医師にとって「一人前」とは?医師1,740名へのアンケート結果より

医師は医師免許取得後も知識や技能の習得など長期にわたる修練が求められます。それでは、医師が「一人前」として自他ともに認められるようになるためには、何が必要なのでしょうか?1,740名の医師へのアンケート調査をもとに見ていきます。

 

医師にとって「一人前」とは?医師1,740名へのアンケート結果より

 
<関連記事>
医師がキャリアの中で大切にしていることとは?医師1,740名へのアンケート結果

医師はいつ「一人前になった」と感じるのか?

医師に一人前になったと感じた時期について質問したところ、下表のような結果になりました(医師になってからの年数で回答)。


医師が一人前になったと感じた時期

若い医師も含めて回答しているため「まだ「一人前」になったと感じていない」という回答が最も多くなっています。それ以外では、「10年目以上15年目未満」が26.1%と最も多く、次いで「5年目以上10年目未満」が18.6%と多くなっています。

医師を募集している医療機関では、即戦力として10年目以降の医師を念頭に置いている場合や、求人上の表示額を10年目基準で表示している場合も多いため、アンケート結果も踏まえると「10年目」は一人前の目安の一つと言えるかもしれません。

回答した医師の年代別での回答は以下のようになっています。

20代


【20代】医師が一人前になったと感じた時期

30代


【30代】医師が一人前になったと感じた時期

40代


【40代】医師が一人前になったと感じた時期

50代


【50代】医師が一人前になったと感じた時期

60代


【60代】医師が一人前になったと感じた時期

70代以上


【70代】医師が一人前になったと感じた時期

20代・30代の医師では「まだ「一人前」になったと感じていない」という回答が大半を占めていますが、40代以上ではどの年代でも「10年目以上15年目未満」が最も多く、次いで「5年目以上10年目未満」が一人前になったと感じた時期として多くなっています。

診療科別で医師が「一人前」と感じる時期の違い

内科や外科、精神科など、医師は診療科によって求められる知識や能力も変わると考えられます。そこで、「一人前」と感じる時期に診療科による違いがあるのか調べたところ、下表のようになりました[1]


診療科による一人前と感じる時期の違い

多くの診療科で「10年目以上15年目未満」で一人前になったと感じた医師が最も多く、次いで「5年目以上10年目未満」が多いという結果となっています。

ただ、消化器外科や整形外科などの外科系診療科では「15年目以上20年目未満」という回答が2番目に多くなっており、「一人前」と感じるまでの期間が比較的長くなりやすいことが窺えます。

医師が「一人前」になる上で重要なこととは?

これまで医師になってからの年数を目安として「一人前」になるまでの期間を見てきましたが、実際には若くして「一人前」として認められている医師や、逆に年数を重ねてもなかなか「一人前」としての仕事を任せられていない医師もいます。

それでは、医師が「一人前」になる上では何が重要なのでしょうか?そこで、候補として8つの項目について、1(重要でない)~5(重要)の5段階で医師に質問しました。結果は下表のようになっています。


医師が一人前になる上で重要なこと

最も重要度が高かったのは「知識・臨床スキルの習得」(平均4.2)で、次いで「症例数」(平均4.1)、「患者とのコミュニケーション能力」(平均4.0)、「他の医師や医療従事者とのコミュニケーション能力」(平均4.0)が高い結果となっていました。

一方「専門医資格」「専門医以外の資格」「論文執筆や学会発表などの経験」は比較的重要度が低い結果です。

さらに診療科別に見ると、下表のようになりました。


【診療科別】医師が一人前になる上で重要なこと

全体で見た場合と同様に、多くの診療科で症例数や知識・臨床スキル、コミュニケーションが重視されており、資格や論文・学会発表などの重要度は比較的低い結果となっています。

「患者とのコミュニケーション能力」で婦人科や呼吸器内科、小児科などでの重要度が高い一方で放射線科で重要度が比較的低いなど、多少の違いはありますが、大まかな傾向はほとんどの診療科で共通しているといえます。

【自由回答】その他、医師が「一人前」になる上で重要だと思うこと

上記の8項目以外に医師が「一人前」になる上で重要だと思うのはどのようなことなのでしょうか?自由回答で医師から募ったところ、様々な回答が寄せられました。以下にその一部を紹介します。

    • 謙虚な姿勢

    • 謙虚さ,コメディカルと上手に付き合えるか,バイト先から指名で仕事がくること (40代女性、神経内科)
    • 他人に頭を下げる事を厭わない (50代男性、一般内科)
    • 自己反省と奢らないこと (50代男性、整形外科)
    • 誠実さ。謙虚さ。内省。 (50代男性、放射線科)
    • 常に周囲の人の話に耳を傾け、たとえ後輩であっても意見は拝聴すること。 (40代女性、形成外科)
    • 人生経験・教養

    • 一般教養、理系のみならず文系能力 (50代男性、一般内科)
    • 医療以外の知識、一般常識 (40代男性、消化器内科)
    • 医学以外に関する知的好奇心、教養 (40代男性、精神科)
    • 人並みの「人生経験」、それ以上の「人生経験の克服」 (60代男性、精神科)
    • 法律・省令、診療報酬の理解。政治、経済への関心・理解。 (50代男性、一般内科)
    • トラブル対応

    • トラブルシューティング (50代男性、泌尿器科)
    • 問題が起きた時の解決能力 (30代男性、呼吸器内科)
    • 自分の判断で医療行為によるトラブルに対応できる。 (40代男性、麻酔科)
    • 予期せぬ出来事や症例に対応できる、対応力 (30代男性、皮膚科)
    • 患者やその家族とのトラブルに対応できること  (50代女性、消化器内科)
    • 自分一人で適切に対応できること

    • 自分一人で適切にで判断や対応できること (30代女性、血液内科)
    • ひととおりをひとりで完結できること 他病院の医師からみても真っ当と思われる診療ができること 10年目を超えた方が良いと思うが、自分は医局人事で早い段階で人の少ない病院に派遣されたため10年目以前に一人前的な仕事とならざるを得なかった (40代女性、麻酔科)
    • 外科医であれば、一人である程度の手術ができること (40代男性、その他診療科)
    • 一人で治療計画が立てられること (60代男性、一般外科)
    • オンコール対応や緊急症例が一人できるようになること (20代男性、麻酔科)
    • 自分の能力や知識の限界を認められること

    • わからないことをわからないと言える (50代男性、一般内科)
    • 科学的思考力、常に新しい知見を取り入れる姿勢、自身の限界を認識する能力 (40代男性、神経内科)
    • 己の限界を自覚し、自分に出来ないこと、苦手なことは素直に他人に頼ることが出来ること。そのために日頃からコワーカーと良好な人間関係を構築すること。 (50代男性、循環器内科)
    • その時の自分に出来ることと出来ないことを理解し、周りの人と協力して、患者さんの社会での自立について考えて行けること。 (60代男性、救命救急)
    • 知らないことは知らないと自覚して学ぶ姿勢 (50代女性、一般内科)
    • 臨床における経験

    • 常に一人だけで、誰にも助けを求められない、頼れない状況で、多数の経験を最低10年以上積むこと。 (50代男性、麻酔科)
    • 修羅場(本人だけでなく周囲を巻き込んでいて難しい例)の数 (60代男性、精神科)
    • 同じ病院にずっといるよりもいくつかの病院での経験が必要と考えます。 (30代男性、呼吸器内科)
    • 一人体制(チームではなく、最終的に自分で決めて責任も自分が取る覚悟での診療)を半年以上経験すること (60代男性、循環器内科)
    • その領域内を偏らず全般に経験すること (40代男性、心臓血管外科)
    • その他

    • 自己管理能力(規則正しくなくてもいいので毎日診療できる体を保つこと) (50代女性、婦人科)
    • 患者さんとのコミュニケーションをしっかりとれる事、相手のニーズを読み取る事は臨床の知識と同様に大切だと思います。 (40代女性、眼科)
    • 治療の結果、患者に起こった結果まできちんと責任を持てる医師になること。 (40代男性、皮膚科)
    • 思いやり、怒りを抑えられること (50代男性、産科)
    • 一人前という概念はそぐわない。いつも医学医療の実践に支えられながらやるだけ。 (50代男性、一般内科)

【自由回答】医師のキャリアにおける今後の目標

さらに、医師のキャリアにおいて現在目標として取り組んでいること、もしくは今後取り組もうとしていることについて医師に質問したところ、以下のような自由回答が寄せられました(一部紹介)。

    • 臨床に関する知識・技術の習得

    • 医学の進歩に大きく遅れないために毎日少しでも勉強すること (50代女性、眼科)
    • 一通りの局所麻酔手術をできるように (20代女性、形成外科)
    • 全ての診療能力を更に高めることを継続する (60代男性、小児科)
    • 最新の技術や知識の習得です。 (40代男性、消化器外科)
    • IVRの知識・経験症例を増やす (30代男性、放射線科)
    • 専門医資格の取得

    • 専門医試験へ合格する事 (30代女性、耳鼻咽喉科)
    • 新たな技術と専門医の取得 (40代男性、婦人科)
    • 消化器分野での専門医資格の取得、予防医学の知識の習得 (30代女性、消化器内科)
    • 漢方専門医を取るために 大学病院の専攻医で学ばせていただいている。 (50代女性、健診・人間ドック)
    • 専門医の取得、その後の開業に向けた人脈作り (30代男性、一般内科)
    • 研究・論文執筆

    • 研究につながる論文収集 (50代男性、在宅診療)
    • ガイドラインを変更するくらいの論文を書くこと (40代男性、循環器内科)
    • 現代の遺伝学を活かした創薬研究を進めたいと思っています。 (40代男性、神経内科)
    • 臨床に加えて研究を行いより広く社会貢献すること (60代男性、血液内科)
    • 海外でも通用する資格、論文、発表など (40代男性、麻酔科)
    • 経営への貢献・マネジメント

    • 病院の経営を黒字化すること (40代男性、消化器内科)
    • 病院の経営に貢献することによって自分の安定した雇用につなげる。 (50代男性、一般内科)
    • 安全管理など病院マネジメント業務 (40代女性、救命救急)
    • コロナでの小児科クリニックのダメージを立て直す (60代男性、小児科)
    • 手術を継続して行うことができる環境の整備です (40代男性、形成外科)
    • 他科・他職種との連携

    • 多くの職種の方とのふれあいで自身にない常識を身に着ける (50代男性、一般内科)
    • 患者さん本人、家族、そして他職種とよい関係を築くことをより心がけたいと思っています。 (40代女性、精神科)
    • がん患者を取り巻く幅広い職種から成るチームを作ること (30代女性、その他診療科)
    • 他の科のことも理解する (40代女性、麻酔科)
    • 他科の医師との連携を深める (30代男性、眼科)
    • 診療における取り組み方

    • 目の前の患者の治療に専念すること (50代男性、精神科)
    • 患者さんの話を親身になって聴ける医師 (60代男性、泌尿器科)
    • 患者の訴えに真摯に耳を傾けること (50代男性、整形外科)
    • どのような症例に対しても、誠実に、謙虚に対応していく。 (50代男性、放射線科)
    • 患者さんに満足していただける診療 (50代男性、眼科)
    • その他

    • 単に医療を提供するだけではなく、困ったらあの先生に相談すればそれなりの答えが返ってきて解決した、と思ってもらえるような医師、そして場所を提供できる様になりたい。 (40代女性、形成外科)
    • 妊娠出産を早期に済ませてから仕事に専念したい (30代女性、精神科)
    • リハビリテーション科新規立ち上げ (40代男性、リハビリテーション)
    • 医療以外での安定した収入の確保 (40代男性、呼吸器内科)
    • 専門書を熟読しそれを会得することで研修医や後輩に教育できるようになる (20代男性、麻酔科)

 

【参考】回答者の属性

調査概要

調査内容 医師のキャリア観に関するアンケート調査
調査対象者 株式会社メディウェルに登録している医師会員
調査時期 2021年2月15日~2021年3月12日
有効回答数 1,740件
調査公開日 2021年5月24日

 

年齢


回答者の年齢

 

性別


回答者の性別

 

診療科


回答者の診療科

 

地域


回答者の地域

 

主たる勤務先


回答者の主たる勤務先

 

 
<注>

  • [1] 20件以上アンケートに回答した診療科で比較。「まだ「一人前」になったと感じていない」という回答は除外している。