大学病院の医師の年収は低い?その他の勤務医と年収を比較した結果

医師の年収は全体で見ると副業・アルバイト込みで1,400万円~1,800万円が最も多くなっていますが、大学病院の勤務医に限定して見た場合にどのように変わってくるのでしょうか?

2019年6月に、大学病院の無給医が少なくとも2,191人(調査対象者の15.8%)いるということが文部科学省の調査により判明しました[1]。これを踏まえると、大学病院で勤務する医師の年収は低いことが予想されます。では実際にどうなっているのか、勤務医1,618名のアンケート結果をもとに紹介します。
 

大学病院の医師の年収は?

 
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回答者の概要

まず、1,618名のアンケート回答者の内訳についてですが、調査対象となる大学病院勤務医が283名、比較対象となる大学病院以外の病院(以下「その他の病院」と表記)の勤務医が1,036名、クリニック勤務医が299名となっています。

さらに年代別・性別の内訳は以下のようになっています。

大学病院勤務医


大学病院勤務医の内訳

その他の病院勤務医


その他の病院勤務医の内訳

クリニック勤務医


クリニック勤務医の内訳

大学病院勤務医の回答者は、それ以外の勤務医に比べて30代の医師の割合が多く、全体的に年齢が若いことが見て取れます。以下ではこの違いを踏まえながら回答結果を見ていきます。

アルバイト・副業込みの大学病院の医師の年収

大学病院の医師のアルバイト・副業込みの年収は下表のようになっています。


大学病院の医師のアルバイト・副業込みの年収

「800万円未満」から「1,400~1,600万円」にかけての年収帯の医師が多いという結果です。年収の中央値は1,300万円[2]となっています。

この年収は他の勤務医と比べるとどれぐらいなのでしょうか?

その他の病院でのアルバイト・副業込みの年収


その他の病院のアルバイト・副業込みの年収

その他の病院の勤務医の年収は上表のようになっており、1,600~1,800万円が14.2%と最も多く、続いて1,400~1,600万円が13.5%と多くなっています。大学病院と比べると全体的に年収は高い傾向にあり、年収の中央値は1,700万円となっています。

クリニック勤務でのアルバイト・副業込みの年収


クリニック勤務のアルバイト・副業込みの年収<

クリニック勤務では上表のように、年収が1,600~1,800万円が最も多くなっており、その他の病院と同じく年収の中央値は1,700万円となっています。ただ、その他の病院の勤務医と比べると、800万円未満が12.4%と多い一方で3,000万円以上も7.1%と多く、クリニック勤務医では年収のバラつきが大きい傾向にあるといえます。

特定の年代・性別に限定した上でのアルバイト・副業込みの年収比較

年収の分布や年収の中央値から大学病院勤務医の(アルバイト・副業込みの)年収が他の勤務医と比べて低い結果が見えてきましたが、大学病院では若手医師が多いため、その影響もあると考えられます。

そこで、「30代男性」、「40代男性」、「30代女性」のそれぞれの場合に大学病院の医師とその他の勤務医で年収がどのように異なるのかを比較しました。結果は下表のようになっています。


性・年齢別でのアルバイト・副業込みの年収

どの年齢・性別で見ても大学病院はその他の病院よりも年収が200万円ほど低い結果となっています。クリニックと比べると、30代女性では大学病院もクリニックも年収の中央値が900万円となっていますが、30代男性では500万円、40代男性では300万円ほど年収に開きがある結果となっています。

年齢や性別を限定して比較しても、大学病院の医師はその他の勤務医と比べて年収が低いということが窺えます。

主たる勤務先のみでの大学病院の医師の年収

勤務先別での医師の年収の違いは、アルバイト・副業を含めずに「主たる勤務先のみ」で比較した方がより適切かもしれません。大学病院勤務医の主たる勤務先のみでの医師の年収は、下表のような結果となっています。


主たる勤務先のみでの大学病院の医師の年収

年収800万円未満が64.3%を占めるという結果となっています。アルバイト・副業込みの年収の中央値は1,300万円ですから、大学病院の医師にとって、アルバイトや副業がいかに重要な収入源となっているかが窺えます。

それでは、大学病院以外の勤務医では主たる勤務先の年収はどのようになっているのでしょうか?

その他の病院での主たる勤務先のみの年収


主たる勤務先のみでのその他の病院の医師の年収

その他の病院での主たる勤務先のみの年収は上表のようになっており、1,400~1,600万円が17.1%と最も多く、1,600~1,800万円が次いで14.4%と多くなっています。年収の中央値は1,500万円となっており、大学病院の医師と比べると少なくとも倍以上の年収[3]になっていると考えられます。

クリニック勤務での主たる勤務先のみの年収


主たる勤務先のみでのクリニック勤務の医師の年収

クリニック勤務医の主たる勤務先のみでの年収は上表のようになっています。年収800万円未満が24.4%と最も多くなっており、年収の中央値は1,300万円となっています。

年収の中央値で比較すると大学病院よりも高くその他の病院の勤務医より低い結果ですが、年収2,000万円以上の医師の割合が20.5%と最も高くなっており(大学病院勤務医では2.5%、その他の病院勤務医では16.1%)、医師によって年収のバラつきがやはり大きい傾向にあることが窺えます。

特定の年代・性別に限定した上での主たる勤務先のみの年収比較

上記のように主たる勤務先のみで比較すると大学病院の医師の年収は他の勤務医に比べて明らかに低いといえますが、念のため年代・性別を限定して比較すると、下表のような結果となりました。


性・年齢別での主たる勤務先のみでの医師の年収

30代男性、40代男性、30代女性のいずれで見ても大学病院の勤務医の年収が最も低い結果となっています。30代女性では大学病院勤務医とクリニック勤務医がいずれも中央値が「800万円未満」ですが、大学病院では88.9%が「800万円未満」に該当するのに対してクリニックでは56.1%となっており、やはり大学病院での年収が最も低いといえます。

これまでの結果を踏まえると、大学病院では無給医といった一部の医師の年収が低いというわけではなく、全体として大学病院の医師の年収は低い状況にあるといえます。

大学病院の医師は現在の年収をどう思っているのか?

こうした状況の中、大学病院に勤務する医師は現在の年収についてどのように思っているのでしょうか?業務量や責任に対し自身の年収が見合っているかアンケートを取ったところ、下図のような結果となりました。


大学病院の医師の年収は業務量や責任に対して見合っているか?

「見合っていない」が最も多く39%、「あまり見合っていない」が36%と次いで多くなっています。「見合っている」「どちらかと言えば見合っている」を合わせて現在の年収が見合っていると考えている医師は25%のみという結果となりました。

これは他の勤務医と比べてどれぐらい違うのでしょうか?

その他の病院に勤務する医師の回答


その他の病院の医師の年収は業務量や責任に対して見合っているか?

上図のように、その他の病院の勤務医では「見合っている」「どちらかと言えば見合っている」を合わせて65%の医師が現在の年収は見合っていると回答しています。

年収額だけでなく、年収に対する満足度も大学病院とその他の病院では大きく異なっているようです。

クリニックに勤務する医師の回答


クリニックの医師の年収は業務量や責任に対して見合っているか?

クリニック勤務医の場合は上図のようになっており、「見合っている」「どちらかと言えば見合っている」を合わせて81%の医師が現在の年収は見合っていると回答しています。

大学病院はもちろん、その他の病院の勤務医に比べても「見合っている」割合は高く、年収の満足度はクリニック勤務医で特に高い傾向にあるといえます。

まとめ

これまで見てきたことをまとめると、以下のようになります。

    • 主たる勤務先での大学病院勤務医の年収はその他の病院勤務医の半分に満たず、クリニック勤務医に比べても低い。
    • 大学病院に勤務する医師の多くはアルバイトや副業を通じて収入を補填しているが、アルバイト・副業を含めた年収額でもその他の勤務医に比べて低い。
    • 業務量や責任に対して年収が見合っていると考えている大学病院の勤務医は25%のみであり、その他の病院勤務医(65%)、クリニック勤務医(81%)に比べて顕著に低い。

大学病院で勤務することは専門医研修や学位取得、人脈形成などの面でメリットを感じる医師もいるものの[4]、収入面でこれだけの違いがあると、長い間勤務することにデメリットや将来への不安を感じる医師も多くなると考えられます。

先日、臨床研修のマッチング結果[5]が発表され、研修先として大学病院が選ばれる割合が初めて4割を割り込む結果となりましたが、大学病院での給与面の低さもこうしたことに影響しているのかもしれません。今後こうした傾向を変えていくとすれば、大学病院に勤務する医師の待遇の改善が必要となってくるといえます。

ただ、そうした改善のハードルは高く、実現されるかどうか、また実現されるとしてもどのぐらい時間がかかるのかなどと考えていくと、あまり大きな改善は期待しづらい状況と考えられます。

現在大学病院で働いていて待遇面で不安や不満がある医師にとっては、当面はやはり転職やアルバイト・副業など、自身で行動して大学病院以外で収入を確保していくことが現実的な解決策だといえるでしょう。

 
<注>
[1]「大学病院で診療に従事する教員等以外の医師・歯科医師に対する処遇に関する調査結果」の公表について」文部科学省、2019年6月28日。
[2] 各年収帯の階級を選択式で調査しているため、中央値は年収の階級値(1,400~1,600万円の場合は1,500万円)を使用している。以下同様。
[3] 大学病院の主たる勤務先の年収の中央値が該当するのは「800万円未満」の階級であり、単純な階級値としては400万円となる。これに対して、「最低限の年収以下にはならない」と仮定して下限を例えば400万円だと設定した場合、中央値は600万円となる(それでもその他の病院勤務医とは2倍以上の開きとなる)。さらに、大学病院勤務で年収の具体的な金額を記載した医師の中には400万円未満の医師も見られたため、実際の中央値が600万円より高くなることはないと考えられる。
[4] 右記の過去記事参照:「医局に所属するメリット・デメリットとは?」。
[5]令和元年度 研修医マッチングの結果」医師臨床研修マッチング協議会、2019年10月17日。