医師にとって、転職は決して縁遠いものではありません。会員医師1,205人へのアンケート調査では、7割超の医師が転職を経験していました。
厚生労働省が2024年7月に取りまとめた一般職業紹介状況によると、医師など医療職種の有効求人倍率は昨年と比べて増加傾向にあります[※1]。
そのため、転職したい医師が転職による待遇や勤務環境の改善をかなえやすい状況だといえます。
一方で、大学医局が地域の関連病院に影響力を持つケースなど、業界的な世界の狭さがスムーズな転職を阻む側面もあります。
実際、医師は転職についてどう感じ、また実際どのように取り組んでいるのでしょうか?
アンケート調査から、転職を経験した医師の転職理由や方法、転職未経験の医師が知りたいことなど、医師の転職の実態をお伝えします(回答者の属性)。
※本調査での「転職」には、研修による施設異動や医局人事による異動、開業は含みません。

目次
- 1.医師の7割超が転職経験あり、複数回経験の医師も4割
- 2.転職したいと思ったきっかけ、最多は「年収・待遇面で不満を感じた時」
- 3.医師に最も多く選ばれている転職方法は「紹介会社の利用」
- 3-1.「紹介会社を通じて転職したことがある」医師は7割超
- 3-2.紹介会社選びで医師が重視するのは「担当者と求人の質」
- 4.転職未経験の医師は転職についてどう考えている?
- 4-1.転職を考えたことがある医師は約7割
- 4-2.希望に沿う転職先が見つからない不安を抱える医師が約半数
- 4-3.転職未経験の医師が経験者に聞きたいこと
- 4-3.転職未経験の医師が紹介会社のコンサルタントに聞きたいこと
- 5.転職を経験した医師の受け止めや体験談は?
- 5-1.前回の転職活動を「うまく進められた」「満足している」と感じる医師が約9割
- 5-2.紹介会社を利用した医師が印象に残っているエピソード
- 5-3.過去の転職活動で医師が苦労したこと
- 5-4.医師が過去の転職活動で後悔していること
- 5-5.医師が過去の転職時に失敗したこと
- 5-6.転職経験医師がやってよかったことや、未経験の医師に勧めたいと思うこと
- 6.転職した医師から転職未経験の医師へのアドバイス
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医師の7割超が転職経験あり、複数回経験の医師も4割
今までの転職回数を聞いたところ、「0回」と答えた医師は27.6%で、「1回」と答えた医師(27.5%)とほぼ同率で最多となりました。
転職経験がある医師は全体の7割を超え、複数回転職している医師も4割超となっています。
転職をしたことがある医師の中で最も多かった転職回数は「1回」(27.5%)でした。
転職支援サービスを提供するメディウェルの会員アンケートであるため、転職経験がある医師の割合が多くなっていることが推測できますが、その点を踏まえても多くの医師が転職を経験していることがわかります。
転職したいと思ったきっかけ、最多は「年収・待遇面で不満を感じた時」
医師はどんな時に転職を意識することが多いのでしょうか。
転職経験がある医師とない医師それぞれに、「転職したい」と思うタイミング(思ったきっかけ)について聞いたところ、いずれも「年収・待遇面で不満を感じたとき(ため)」が最多となりました(複数回答)。
転職未経験の医師の回答
転職を経験した医師の回答
転職経験のある医師、ない医師に共通して、次点で「勤務の時間的拘束が長い」「休息を取れず心身の疲れを感じる」「家庭環境の変化」が続いています。
全体的に、人間関係よりも待遇やワークライフバランスを優先するという結果となりました。「職場や医局での人間関係」「患者やその家族とのトラブル」の2項目については、転職経験の有無に関係なく下位になっています。
また、回答の割合を見ると、転職未経験の医師に比べて、転職を経験している医師の回答は各項目に分散している傾向があります。
ライフステージの変化や勤続年数の長期化とともに、転職を検討する要因が増えていくことが要因の一つであると推測できます。
医師に最も多く選ばれている転職方法は「紹介会社の利用」
医師の一般的な就職活動の進め方には、どんな方法があるのでしょうか。
転職経験がない医師とある医師それぞれに、「転職する際に利用したい手段(前回の転職で利用した手段)」について聞きました。
最も多かったのは、いずれも「紹介会社による求人紹介」で、紹介会社を通じた転職活動が医師の間で一般化していることがうかがえる結果となりました。
転職未経験の医師の回答
転職を経験した医師の回答
転職経験の有無にかかわらず、紹介会社の活用・知人の紹介が比較的多い傾向が見られます。
また、実際に転職を経験した医師は、未経験の医師に比べて医療機関へ直接問い合わせる手段を取る割合が低いことが分かります。
実際に転職活動を始めると、多忙な実務と並行して医療機関とのやりとりなどを自力で進めていくのは難しいことがうかがえます。
「紹介会社を通じて転職したことがある」医師は7割超
実際に転職を経験した医師のうち、紹介会社を利用したことがあると答えた医師は73.8%でした。
また、紹介会社を利用した医師に、同時並行して何社利用していたか聞いたところ、「2社」と回答した医師が最も多く、31.7%でした。
次いで「3社」(27.6%)、「1社」(26.7%)と続き、「5社以上」と答えた医師も7.8%いました。紹介会社を利用する場合、複数社を活用して転職活動する医師が多いことがわかります。
紹介会社選びで医師が重視するのは「担当者と求人の質」
紹介会社を利用した転職経験がある医師に、紹介会社を選ぶ上で重視しているポイントについて聞いたところ、「担当者の対応が良く丁寧」という点が64.0%で最多となりました(複数回答)。
次いで「条件の良い求人がある」(55.3%)という回答が多く、担当者と求人の質に重きを置く医師が多いことが読み取れます。
対応スピードや求人数、情報の詳細さ、条件交渉力を求める医師も一定数いた一方で、紹介会社の母体や利用者の評判はあまり注目されていないこともわかりました。
転職未経験の医師は転職についてどう考えている?
転職経験がない医師は、転職に対してどんなイメージを抱いているのでしょうか。
転職回数「0回」と回答した332人の医師に対し、「転職を考えたことがあるか」「転職活動への不安」「転職を経験した医師に聞きたいこと」「紹介会社のコンサルタントに聞きたいこと」の4つについて質問し、回答を以下にまとめました。
転職を考えたことがある医師は約7割
「転職したいと思った経験がある」と回答した医師は69.6%で、転職未経験でも多くの医師が転職を意識したことがあることがわかります。
希望に沿う転職先が見つからない不安を抱える医師が約半数
もし転職活動を始める場合、どのようなことが不安や障壁になりうるかを聞いたところ、「希望に叶う転職先が見つからない」ことを挙げた医師が49.1%で最も多い結果となりました(複数回答)。
現状の勤務先に対して感じている問題点を改善できるような、希望通りの転職先を探すことは難しいと考えている医師が多いことが分かります。
また、医局や現在の勤務先を離れることへの不安も大きいことが見て取れます。特に退局については、次の勤務先への影響も少なくないケースがあるため、慎重な意見が多いようです。加えて、転職活動の進め方についても知識がなく戸惑っている様子がうかがえました。
さらに、転職未経験者医師ならではの回答として、資格取得への影響を挙げる声が出ています。若手世代でまだ専門医などの資格を取得しておらず、転職が不利に働かないかという懸念を抱えていることがわかります。
転職未経験医師が経験者に聞きたいこと
転職未経験の医師が、実際に転職した医師に対して聞きたいことについて、自由回答を以下にご紹介します。
転職前に確認すべきポイント
-
- 転職してから確認しておけばよかったと思うこと、決断するのは何が一番決めてであったか。 (60代女性、一般内科)
- 転職先の病院を決定する際に、確認しておくべきポイント (30代女性、腎臓内科)
- 転職先の内容を転職前にどのように勉強や修行をしたか (30代女性、眼科)
前職の職場との関係性
-
- 現職の上手なやめ方 (40代女性、形成外科)
- 転職後の医局との関係性、関わりの程度 (30代女性、眼科)
転職先の条件
-
- 給与の変化 (40代男性、精神科)
- 条件提示と仕事内容の交渉について (40代男性、循環器内科)
転職そのものの是非
-
- 転職のメリット・デメリット (40代女性、心臓血管外科)
- 転職の是非 (70歳以上男性、循環器内科)
その他
-
- 後悔したこと (50代女性、一般内科)
- 開業する場合、当然様々なリスクもあると思いますが、何をどう調査することで、その不安は少し減るでしょうか? (60代男性、消化器外科)
転職未経験の医師が紹介会社のコンサルタントに聞きたいこと
転職未経験の医師が紹介会社のコンサルタントに対して聞きたいことについて、自由回答を以下にご紹介します。
求人・求人の探し方
-
- おすすめの転職 (30代女性、眼科)
- 自分と同じ科での実際の転職先 (40代女性、心臓血管外科)
- 実際に非公開求人はどれくらいあるのか (30代女性、腎臓内科)
- いい案件の探し方 (60代男性、一般内科)
条件交渉
-
- 給与の交渉はどのくらいできるのか (60代女性、一般内科)
- 条件を正確に (70歳以上男性、小児科)
- いわゆるサテライトクリニックの分店の支店長などの求人の場合, どの程度こちらの裁量によって業務範囲が決められるのが気になるところです. 言い方は悪いですが, とにかく少しでも多く点数を取るよう強く働きかけられるような環境・経営方針だと精神衛生上良くないと思うので (30代男性、耳鼻咽喉科)
紹介会社のメリット・実績・仕組みについて
-
- 紹介会社を利用するメリット (40代男性、病理診断科)
- 信頼性 (70歳以上男性、循環器内科)
- 結局、コンサルタントの皆様の評価としては、実績や収入だと思います。本音で言えば、この仕事のモチベーションは何でしょうか? (60代男性、消化器外科)
- 成功例の比率 (50代女性、一般内科)
- 希望に沿う転職先をどうやって選ぶのか? (70歳以上男性、耳鼻咽喉科)
なお、メディウェルでは、医師転職支援サービスの内容や活用メリット等を以下で説明しています。ご参考までにご覧ください。
転職を経験した医師の受け止めや体験談は?
転職したことがある医師は、過去の転職に満足しているのでしょうか。また、転職活動の中でどんな経験を重ねてきたのでしょうか。
前回の転職活動を「うまく進められた」「満足」と感じる医師が約9割
前回の転職活動を「うまく進められた」と感じている医師は52.3%、「まずまずうまく進められた」と感じている医師は42.3%で、9割超の医師がスムーズに転職活動できたと感じていることがわかりました。
また、前回の転職活動の結果についても「満足している」が49.8%、「どちらかといえば満足している」が41.4%で、9割の医師がおおむね満足しているという状況です。
紹介会社を利用した医師が印象に残っているエピソード
紹介会社を通じて転職活動をした経験がある医師644人に、「紹介会社を活用する中で印象に残ったエピソード」を聞きました。以下、自由回答の一部を紹介します。
転職先候補とのやり取り
-
- 事前交渉をお願いできた (60代男性、心臓血管外科)
- 担当者が募集条件以上の交渉をしてくれた (40代男性、その他診療科)
- お断りの際、会社主体で問題なく対応していただけた (40代女性、循環器内科)
親身な対応
-
- 以前お願いしたメディウェルさんは、かなり親身に対応してもらえました (40代男性、整形外科)
- 面会場所や時間をかなり融通してくれたり、求人先の病院までの送迎もしてくれた (50代男性、消化器内科)
- 自分だけでは探しきれなかった医療機関の案件を紹介してもらい、希望条件にぴったりだったのが今の職場 (40代女性、一般内科)
情報の詳細さ、正確さ
-
- 病院の裏事情も少し教えてもらえたので、選ぶ参考にした (30代女性、消化器内科)
- メディウェルの担当者が多岐に渡り情報に詳しく、非常に参考になった (30代女性、呼吸器内科)
- マイナー科であるが、転職会社の科の紹介HPが的確に書かれていたので信頼できた (30代女性、病理診断科)
複数社比較する大切さ
-
- 担当エージェントさんによって紹介してくださる求人が全然違いました。一つに絞らずに、いくつかの紹介会社を並行して利用させていただくことが大切かもしれないと思いました。 (20代女性、一般内科)
- 3社問い合わせを行った結果、1番早く面談してくれた会社の担当者がとても丁寧で良かった。コロナ禍前だったが面談しない会社もあった (40代男性、消化器外科)
担当者次第
-
- 担当者と転職活動の時期によって、熱心さに差が出るように思いました (40代女性、一般内科)
- 1つの転職サイトを時期を分けて2度使用した。1度目の担当者はあまりにも酷かったので転職自体が実現しなかったが、2度目の担当者はとても良く自分のいいようにやれた。結局会社ではなく中の人次第だなと思った (30代女性、血液内科)
- 会社(担当者)によってやる気に結構差があると感じた (20代男性、放射線科)
条件に合わない求人を紹介された
-
- 給与の面は詰めが甘い、当直がある病院では当直の条件が違うことがあるので文書で条件を詰める必要がある (50代男性、健診・人間ドック)
- 入職後の勤務環境が最初の説明と違う点が多く、結局退職することになった時に紹介会社の上層部から謝罪を受けた。 (40代女性、消化器内科)
- こちらの条件にあった病院よりも紹介会社が紹介したい病院を勧めてくる印象がある (40代男性、消化器外科)
担当者の対応に不備があった
-
- 紹介会社のミスで不利益を被ってしまいましたが、まあ許して下さい。という緩い対応を取られてしまいました。やはり知り合いの医師を頼ったほうが信頼できるかもしれないなあ。と思ってしまいました (50代女性、一般内科)
- 求人に対して問い合わせをしても返事がない方がいて驚いた。 (40代女性、健診・人間ドック)
- 担当者が変更になった後、最終的に放置状態になった。知人の紹介で転職できたので助かった (40代男性、一般内科)
その他
紹介会社の活用について、「転職先とのやりとりや情報収集に役立つ」という意見がある一方で、「期待していたサービスを受けられなかった」という声も寄せられています。
また、「担当者次第で転職しやすさが大きく変わる」と、複数社比較することの大切さを挙げる医師もいました。
紹介会社を活用するメリットとデメリットを理解した上で、複数社比較しながらメインで活用する紹介会社を絞り込んでいくことが重要かもしれません。
過去の転職活動で医師が苦労したこと
一般的な就職活動の経験が少ない医師にとって、現状の勤務先をやめたり転職先を探したりする転職活動には苦労をともなう場合もあります。
アンケートにもさまざまな苦悩や葛藤の体験談が寄せられました。
勤務条件の交渉、確約
-
- 時短勤務で相談していたが、いざ面接の時に終日勤務を提示され困った (40代女性、小児科)
- 希望年収をなかなか伝えにくい (60代女性、一般内科)
- 複数病院を候補に挙げたとき、全て自分で見学の調整や比較をしなければならなかったこと (20代女性、リハビリテーション)
情報収集
-
- どこに相談すればよいかわからなかった (60代男性、一般内科)
- 初めての時はどうしたらよいかわからなかった。また紹介会社と連絡を取るのがすごく面倒に感じた (50代男性、消化器外科)
- 遠隔地へのかつコロナ渦での転職で、現地の情報の詳細が把握しにくかった (60代男性、一般内科)
年齢・性別の条件
-
- 年齢でしょう (60代男性、一般内科)
- 高齢を理由に求人数が少ない (60代男性、産婦人科)
- 飛行機で面接に行く前日に女医は不要と断られたこと (50代女性、精神科)
前勤務先や医局との関係性
-
- 前の病院からかなり引き止められた (50代男性、人工透析科)
- 教授の御意向とのかねあい… (50代男性、整形外科)
- 大学を辞めることが決まったあとに陰湿なイジメがあった (30代女性、病理診断科)
実務と就職活動の両立
-
- 複数社と並行して予定がある事 (40代男性、消化器外科)
- 平日は仕事を抜けづらく、見学の日数が限られた (30代男性、一般内科)
- 業務と並行して就職活動を行うので時間的制約が厳しかったです (40代男性、整形外科)
希望条件に沿う求人探し
-
- 求人が多いので、条件の違いなど、選ぶのに時間がかかる (50代男性、消化器内科)
- なかなか希望通りの転職先がなく収入が減り生活に苦労した (60代男性、泌尿器科)
- 転職先を探すのに1年近くかかった (50代男性、麻酔科)
紹介会社への不満
-
- コミュニケーションが取りにくい担当者だったこと (50代男性、消化器内科)
- 仲介業者の対応が遅い (30代女性、美容)
- 紹介会社と連絡が途切れること、交渉の段階でこちらに妥協を求めてくること (50代男性、麻酔科)
その他
-
- 面接先で妙に気に入られたようで、過去の研究内容なども質問を受け面食らった (40代男性、泌尿器科)
- 紹介された手前、知人の顔に泥を塗らないよう必死だった (30代男性、脳神経外科)
- 転科するとき、勢いだけで行動して大変だった。当時の医局長に諭されてしまった (40代男性、一般内科)
医師が過去の転職で後悔していること
転職は生活や人生に大きな影響を及ぼすため、複数回繰り返すのはなかなかリスクやハードルが高い一面があります。もし転職後にギャップを感じても、対処が難しいこともあると思います。
実際に、転職後に「もっとこうすれば良かった」と後悔を抱えている医師の声をご紹介します(自由回答)。
条件面の確認
-
- 給与が年俸制だから一定金額が確保されると思っていたら、年俸の一部にボーナス相当分が含まれていることが契約書に記載されていたので、契約書にこぎつける前にはっきりさせておかなかった点(ボーナス分減らされることが多い) (50代男性、健診・人間ドック)
- 条件面の折り合いを書面で残しておいても、こんなはずではなかったということが起きうる。経験者の談や、条件をしっかり詰めておくことをお勧めしたい (60代男性、麻酔科)
- あまり自分の技術や知識を謙遜しすぎないこと。給与や休暇などの交渉は、相手に飲み込まれず自分で交渉をすること (50代女性、一般内科)
転職先の人間関係
-
- 院長の人柄をしっかりと見極めること (60代男性、一般内科)
- 同僚となる医師をもっとよく見ておけばよかった (30代男性、一般内科)
転職時期
-
- もっと若いうちに転職すればよかった (50代男性、一般内科)
- もっと早く転職すればよかった (40代男性、一般内科)
- もっと早く医局を離れてもよかったかもと感じます (40代男性、消化器内科)
紹介会社の利用
-
- 友人の紹介で入職したが、その後突然契約解除されてしまい、紹介会社を入れておけば良かったと後悔した (60代女性、一般内科)
- 複数の紹介会社での比較 (50代男性、一般内科)
- 転職エージェントの利用。一人で進めるのは大変 (30代男性、脳神経外科)
情報収集
-
- 自分以外の勤務医師の現在の処遇について、情報を得ておけばよかった (50代男性、整形外科)
- 当該地域の大学医局との関係をよく知っておくこと (40代男性、麻酔科)
- Web上の雑多な情報も含め、転職先に関する情報を様々な立場の人から参照しておくこと 職場の雰囲気やなぜ求人募集が出ているのかを確認しておくこと (40代女性、一般内科)
- 上層部だけでなく、同じ部署のスタッフが自分に対して何を望んでいるのかを、事前に聞いておく。 (40代女性、麻酔科)
スキルアップ
-
- 自分の得意分野を作る事 (50代女性、放射線科)
- 専門医をとってなかったこと (60代男性、消化器内科)
- レセプトの勉強をしておけばよかった (40代男性、消化器内科)
医師が過去の転職時に失敗したこと
転職活動において、実際に失敗してしまったという医師もいました。今後転職を考える医師のためにエピソードを寄せていただいたので、以下にご紹介します(自由回答)。
転職後の勤務内容が希望条件と異なっていた
-
- 時間外勤務はほとんどないと聞いていたのに実際働いたら時間外の対応が意外と多かった。 (40代女性、小児科)
- 知り合いの紹介で転職したが、聞いていた給料と全く違っていた事が転職2ヶ月前にわかった (50代女性、麻酔科)
- 現院長の「俺はフェードアウトする」という言葉を退任すると受け止めていたこと。実際は役職についたまま、面倒な仕事の大半は人に任せて自分は仕事量を減らして楽をするという意味だった。 (60代女性、精神科)
- 関連施設往診や遅番早番を後で頼まれた。又、往診と急変用電話持ちなど、後から言われた。 (50代男性、消化器内科)
情報収集
-
- 転職早々に赴任先の財務状況の悪化顕著という事実が判明して、早々に再転職先を探す事になった。 (50代男性、一般内科)
- 実際に仕事をしないと、周りの医師や検査技師さんの技術レベルは分かりません。他者のミスで責任を負わされたりしました。非常勤でしばらく勤務して、確認すべきでした。 (50代女性、一般内科)
- 他と明らかな待遇の差を後から知りとても残念でした (40代男性、健診・人間ドック)
人間関係
-
- 勤務してみると院長が独裁的で勤務がいやになった (50代男性、一般内科)
- 面接の時に院長に対して違和感を覚えたのに,その直感を信じなかったこと (60代男性、産婦人科)
- 同僚が人間的にダメな人だった (40代男性、人工透析科)
転職活動中のトラブル
-
- クリニックの場所が良くわからず遅刻した (40代男性、皮膚科)
- 面接のダブルブッキング (30代男性、脳神経外科)
- 面談に行ったら、求人内容と職務内容が異なっていた (30代男性、腎臓内科)
医局関連
-
- 医局との交渉 (30代男性、泌尿器科)
- 医局とは和解していると面接で言ってしまったが、面接官が医局と親しい人で、和解していないことがバレてしまった (30代女性、呼吸器内科)
その他
-
- 退職金を誤魔化された (60代男性、整形外科)
- 期間が短く、早く内定が欲しかったために条件の交渉を十分にできなかった (30代男性、神経内科)
- 転職先を決めずに辞職したこと (50代男性、麻酔科)
転職を経験した医師が未経験の医師に勧めたいと思うこと
転職したことのある医師に対して、これまでの転職活動でやってよかったこと、また転職未経験の医師に勧めたいと感じたことを聞いたところ、以下のような回答が上がりました(自由回答)。
紹介会社に関すること
-
- 何社か比較検討をして、自分に合っていると思う紹介会社を見つけること (40代女性、小児科)
- 紹介会社さんには無理かな?と思ったことでもお願いして交渉してもらうのがいい (30代女性、麻酔科)
- 紹介会社の担当者の能力で、だいぶ転職し易さは変わると思います (40代女性、消化器内科)
面接・面談時の心構え
条件の確認・交渉
-
- 有給休暇の取りやすさ、給与、時間外など疑問に思うことは紹介会社を通じてでもはっきりさせておいたほうがよい (50代男性、健診・人間ドック)
- 同じ病院でもサイトによって提示条件が違ったり、実際は提示されている条件より悪かったりするので、自分でも網張るのが大事 (30代女性、消化器内科)
- 年収の内訳をきちんと確かめておくこと。転職をしてから、当直代込みとか時間外込みとか後出しみたいなことを言われた (70歳以上男性、一般内科)
資格取得
-
- 名ばかりの資格も判断材料となります (40代男性、健診・人間ドック)
- できるだけ資格を取る。自分の価値を高めることができる (50代男性、消化器外科)
- 専門医資格 産業医資格をとったこと (50代女性、循環器内科)
早めの動き出し、スケジュール管理
-
- 早めの活動開始 (60代男性、小児科)
- スケジュール管理はしっかりすべきでした。いつ入職か、それから引き算で、いろいろ動いた方が良かったと思います(60代女性、一般内科)
- 転職予定の一年前から、求人募集をみて、相場を知る (30代男性、腎臓内科)
転職先候補の比較
-
- ほとんど決まっていても、2~3の病院へは面接に行った方が後々役に立つと思う。院長の方針、性格等がわかる (60代女性、一般内科)
- 多くの病院を候補に入れるべき。情報を取得するのも難しいので紹介会社を利用させてもらうのも良い方法かと思う (30代男性、麻酔科)
- 4つ以上は見学しに行く (30代男性、形成外科)
人脈づくり、人間関係
-
- 先輩、同僚、友人を大事にすること (60代男性、一般外科)
- 医局のしがらみは気にしなくて良いが、医師会とのつながりは大事にしたほうがよい (40代男性、小児科)
- 地方ではあまり仕事がなく、結局知人、友人からの仕事依頼が今メインになっているので、やはり地方では他の医師との繋がりが大事だなと思いました (50代女性、皮膚科)
- 学会でのコネクション作り (30代男性、脳神経外科)
診療現場の見学・トライアル
-
- 外科系の場合は手術見学をしたほうがいいと思います。面接ではトップの方と話しますが、手術室に入ると現場の一緒に働く人の雰囲気を感じることができます (40代男性、整形外科)
- コメディカルのレベルも確認しておいた方が良い (30代男性、整形外科)
- できれば非常勤などで勤務してから、常勤になるか決めたほうが良いと思います (50代女性、一般内科)
情報収集
-
- ネットの情報だけを信じないで、退職者などからの情報を知人を介して調べておくべき (50代女性、美容外科)
- 実際に働いている人や過去に働いたことのある人から現場の意見を聞くこと (40代女性、救命救急)
- 実際に現場を自分の目で確かめて、身近な存在になる立場の人に率直な意見を聞く事。 (40代女性、麻酔科)
PRポイントを持つ、整理する
-
- 自分自身のキャリアをきちんと積むこと。強みを持つ事。 (60代男性、健診・人間ドック)
- 専門以外にプラスアルファがあるといいと思います。 (70歳以上男性、老年内科)
- 履歴書を書いてキャリアの棚卸しをすること (40代男性、麻酔科)
転職全体の心構え
-
- 退職後に自分のやりたい事をきちんと考えて自分の言葉で説明出来るようにすることが大事だと思った。ただつらいだけでは転職理由が弱い (40代男性、消化器外科)
- 譲れることと譲れないことを明確にして、譲れないことは断固として譲らないようにする。業者や病院の方は妥協を求めてくるが、仕方ないと思って譲れないところを譲ると後で転職を後悔する (50代男性、麻酔科)
- 転職中も献血アルバイトなど収入を確保していたほうが安心 (60代男性、泌尿器科)
転職を経験した医師から未経験医師へのアドバイス
最後に、転職したことがある医師から転職未経験の医師に向けて、転職活動に関する全体的なアドバイスを寄せていただきました。
主体的に動く
-
- 自分の意志で動け (50代男性、整形外科)
- しっかり勉強して、しっかり技術をつけて、しっかり自分を持って転職する事をお勧めします (50代女性、一般内科)
- 悔いのない選択を 悩めば進め (40代男性、皮膚科)
早めの動き出し
-
- 早めに活動した方が良い (30代男性、泌尿器科)
- 給与やキャリアアップで悩んだ際は早めに動くべき (30代男性、その他診療科)
- 転職を少しでも考えたら、なるべく早く動くとよい。1~2年かけて探すつもりぐらい余裕が欲しい (60代男性、一般内科)
転職前に希望条件を見直す
-
- 転職先に何を求めるか、事前に検討しておくこと (60代男性、一般内科)
- 転職したいと思った現状の不満点が転職により改善されるかはとことん追求しないといけない (50代男性、健診・人間ドック)
- 失業も含めて怖がらず、自分の大事にしたい条件をブラッシュアップして、転職に臨むのが良いと思います (40代女性、その他診療科)
情報収集する
-
- 下調べは念入りにすべきです。感覚だけで動いたり、衝動的に行動すると失敗します (40代男性、小児科)
- 雇われ院長的なポジションを選んだときは、代わりが居ないので休むと減給にされたり、仕事内容が病院に比べて狭かったりで、事前のイメージ程には良くないと感じた。給与だけに目を奪われないよう、色々と考慮した方が良いと思う (60代男性、麻酔科)
- 紹介会社の情報だけではなく、自分でも知り合いなどを通して情報収集すべき。できれば見学も行ったほうがいい。他のところがどんな雰囲気かを知るだけでも意味はあると思うので (40代女性、救命救急)
我慢しすぎない
-
- 心身の不調となる前に転職活動をしたほうがよい、悪くなってからでは冷静な判断もできないし、そもそも働けなくなってしまう (40代女性、皮膚科)
- 我慢して病むくらいなら、さっさと転職した方がいい。 (40代男性、一般内科)
転職紹介会社を活用する
-
- ブラック職場へは、HPからの直接申し込みでした。後出しジャンケンのようなとんでもない労働条件に苦労しないように、紹介会社を介する転職をおすすめします (50代女性、美容外科)
- 複数の転職サイトに登録する (60代男性、小児科)
- 自分で交渉しにくいこともあるので、仲介業者に入ってもらうことはいいことと考える (50代男性、消化器外科)
その他
-
- 転職することは医局人事を外れること。ある意味自分の性能を試されます。診療能力だけでなく、人当たりというか、社会性も高い方が重宝がられると思います (50代男性、リハビリテーション)
- 色々試してみること。1回の失敗というか面接にすら繋がらなくても気にしないこと (60代女性、一般内科)
医師が「もっと好条件で働きたい」と考えた時、転職は有力な手段の一つです。しかし、希望通りの転職をかなえるには、入念な準備と時間をかけた見極めが必要となります。
多忙な医師が実務と両立するにはかなりの労力を要するため、一人で転職活動をすることは難しい場合も多いと思います。
理想のキャリアを実現するには、情報収集や条件交渉など押さえるべきポイントを把握し、必要に応じて転職経験者や知人、紹介会社などをうまく頼っていくことが大切なのかもしれません。
【参考】回答者の属性
調査概要
年齢
性別
診療科
地域
主たる勤務先
【過去の転職に関する調査】
・【2019年調査】医師の転職の実態とは?医師531名へのアンケート結果
<脚注>
※1 一般職業紹介状況(令和6年7月分)について