2020年12月に実施した医師1,869名の年収に関するアンケートでは、「収入が減った」という回答が「収入が増えた」を上回るなど、コロナ禍で医師の収入にも影響が出ている状況が見えてきました。
今回はさらに医師の専門領域によって収入への影響がどのように出ているのか、診療科別での検証を行いました。

目次
診療科別での医師の平均的な年収(アルバイト・副業込み)
医師の診療科別での年収(アルバイト・副業込みの収入)は下表のようになっています。年齢・性別の内訳でそれぞれバラつきがあるため、年代・女性割合も右側に付記しています。
脳神経外科・整形外科・麻酔科の年収の中央値が1,900万円と高くなっています。一方で皮膚科は1,100万円と最も低く、次いで形成外科・小児科・健診・人間ドックで1,300万円と低くなっています。
麻酔科など一部の診療科を除くと、診療科で女性割合の高い場合に年収の中央値が低くなる傾向となっています。女性医師では出産や育児などの家庭事情に伴って、当直なしや勤務時間・日数の短縮など制限のある勤務形態になっていることも多く、その反面収入はフルタイムの男性医師に比べてやや下がることが多くなっています。
参考:医師の仕事と家庭の両立に関する医師1,988名のアンケート結果
2019年→2020年での医師の収入の変化(主たる勤務先)
主たる勤務先からの医師の収入の2019年→2020年での変化は診療科別で下表のようになっています。
収入が「減った」という回答が最も多かったのは小児科(51%)で、次いで耳鼻咽喉科(50%)、健診・人間ドック(48%)、心臓血管外科(45%)、産科(44%)が多くなっています。
主たる勤務先の収入への新型コロナの影響
主たる勤務先での収入について、新型コロナによる影響があったかどうかを調査したところ、診療科別での回答は下表のようになりました。
新型コロナの収入への影響が「あったと思う」という回答が最も多かったのは健診・人間ドックで75%、次いで腎臓内科(74%)、小児科(72%)、眼科(71%)、消化器内科(70%)が多くなっています。
先ほどの収入の変化の状況と合わせると、小児科や健診・人間ドックでは、主たる勤務先での収入減に対してコロナ禍が与える影響が他科に比べて大きい状況となっているといえます。
小児科では、日本医師会での診療所調査でもコロナ禍での受診控えによる患者減が大きい診療科となっており、その影響が医師の収入にも響いていると考えられます。
また健診・人間ドックでは、緊急事態宣言や自粛に伴い健康診断の延期が広がったことで、健診業務および収入の減少に繋がったと思われます。
2019年→2020年での医師の収入の変化(副業・アルバイト勤務)
副業・アルバイトでの医師の収入の変化については下表のようになっています。
副業・アルバイト勤務の収入が「減った」という回答が最も多かったのは眼科で53%、続いて形成外科(48%)・消化器外科(48%)・小児科(47%)・耳鼻咽喉科(47%)が多くなっています。
副業・アルバイト勤務の収入への新型コロナの影響
医師の副業・アルバイト勤務の収入において新型コロナの影響があったかどうか調査したところ、診療科別での回答は以下のようになりました。
新型コロナによる収入への影響が「あったと思う」と回答した割合が最も多かったのは健診・人間ドックで81%となっています。次いで小児科(79%)、耳鼻咽喉科(76%)、眼科(75%)、老人内科(73%)も多い状況でした。
主たる勤務先であげた小児科や健診・人間ドックに加え、眼科や耳鼻咽喉科も受診控えによる患者減の影響が大きかった診療科で(中医協,2020年8月19日資料)、それが副業・アルバイトでの収入減にも繋がったと考えられます。
長引く新型コロナウイルスの感染の拡がりは、コロナ診療に従事する医師に限らず、多くの医師の業務や収入面にも影響を及ぼしています。
刻一刻と状況が変わりつつある中でも、医師が納得のいくキャリアの実現できるように、医師転職研究所では今後も調査に基づく信頼性の高い情報を提供していきます。