医局を辞めようと考えたら?医師の転職事例に学ぶ、退局の方法と注意点

「医局を辞めたいがどうすれば良いのかわからない…」
「上司や教授にはいつ伝えるのがいいだろう?」
「何とかトラブルにならずに円満な関係を保てないだろうか?」

医局を辞めようと考えたら?

 

「医局を辞めたい」という理由から転職活動を始める医師は多いです。医師転職ドットコム利用者への転職理由アンケート※1でも、「家庭・生活事情」に次いで多かった理由は「大学病院・医局を辞める・離れる」というものでした。

しかし、医局から強く慰留を求められるケースや、トラブルとなって喧嘩別れとなるケースもあり、常に医局を円満に辞めることができるとは限りません。特に、未だに医局の影響が強い地域・診療科では、以下のような圧力がかかることも考えられます。

…医局を退局し医局人事ではない形での就職先を探す形になりました。子供の教育環境を考えると近隣の病院が良いと思い就職活動を始めたところ幸いにも同時期に近隣の病院から仕事のお誘いがあり、就職面接をするところまで話は進んでおりました。
しかしながら、医局のトップである教授の下にも話が伝わり就職先に圧力がかかり話はなくなってしまいました。

教授からは前もって「県内で医局の意向に反した人が働ける職場はありません、あしからず」と半ば脅迫めいたメールをいただいておりました。

 

この例は極端ですが、医局を辞める際のトラブルは出来る限り避けたいものです。そこで、過去の医師の転職事例を参考にし、医局を円満に辞めるための方法と注意点について以下でお伝えしていきます。

医局を辞めて転職した事例

最初に、実際に医局を辞めて転職した医師の事例を6つほど紹介します。

  • <事例1>「1ヶ月ずつ非常勤で勤務してみて、転職先を決定」

    • 30代男性、呼吸器内科医。医局派遣で病院の移動を繰り返していたが、今後は自分の裁量で新しい職場を探したいと考えた。
    • 民間の健診機関と地域密着型の病院で悩んだ末、コンサルタントからのアドバイスを受け、両方の医療機関で非常勤として1ヶ月ずつ勤務。
    • お試し勤務の後、地域密着型の病院への転職を決意。
  • <事例2>「出身大と別の医局に入るも外様扱いを受けて」

    • 40代男性、精神科医。出身大学と別の医局に所属していたが、外様扱いを受けており医局との関係は薄く、今後はもう少し自分のスキルと業務量に見合った給与をもらえる勤務先があればと思い転職先を探し始めた。
    • 転職サイトで気になった病院に問い合わせをし、紹介会社に情報収集と見学の段取り、条件交渉などを依頼。交渉材料として自分の経験や資格、スキルを伝える。
    • 週5日、2,000万円の条件で希望の職場への転職を実現。
    • <事例3>「医局を出て、800万円アップの年収2000万円を実現」

      • 30代男性、麻酔科医。医局からの人材の流出が激しくこのままでは自分にもしわ寄せがくると感じたことと、将来的に自分は医局に残る人間ではないことを鑑みて、民間病院に転職して手術麻酔に集中して腕を磨きたいと考えた。
      • 知人の紹介された週4日のA病院と、週5日の心臓麻酔もできるB病院で迷ったが、B病院が年収提示額を2,000万円に引き上げてくれ、評価してくれていると感じB病院への転職を決意。
      • 知人にもその旨を伝えたところ、背中を押してもらうことができ、円満に転職することができた。
      • <事例4>「開業準備のため医局を辞めてクリニックの分院長に」

        • 40代男性、整形外科医。医局に所属しこれまで様々な病院に派遣されてきたが、年齢的にそろそろ開業準備を始めたいと感じ、開業後の経営のノウハウや経験の身に付くクリニックへの転職を考えた。
        • 分院長の募集に興味を抱き面接に行ったが、医局を辞めて開業してうまくいくのか、家族を養っていけるのか不安になった。
        • 改めて本院の院長と話し合ったところ、院長自身が分院長から本院長になったという経験や、開業が不安な場合にはクリニック勤務医や、分院を譲渡してもよいという言葉を受け、転職することを決意。
        • <事例5>「退局の旨を上司に伝えるも、教授になかなか伝わらない」

          • 30代女性、眼科医。専門外の外科当直が負担となっている一方で、眼科のオペの経験を十分に積めない状況のため転職を考えた。
          • 転職先の医療機関で内定をもらったが、上長から教授に医局を退局する旨がなかなか伝わらなかった。
          • コンサルタントに相談し、教授に直接相談できるように話をもっていくことにしたことで、教授に退局の旨を伝えることができ、無事転職することができた。
          • <事例6>「退局活動までアドバイスを受けて」

            • 30代男性、腎臓内科医。医局派遣で勤務していたが、拘束時間が長く休みが取れない上に給与が低いこと、診療で学べるものがなくなったこと、親のいる実家への帰郷が決まったため、転職することを決意した。
            • 無事、希望の職場で内定を得た後、医局を円満に退局するためコンサルタントにアドバイスを受け、過去に退局した医師から情報収集し参考にすることに。
            • 最終的に週1回大学で外勤を行なうことで退局の許可がおり、円満に退局することができた。
          • 転職事例に学ぶ医局を辞める方法・注意点

            以上の転職事例より、医局を辞める場合の方法や注意点をまとめると、次の6点がポイントになります。

            ①転職先をあらかじめ探した上で、選択肢を比較検討し決意を固める

            転職活動の流れとしては、先に転職先を探し、医療機関から条件を出してもらった後に比較検討しどうするか決定した後に、退局の意志を伝えるのが一般的となります。「医局にいられなくなった」などで医局を辞めることが決まってから転職の相談をいただく場合もありますが、その場合転職先を急いで探す必要が出てきます。

            特に「医局に残るかどうか迷っている」場合は、転職する選択肢と「医局に残る」という選択肢を十分に比較する必要があります。そのため、転職先から年収や勤務時間・日数、業務内容などの条件を出してもらった上で、どうすべきか決意として固めておくことが退局時には重要です。
             

            ②早めに(医局人事が決まる前に)退局の旨を伝える

            教授に退局を伝えるタイミングは早い方が良いといえます。早く伝えておくことで、退局後の医局人事の調整もつきやすくなります。いきなり「3か月後に辞めます」となると、医局での人事の調整もつきにくくなるため、必死に引き留められる可能性も高くなります。

            実際に、ギリギリのタイミングで退局を伝えたことで強い引き留めを受け、転職先の医療機関にも話が伝わって転職が破談になったり、転職時期が1年先延ばしになったりするケースもあります。そのため、半年から1年ほど時間的な余裕をもって伝えておくことが望ましいといえます。
             

            ③今までに退局した医師の情報を収集する

            同じ大学の第一外科と第二外科でも双方の実態がわからないということが問題視されることがありますが、医局はどの医局に所属するかによって事情が大きく異なります。退局に関しても、比較的理解のある教授もいれば、冒頭の事例のように権威をもって厳しく対応する教授もいます。

            そのため、以前に自分の所属する医局を辞めた医師の情報や、場合によっては辞めた医師からの情報を収集しておくと、自分が医局を辞める際の参考にすることができます。
             

            ④場合によっては転職先の院長などとも相談する

            退局に関して不安がある場合には、率直に転職先の院長などに相談することも一つの方法です。これは、退局に関する具体的なアドバイスを得られるということもありますが、あらかじめ転職先との信頼関係を深めておくことで、万が一退局時に医局ともめたとしても、味方になってくれやすくなるというメリットもあります。
             

            ⑤退局の段取りは自発的に進めていく

            退局を上司に伝えてもなかなか教授まで伝わらなかったり、後任が決まるまで待ってほしいということでいつまでも長引いたりするなど、退局の話がなかなか進まないことがあります。大学医局や教授の立場からすれば、退局の話を積極的に進めたとしても特にメリットはないため、この場合は自発的に退局に向けて動いていく必要があります。

            退局交渉で上手く進まないときには、既に退局した先達やコンサルタント、転職先の医療機関に早めに相談することで解決を図っていくことをおすすめします。
             

            ⑥医局との関係を完全に断ち切る以外の答えもある

            医局人事からは離れて転職するとしても、教授や医局との関係はなるべく円満に保ちたいという希望も多いです。医局によっては難しいこともありますが、実際に医局(同門会)に籍は残しつつ転職する場合や、転職後にも週1回大学へ外勤に行く場合など、医局との関係を残しつつ転職するという方法もあります。

            以前に実際にあった例ですが、地方の大学医局でそれなりの責任を担っていた医師が、医局人事から離れて同県内の民間病院に転職するということがありました。その際はかなり教授との話し合いの場を設けた結果、転職後も最初の数ヶ月の間は、月に数回大学で講師として勤務することで話がまとまりました。

            この例のように、単に医局との関係を断つという終わらせ方以外にも様々な答えがあるといえます。これは医局によって、また医局を離れようとする医師の状況や意向によっても変わるため、医局や関係者と十分に話し合って納得のいく答えを見つけていくことが望ましいといえます。

            残るか辞めるか?医局のメリット・デメリットを振り返る

            「医局を辞める方法については何となくイメージできたが、本当に辞めていいのだろうか?」

            退局はキャリアの中でも節目となる、大きな出来事です。そのため、本当に辞めるかどうかについて一度じっくりと考えることは、納得のいくキャリアを築いていく上でも重要なプロセスです。

            以下に、医局にいることで得られるメリットとデメリットについてまとめています。医局を辞めるべきか考える際の一助としてご参照ください。

            医局のメリット

              • 1.学位(医学博士号)の取得
              • 2.専門医などの資格取得
              • 3.基礎研究や留学などの経験の幅
              • 4.人的交流や指導
              • 5.仕事上のリスクの低減
              • 6.子育てへのメリット
              • 7.割の良いアルバイト

            7点のうち特に重要なメリットとしては、学位、専門医、基礎研究や留学などの経験、人的交流が挙げられます。5~7については、所属する医局によってはメリットを享受できず、むしろデメリットになっていることもあります。

            医局のデメリット

              • 1.医局人事による異動
              • 2.大きい勤務負担
              • 3.低い給与水準・待遇
              • 4.医局内や大学病院での職場環境や人間関係
              • 5.少ない症例数
              • 6.(先が見えてしまうことや教授選に伴う)将来への不安や不満
              • 7.医局以外のことがわからない

            デメリットの7点のうち特に重要なものとして、医局人事、勤務負担、給与の低さが挙げられます。他に気づきにくいデメリットとして、医局と関わりのない医療機関の情報が入ってこないために、医局以外で自分にとってチャンスとなるような話があってもその機会を知らない間に逃してしまっている、ということもあります。

            ※医局のメリット・デメリットに関してより詳細が気になる方は、下記リンクよりご確認ください。
            >>医局に所属するメリット・デメリットとは?

            医局の辞め時―ちょうど良いタイミングはあるか?

            医局のメリット・デメリットを考えていくと、「いつ医局を辞めるべきか」というタイミングも自ずと見えてきます。つまり、医局に所属することで得られるメリットよりもデメリットが上回るタイミングで辞めるのが良く、具体的には専門医や学位を取得したタイミングが医局の辞め時の一つになります。

            その他、医局を辞めるタイミングとして多いのは、家庭環境の変化です。「親の介護」「結婚・配偶者の仕事の都合による転居」「妊娠・出産」「子育て・子どもの教育」など、家庭の事情による退局は理由としてはっきりしている分、伝えやすい面もあります。

            上記以外では、医局人事、教授の交代など医局内の体制変更、また”御恩奉公”が終わったタイミングに合わせて退局する場合もあります。

            しかし、退局にあたってはあまり「ちょうど良いタイミング」を意識し過ぎる必要はないと考えられます。タイミングを計れば「こういう事情があって…」と説明しやすくなるのは確かですが、なかなか良いタイミングをつかめないまま激務を続けて体調を崩してしまうこともあります。

            「ちょうど今」というタイミングまで無理をするのではなく、「そろそろかな」と思えた段階で医局を辞めることを考えてもよいのではないでしょうか。

            他の医師が医局を辞める際に抱えている悩みや不満

            更に参考までに、他の医師が医局を辞める際にどのような悩みや不満を抱えているのかについて見てみましょう。

            冒頭の転職理由アンケートで「大学病院・医局を辞める・離れる」が理由となっていた医師の回答の詳細を確認すると、特に多かったのは「医局人事による負担や不満」となっています。

            その他、職場環境・人間関係上の問題や、勤務負担、給与・待遇、診療以外の業務負荷などの回答がありました。以下に、回答例をいくつか紹介します(匿名性担保のため、一部文言を編集しています)。

            • 医局人事

              • 医局人事により数年単位で突然の異動が繰り返されることに疲弊したため。
              • 出産を経て現在は非常勤勤務をしているが、医局からの突然の人事異動に疲れてきたため。
              • 医局人事で希望が通りづらいため。
            • 職場環境・人間関係

              • 大学病院の理不尽な体制に疲れたため。
              • 医局の他の先生との相性が合わなかったため。
            • 勤務負担

              • 大学の勤務が体力的に厳しいため。
              • 身体面・精神面での体調の都合上、医局での勤務が継続しづらいと感じたため。
            • 給与・待遇

              • 拘束時間の割に大学の給料が少なく、バイトだけでは生活が苦しいため。
              • 先に医局を辞めた医師が、当直なしで自分よりはるかに高い報酬を得ていることを聞いたため。
            • 診療以外の業務負荷

              • 大学病院で診療以外にも研究業務が多く、今後も増大すると予想されるため。
              • 大学では雑用が多く収入も少ないのに加え、年々負担が多くなってきたため。

            このように見ていくと、自身にも思い当たる内容がいくつかあるのではないでしょうか。比較的多く当てはまるようであれば、医局を辞めるタイミングとして「そろそろかな」といえる状況にあるのかもしれません。

            最後に――退局にあたっての心得

            ここまで医局を辞める方法やタイミングなどについてお伝えしてきました。以下にそのポイントをまとめます。

              • 1.医局のメリット・デメリットを冷静に振り返る
              • 2.辞めるために「ちょうど良いタイミング」を狙う必要はない
              • 3.転職先はあらかじめ探しておく
              • 4.早めに退局の意志を伝える
              • 5.今までに退局した医師の情報を収集しておく
              • 6.場合によっては転職先の院長などに相談する
              • 7.退局の段取りは待ちの姿勢でなく自発的に進めていく
              • 8.必ずしも医局との関係を完全に断ち切る必要はない

            これら8点については、退局にあたっての心得として押さえておくことをおすすめします。

            この他、教授への退局の申し出の方法や、退局後の条件の良い職場探しなど、退局時には悩ましいポイントがいくつかあります。

            現在、もしくは将来的に医局を辞めることをご検討されている方は、納得のいく退局・転職にこだわるメディウェルのコンサルタントまで一度ご相談ください。先生一人一人のご状況に合わせて適切なサポート・ご助言をさせていただきます。

            >>医局を辞める方法や退局後の働き方についてコンサルタントに相談する

             
            <注>
            ※1 2016年の医師転職ドットコム利用者への調査。N=696。