以上 47

    2.8%

     

    性別

    性別 回答数 割合
    男性 1,234

    74.2%

    女性 428

    25.8%

     

    診療科


    回答者の属性・主たる診療科

     

    地域

    地域区分 回答数 割合
    北海道・東北 141

    8.5%

    関東 662

    39.8%

    中部 245

    14.7%

    近畿 347

    20.9%

    中国・四国 97

    5.8%

    九州・沖縄 170

    10.2%

    不明・海外 0

    0.0%

     

    主たる勤務先

    現在の主たる勤務先 回答数 割合
    病院(大学病院以外) 921

    55.4%

    大学病院 188

    11.3%

    クリニック(勤務医) 328

    19.7%

    クリニック(開業医) 103

    6.2%

    一般企業 51

    3.1%

    介護施設 14

    0.8%

    休職中 26

    1.6%

    その他 31

    1.9%

     

     

     

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