医師の転職理由とその背景とは?

他の医師はどんな理由で転職しているのか?

医師転職ドットコムを運営するメディウェルでは、年間3,000名以上の医師から転職の相談をいただいています。相談いただく医師の中には、「転職することや時期は既に決まっていて転職先を早く探したい」という人もいれば、「転職すべきかどうか悩んでいる」という人もいます。

転職したら現状を改善できるのだろうか?
転職は自分の将来のキャリアにどう影響するのだろうか?
今は本当に転職すべき状況なのだろうか?

転職は医師の人生を変える一大事であり、特に初めての場合、どうすべきか悩むのは当然といえます。そのような時、やはり役に立つのは他の人の事例です。以下ではメディウェルで実施した調査をもとに「他の医師はどんな理由で転職しているのか?」について検証していきます。

医師の転職理由で最も多いのは「家庭・生活事情」

医師の転職理由について、医師転職ドットコム利用者へ2016年に実施したアンケートを集計した結果が下表になります。


医師の転職理由アンケート結果

医師の転職理由で最も多いのは「家庭・生活事情」となっており、次いで「大学病院・医局を辞める・離れる」、「勤務負荷」、「職場環境・人間関係」、「給与・待遇」の順に多い結果となっています。また、多いとはいえないものの、転科・定年・閉院・帰国を理由として転職を希望する医師も一定数いることがわかります。

医師の転職理由の具体的な回答例

上述の転職理由について、具体的な回答の一部を下記に例示します(匿名性担保のため、一部文言を変更しています)。

  • 1.家庭・生活事情

    • 子どもが産まれ現在育休中だが、現在の職場は復帰しても子育てに理解のある職場といえないため。
    • 子どもの教育環境を考えて転居を予定しており、転居先から通勤圏内の職場を探すため。
    • 今の勤務が過酷で拘束時間も長く、家族との時間をほとんど取れていないため
  • 2.大学病院・医局を辞める・離れる

    • 所属する大学医局の教授が退任する予定のため。
    • 医局人事により数年単位で突然の異動が繰り返されることに疲弊したため。
    • 大学病院での人間関係のしがらみが合わず、専門医・学位は取得済みで医局に残るメリットが少ないと考えたため。
  • 3.勤務負荷

    • 緊急手術、オンコールの連続で体力的に負担が大きく、年齢的にも今後のキャリアを考え直したいため。
    • 病院で医師の退職があり、その後は自分に勤務負担が集中し休みもほとんど取れない状況が続いているため。
    • 当直で専門外の患者も対応が必要で、当直明けも続けて外来やオペをすることが常態化しており、体力的に辛くなってきたため。
  • 4.職場環境・人間関係

    • 上司との仲が悪く、他医師との仕事分担が不公平の状態が続き、病院の診療水準も低いため。
    • 院内の設備が古く清潔感がない。また、生活保護の患者層が多く、トラブルもしばしば発生しているため。
    • 理事長がワンマン経営で常勤医が次々と辞めていく。有給休暇も取得しづらい環境で、学会参加も自由にできないため。
  • 5.給与・待遇

    • 激務でありながら年収が低く、今のペースで働き続けるのが割に合わないと感じたため。
    • これから子どもの養育費が増え親の介護もあり、今の病院の給与では生活が厳しくなることが予想されるため。
    • 今年転職したばかりだが、最初に提示された条件と内容が変わってきてしまっているため。
  • 6.スキルアップ・専門性

    • 現在の病院で手術件数の減少が見込まれ、麻酔科専門医の維持が難しくなることが予想されるため。
    • リハビリテーション科専門医取得のため。
    • 将来的には開業を検討しており、開業前に雇われ院長として勤務し経営面のスキルを身につけたいため。
  • 7.勤務内容・やりがい

    • 精神科のスキルを活かしたいが、現在は診療ではなく管理業務に追われてしまっているため。
    • 院内の常勤医が増えたため仕事内容に余裕ができた。医師の不足している地域で、地域医療に貢献したいと考えたため。
    • 現在の勤務先では専門特化しているが、もっと幅広く内科領域の診療をしたいと考えるようになったため。
  • 8.拘束時間・通勤時間

    • 通勤時間が長く疲労が蓄積されるため。
    • 当直が多い上に常にオンコール対応であり、休日も毎日呼び出しがあり、外出もままならない状況のため。
    • 副業と両立して勤務していきたいため。
  • 9.転居

    • 地元の地域に戻って働きたいため。
    • 地方から都心への転居を考えており、患者層が地方と都心でどう違うか経験したいため。
    • 都心から北陸地方への転居を予定しており、転居先での職場を探すため。
  • 10.転科

    • 外科系の専門科で後期研修中だが、救命科に転科しようと考えているため。
    • 形成外科から皮膚科への転科を希望。外科だけでなく内科的対応もできることに魅力を感じたため。
    • 保険の査定医や産業医など、臨床医以外の働き方を探したいため。
  • 11.定年

    • 定年後の再就職への準備のため。
    • 現在の職場の定年が60歳で迫ってきており、定年後の職場を探すため。
    • 定年後現在のクリニックの管理者となったが、自分より若い後任医師が決まり、転職しなければならなくなったため。
  • 12.帰国

    • 米国留学中で日本への帰国を予定。以前の病院への再就職も候補ではあるものの他の病院での勤務にも興味があるため。
    • 夫の都合で在米中であり来年帰国を予定。帰国後の働き方を相談したいため。
    • 現在、アメリカ在住で、日本に帰国を予定しているため。
  • 13.閉院

    • 現在開業している地域で過疎化が進んでおり、また自分自身の年齢を考え、閉院を検討しているため。
    • 開業医だったが、健康面の事情により閉院。現在は体調が回復しており、勤務医としてまた医療に貢献したいと考えたため。
    • 開業したが、1人で全てをこなさなければならない多忙さが合わず、閉院を決めたため。
  • 14.その他

    • 現在の勤務先で雇用契約期間が切れるため。
    • 体調を崩し以前の勤務先を退職していた。体調が回復してきたことに伴い、復帰を考えているため。
    • 現在の病院が赤字で、大幅な減収もしくは解雇される見込みのため。

2016年の医師転職ドットコム利用者へのアンケートより。
匿名性担保のため、文言を一部変更している。

医師の転職理由の多くに共通している背景は「現状の勤務負担の大きさ」

これらの転職理由の具体例を見てみると、多くの場合に共通している背景があります。それは現状の勤務負担の大きさです。

「勤務負荷」自体は転職理由として3番目の多さではあるものの、1番多い「家庭・生活事情」の具体例を参照すると、「勤務における時間的・体力的負担が家庭や生活に与える影響を抑えたい」ということが背景にあると考えられます。これは「大学病院・医局を辞める・離れる」「拘束時間・通勤時間」などの理由でも同様のことが言えます。

また、「その他」で見られる「体調を崩した」という理由は、過度な勤務負担によって健康を損ねたといえます。メディウェルでは過去にも、以前の勤務先で体調を崩してしまった医師や、うつ病など精神疾患を発症して休職していた医師からご相談をいただいたことがあります。

医師の勤務負担が大きくなっている要因とは?

医師の過剰な勤務負担は日本医師会でも厚生労働省でも問題視されていますが、この勤務負担が大きくなっている要因には何があるでしょうか?転職理由の具体例に見られるものを参考に下記にまとめてみました。

  • ①拘束時間の長さ

    土日祝もあまり休めず、勤務における拘束時間が単純に長く、家庭やプライベートの時間を十分に確保できないことが負担になっていることが挙げられます。日本医師会の調査でも、休日が月4日以下の勤務医が、
    未だに勤務医全体の約4割を占めているという結果が出ています(「勤務医の健康の現状と支援のあり方に関するアンケート調査報告書」2016年6月、日本医師会)。

  • ②数年単位での勤務先の異動(特に大学医局に所属している場合)

    特に大学医局に所属している場合、数年単位で異動を命じられる勤務医も多く、それが負担となって家庭環境にも悪影響が生じるケースが多くなっています。実際に、既出の調査で転職理由が「大学病院・医局を辞める・離れる」であった95名の医師のうち、20名は特に「医局人事から離れたい」という理由を挙げています。

  • ③当直および当直明けの連続勤務

    当直勤務および当直明け後の連続勤務が体力的・精神的に負担となっている医師は多いです。特に当直前後が通常勤務の場合、32時間以上の連続勤務となり判断力の低下による診療ミスなどのリスクも高まるため、精神的な負担にもなります。

  • ④専門外の診療

    救急医や総合診療医などを除き、医師の多くは専門外の診療に対して負担に感じています。特に、すぐに相談できない状況で多くの専門外の患者を対応しなければならないような体制の場合、医師の精神的な負担は大きくなります。

  • ⑤患者とのトラブル対応

    「モンスターペイシェント」という呼称もあるように、患者とのトラブル対応が医師の負担になっているケースもあります。また、産婦人科医が逮捕された大野病院事件のように、民事裁判・刑事裁判のリスクを常に意識しなければならないことも負担になっていると言えます。

  • ⑥オンコール対応

    特に主治医制の場合、医師は24時間365日PHSを離さずにもっていて、担当患者に何かあれば即座に対応する体制にしている病院も多いです。この場合、医師は常に気を張っていなければならず、負担として感じることも多いです。

  • ⑦診療以外の管理業務および事務作業

    各種委員会の実施や、インフォームドコンセントなどの同意書、診療情報の電子化などにより、医師の診療以外の管理業務や入力業務なども近年になって増えてきています。これらの診療以外の業務には、医師にとっては雑務といえるようなものもあり、多忙な医師にとって負担の一つとなっています。

上記のような勤務負担を背景に、医師が現状を打開する手段の一つとして転職という選択肢が出てくると考えられます。

現状で転職するべきかどうか悩んでいる医師の方へ

医師の勤務負担は客観的に見れば深刻であり、体調不良やうつ病になるリスクがあるほか、最悪の場合自殺や過労死に繋がる場合もあります。一方で「後ろ向きの理由での転職は逃げ」というイメージもあってか、なかなか転職に踏み出せないという医師も多くいると思います。

今の勤務先を変えるべきか否か、その判断基準としては何があるでしょうか?一つ方法として考えられるのは、現在の職場を一度客観的に評価してみる、という手法です。

例えば、「医療従事者の健康支援のための職場改善チェックリスト(2010版)」(監修:財団法人労働科学研究所副所長 吉川徹)などのチェックリストを用いて医療機関の勤務環境改善への取り組み状況を評価し参考とする方法が考えられます。

また、実際に転職するか否かを別にして、転職した場合にどれぐらいの条件・待遇が実現できるのかを知っておくというのも、現在の職場との比較として有効です。実際にメディウェルには「良い求人があれば転職したい」という希望の医師の方からも多くの相談をいただいています。

現在、転職するかどうか少しでもお悩みでしたら、メディウェルのコンサルタントまでお気軽にご相談ください。