医師の仕事は新技術の活用でどのように変わるのか?-医師1,578人のアンケート結果

医療の技術は日々進歩しており、医師は常に新しい知識や技術を学ぶことが求められます。
「ダヴィンチ」に代表される手術支援ロボットや、コロナ禍で導入が進んだオンライン診療、2022年にOpenAI社が発表したChatGPTのような生成AIなどの新技術によって、医療現場でも診療の質向上と業務の効率化がはかられています。

実際の医療現場ではどんな技術がどのくらい導入されているのでしょうか?また、医師は新技術にどの程度期待を寄せているのでしょうか?

株式会社メディウェルが会員医師1,578人にアンケート調査した結果から、新技術の利用傾向と医師の新技術に対する考え方をご紹介します(回答者の属性)。

 

「勤務先への満足度」、大学病院の勤務医が最も低い?-医師1,060人のアンケート結果

医療現場で新技術はどのくらい取り入れられているか

まず、現在の勤務先で新技術を活用しているかどうか、「AI(人工知能)」「ロボット手術」「VR(仮想現実)・AR(拡張現実)技術」「ビッグデータ活用」「遠隔医療(オンライン診療含む)」「再生医療」を対象に聞きました。結果は次の通りです。


新技術を活用しているかどうか

全体的に「活用していない」回答が圧倒的に多く、新技術を実用的に導入している医療機関はかなり少ないことがわかります。
「活用している」回答が最も多いのは「遠隔医療(オンライン診療含む)」です。コロナ禍で対面診療を控え、オンライン診療を推進するため、診療報酬改定によってオンライン診療の初診が加算されるようになったことも影響しているとみられます。

各新技術の活用傾向について医師の勤務先別にみてみると、「遠隔治療(オンライン診療を含む)」以外の5種すべてにおいて、「活用している」と回答した割合が最も多かったのは大学病院の勤務医でした(下グラフ)。


勤務先別:AIを活用しているかどうか


勤務先別:ロボット手術を活用しているかどうか


勤務先別:VR(仮想現実)・AR(拡張現実)を活用しているかどうか


勤務先別:ビッグデータを活用しているかどうか


勤務先別:遠隔医療(オンライン診療含む)を活用しているかどうか


勤務先別:再生医療を活用しているかどうか

研究機関を備える大学病院は、「特殊な症例を扱うケースが多い」「患者数が多いことからデータが集まりやすい」など、他の医療機関よりも新技術を活用する環境が整っているといえます。
大学病院を除いて比較してみると、基本的には病院のほうがクリニックよりも活用割合が高い傾向にありますが、オンライン診療と再生医療では逆転し、クリニックのほうが活用割合が高くなっています。

また、アンケートで取り上げた6種以外の新技術で現在活用しているものはあるか聞いたところ、手術技法やスマートデバイスの活用といった回答がありました。自由回答をいくつか紹介します。

    • iPhoneによるカルテ閲覧 (40代男性、脳神経外科)
    • ナビゲーション手術 (60代男性、整形外科)
    • PRP療法 (20代女性、皮膚科)
    • MIST (50代男性、泌尿器科)
    • NGS(Next Generation Sequencing) (60代男性、リウマチ科)
    • 患者適合型3Dテンプレートドリルガイド (40代男性、整形外科)
    • 3D CT (50代男性、整形外科)
    • アプリ診療 (30代男性、循環器内科)
    • アプリ処方 (40代男性、リウマチ科)
    • zoom、teamsで産業医面談をすることがある (40代女性、眼科)

診療科ごとの活用状況

診療科によって、新技術をどのくらい活用しているかに違いはあるのでしょうか。
回答数が15件以上だった28診療科に限定し、6種の新技術の活用状況を集計しました。

AI(人工知能)


診療科別:AI(人工知能)を活用している割合

回答の割合が高い順に、救命救急、循環器内科、放射線科となっています。
7つの診療科で「活用している」割合が2割を超えているほか、他のほとんどの診療科でも割合は低いものの活用されている結果となっています。

幅広い診療科で活用の取り組みがある背景には、AI(人工知能)がどの科でも必要な診断業務で役立つ点も関係しているとみられます。
AI「Watson」についての取材記事「医師は人工知能と 明日を夢見ることができるのか〜IBM「Watson」が拓く医療の未来〜」では、がん患者の治療において、医学論文などのデータをもとに医師の診断を支援するシステムを紹介しています。

ロボット手術


診療科別:ロボット手術を活用している割合

活用している医師の割合は泌尿器科、消化器外科、麻酔科の順で多くなっています。
泌尿器科と消化器外科、さらに4番目に割合が多かった産婦人科(婦人科領域)では、ロボット手術において指導医レベルの技術や知識を持つ「ロボット支援手術プロクター」を認定する制度があり、ロボット手術の普及につながっているとみられます。この資格は過去に実施した「キャリアで重視する資格」についてのアンケートでも名前が挙がっていました。

また、3番目に活用している回答の割合が高かった麻酔科は、外科系の診療科との連携が多い科です。他科でロボット手術が取り入れられるようになればなるほど、それに応じた特殊な対応を求められることになり、回答割合が高くなったと推察できます。

VR(仮想現実)・AR(拡張現実)技術


診療科別:VR(仮想現実)・AR(拡張現実)を活用している割合

リハビリテーション、泌尿器科、消化器外科で活用度合いが高めという結果です。

「VR(バーチャルリアリティ)が広げる医療の可能性~外科医にして医療VRソフト開発者、杉本真樹氏が目指す未来~」によると、VR・AR技術は補装具の作成や手術のナビゲーションと研修などの活用事例があります。

しかし、アンケートの回答では「活用している」回答が0の診療科が13科と多く、全体的に普及が進んでいないことがわかります。

ビッグデータ


診療科別:ビッグデータを活用している割合

消化器外科、泌尿器科、脳神経外科の順に活用している割合が高くなっています。他の新技術と比較すると、内科系の診療科で活用割合が高い傾向がみられます。

外科医でVR開発者の杉本真樹氏は、インタビュー記事「医療を一歩前進させるためのヒントは『病院の外』にある」で次のように語っています。

 

医療の世界には定量化されないまま散在し、構造化されていない貴重なデータがたくさんあります。例えば患者さんのレントゲンやCTのデータなどは全国のさまざまな病院に散在していますが、それを統計的に集計したうえで適切に体系化する管理はなされていません。(中略)それらの中には非常に貴重な症例があるはずなんです。

これらの散らばったデータを集約して定量化し、例えば特定の病気・年代の男性ならどのような傾向があるかという具合に、構造化することが必要なんです。論文で発表される知見は氷山の一角にすぎません。大学病院だけでなく、地域の小規模な病院で行っている治療も含め、散在しているデータを定量化し、集計したうえで「この症状ならこのような治療をするべき」というような構造化をすると、暗黙知が暗黙知でなくなるんです。

 

日々全国の医療機関で積み重なっていくデータを診療に活用できれば、医師のスムーズな診断や治療の準備につながり、患者の利益にもなり得るということです。

一方で、ビッグデータ活用には個人情報の漏洩が懸念されるという特性もあります。病気の治療に関係する情報は、個人情報の中でもセンシティブなものです。症例が特定の個人と結びつかないように情報を加工してデータ化するよう、改めて注意が必要です。

遠隔医療(オンライン診療含む)


診療科別:遠隔医療(オンライン診療含む)を活用している割合

活用している医師の割合が多かった科は、放射線科、内分泌・糖尿病・代謝内科、美容でした。

過去のアンケート記事から、オンライン診療や遠隔医療について活用の可能性を指摘する各科の医師の意見をご紹介します。

    • 読影業務は、遠隔読影と言う形態が既にあるので、業務形態としては可能(放射線科、担当業務:読影, 放射線部門の管理)
    • 画像診断はオンライン化を進めれば、放射線科の読影医のいない病院は助かる。 (50代男性、消化器外科)
    • 救急受診の多くは軽症。不安での受診も多い。オンラインでトリアージし、診断可能なものは病歴のみで判断する。それも受診が必要な場合は非緊急なら紹介、緊急ありなら受診を推奨する流れが可能と思われる (救命救急、担当業務:外来, 救急)
    • 内分泌代謝内科では、血糖自己測定器や家庭血圧計などが身近に使われているため、オンライン診療が行いやすい科かと思います。この家庭で計測可能なパラメーターを使い、今回のコロナ感染蔓延期に、患者さんをコロナウイルスに暴露させないですむオンライン診療(今回は電話診療でしたが)大変有用と考えました。また甲状腺機能検査は患者さんが受診いただけないと検査ができないのですが、採血検査のみ短時間来院いただき、結果が判明した時点でオンライン診療を行うことで、診断治療が進められることも判明しました。 (内分泌・糖尿病・代謝内科、担当業務:外来, 健診・人間ドック)

 

一方で、検査や処置のため患者の来院が求められる機会は完全にはなくならず、遠隔医療の導入が難しいという意見も多く挙がっています。

    • 患者の様子が今一つつかめない。血液検査ができない。 (内分泌・糖尿病・代謝内科、担当業務:外来, 病棟管理)
    • 平時と変わらないと問題ないが、異なる症状を言われた際に、検査もできず結局再来を促さなければならなくなった。 (内分泌・糖尿病・代謝内科、担当業務:外来, 病棟管理)
    • 直接会って診察できないので顔色やバイタルサインなどが取れない。検査ができない。 (一般内科、担当業務:外来, 病棟管理, 救急)

再生医療


診療科別:再生医療を活用している割合

「活用している」回答が多かった順に、整形外科、形成外科、美容 という結果でした。
再生医療は、機能障害・不全を引き起こした臓器や身体組織に対し、幹細胞などを活用して機能の再生を目指す医療分野です。
変形性関節症にPRP治療を適用したり、幹細胞を用いて傷跡を残さない手術を目指したりなど、患者自身の細胞を使う治療の研究が進められています。

一方で、美容領域などでは適さない治療法による健康被害も発生しており、常に正しい知識を持って新技術を活用していくことが求められます。

医師がいま期待する新技術にはどのようなものがあるか

ここまで、医療現場と新技術の現状をみてきました。
まだまだ実際に取り入れられているものは少ないといえますが、新技術の研究は国内外で日々進んでいます。
現場の医師は、今後新技術がどのような分野で発達していくことを期待しているのでしょうか?

医療に活用できる新技術で期待しているものはあるか、今回のアンケート調査で聞いたところ、結果は次のようになりました。


今後医療への活用を期待している新技術はあるか

 「ある」「ない」の回答がそれぞれ約5割と、意見が分かれました。
なお、この回答を世代別に見てみると、そこまで大きな差はないものの、若いほど「ある」と答えた医師の割合が高く、世代が上がるほど「ない」の回答割合が増加する傾向が見られました(下グラフ)。


世代別:今後医療への活用を期待している新技術はあるか

若い世代の医師が新技術に期待を寄せている一方で、ベテラン世代の医師は新技術に対し抵抗感や疑念を抱えていることがうかがえます。

「ある」と回答した医師が具体的にどのような新技術に期待しているか、テキストマイニングツールで調査したところ、AI画像診断への注目度が最も高い結果となりました。


医師が「期待している」と回答した新技術の注目度

次いで遠隔医療や再生医療への言及が多かったことがわかります。
具体的にどのような活用方法に期待しているか、これら3つを含むさまざまな意見があがっていますので、自由回答をご紹介します。

AI画像診断

    • AIによる画像の読影。当直中、夜中でも診断の補助をしてくれると助かる (30代女性、形成外科)
    • AIによる頭部MRI、頭部CTなどの画像診断技術の進化に期待している。特に脳の萎縮の程度を予測する技術。(60代男性、精神科)
    • 現在、胸部X線写真の結節影診断をAIで行っているが、他の異常影(例えば浸潤影など)についてもAIで診断できるようになることを期待している。 (60代男性、健診・人間ドック)
    • 蛍光眼底撮影画像の読影 (60代男性、眼科)
    • AIの活用で、異常なし症例を除外することで、読影の業務量を減らすこと (60代男性、放射線科)
    • 画像診断の所見を正確に記載してくれる技術 (50代女性、放射線科)

画像診断以外の診断補助

    • 検査値異常からの鑑別疾患の提示や追加検査の提案 (40代女性、消化器外科)
    • 症状を入力すると適度な薬選択を指示してくれる (50代男性、一般内科)
    • AIを使った初診の問診から診断サポートシステムや、カルテ記載のサポートシステム、手術での血管を描出したサポートシステムなど (40代男性、呼吸器外科)
    • 緊急性があるかトリアージできる様になれば夜中の呼び出しや救急搬送が少なくなるかと思います。 (40代女性、小児科)

遠隔手術・ロボット手術

    • NTTのIOWN構想。高速通信と光半導体により遠隔画像診断の高速化やタイムラグ0の遠隔手術が可能になるはず。 (30代男性、放射線科)
    • ロボットによる遠隔治療(主に指導) (30代男性、呼吸器外科)
    • AIによる手術ナビゲーション、教育システム (30代男性、呼吸器外科)
    • ロボット支援手術の拡大 (70代男性、整形外科)
    • 新しいロボット手術デバイス (40代男性、消化器外科)

業務の自動化、効率化

    • レセプトやサマリー作成など単純作業をAIで行う (60代男性、整形外科)
    • AIによる紹介状作成 (30代女性、内分泌・糖尿病・代謝内科)
    • chat-GPTで文章作成 (50代男性、消化器内科)
    • AIを活用した翻訳技術の向上(論文の和訳、英訳など)、文字起こし機能の向上 (30代女性、精神科)
    • ロボット受付〜入院案内など、ロボットの活躍 (40代男性、脳神経外科)
    • 些末な患者からの問い合わせに自動で対応するAIサービス (30代男性、精神科)
    • AIを用いた術後管理 (30代男性、一般外科)

再生医療

    • 再生医療で視神経の再生のメカニズムが解明され治療法もできたら緑内障も治ると思うので期待しています。 (50代女性、眼科)
    • iPS細胞による再生医療 (60代男性、放射線科)

オンライン診療

    • 眼科の遠隔診療や往診の普及(iPhoneにつけるスリットカメラ等) (40代女性、眼科)
    • 遠隔診療の技術up (40代女性、健診・人間ドック)

ビッグデータ活用

    • データサイエンスにまつわる新規の医療統計学 (30代女性、精神科)
    • ビッグデータによる、自動鑑別診断 (40代男性、消化器内科)

その他

    • ウェアラブルディバイスを用いた様々なヘルスチェック (50代男性、循環器内科)
    • 業務では使用していないが、インピーダンス法による体内水分量測定に期待 (60代男性、麻酔科)

    • 分子生物学の知見、mRNAワクチンなどの新技術 (40代男性、内分泌・糖尿病・代謝内科)
    • CTをより繊細に3D構築する技術 (40代女性、心臓血管外科)
    • CV挿入やエコー下ドレナージなどの映像を拡張現実で表示 (20代男性、一般内科)

放射線科などに多い読影業務や救急医療でのトリアージなどについては、専門領域の医師はもちろん別の専門の医師からも「当直時などに役立つ」という意見が出ています。
専門分野における業務効率化だけでなく、全体的な医療の質の底上げ効果も期待されていることがわかります。

ChatGPTなどの生成AIは医療現場で活躍できる?

アンケート結果から、医師がさまざまな新技術に期待を寄せていることがわかりました。
その中でも、今医療業界に限らず世間で幅広く導入されつつある「ChatGPT」などの生成AIに関して、医師はどう感じているのでしょうか?

「ChatGPT」などの生成AIが医療現場で活躍できると思うか聞いたところ、結果は次のようになりました(下グラフ)。


ChatGPTなどの生成AIは医療現場でも活用できると思うか

7割を超える医師が「できる」と回答しており、期待感が高まっていることが見て取れます。
一方で、「できない」「わからない」と答えた医師もそれぞれ1割強いました。

医師はChatGPTをどのような業務に活用できそうだと考えているか、寄せられた意見を紹介します(自由回答)。

    • 精神科外来における予診(インテイク)、家族歴の聞き取り、治療に対する家族の要望などをAIによる質問形式またはタッチパネルによる質問への回答で情報を集めるようにしたい。 (60代男性、精神科)
    • 検査結果に基づいた鑑別診断・治療選択への活用。 (60代男性、一般内科)
    • 入院中患者で認知症を中心とした、会話を求めている患者に対しての対応として生成AIは有効と思う。せん妄予防という意味でも有効になると思う。 (30代男性、一般内科)
    • 難しい症例の治療指針がわかりそう (50代男性、精神科)
    • 患者への説明文書(〇〇病、など)の叩き台作成にすでに使用している (40代男性、内分泌・糖尿病・代謝内科)
    • 多国語への対応、自動筆談、患者説明内容のカルテ記載など (40代女性、産婦人科)
    • 退院サマリ含めた書類作成 (30代男性、麻酔科)
    • 論文作成の際の英文校正 (40代女性、産婦人科)
    • 常用薬の一般名表示、当直表作り、患者一覧を見やすく出力するVBAコードの添削、統計のためのプログラミングなどに使っている (20代男性、一般内科)

医師がChatGPTを活用できそうな領域として、診療から事務作業、研究まで幅広い分野が検討されていることがわかりました。

今後、医療の新技術は医師の仕事をどう変えていくのか

それでは、今後医療現場でChatGPTや新技術の活用が進んでいった場合、医師の仕事はどのように変化するのでしょうか?
また、患者の症状から病気を診断・治療し、健康的な生活を送れる状態にするという医師の役割が、新技術の進歩によって変わっていくことがあり得るのでしょうか?

今後AIやロボティクスなどの新技術の発展にともなって、医師の仕事や役割がどのように変わっていくか聞きました。

医師の仕事はしやすくなる

業務内容が改善することを期待した医師からは「業務効率化や負担軽減が進む」「診療に集中できるようになる」「安全性が高まる」などの声が寄せられました。

業務効率化・負担軽減

    • AIはデータの整理、診断補助に役立ち、医師の仕事負担軽減につながると思う。 (50代男性、精神科)
    • サポートが増えることによって、効率良く仕事ができると思う。 (40代男性、呼吸器外科)
    • 補助的な役割を担ってくれるから、優秀な秘書が増えるイメージ (30代男性、一般内科)
    • 診断と治療方針の決定に今ほど時間を割かなくてよくなる (30代男性、整形外科)
    • 胸部レントゲン写真の下読みで見逃しが減り、業務軽減に繋がる。 (50代男性、呼吸器内科)
    • 見慣れない疾患の診断は楽になると思う (30代男性、緩和ケア)
    • タスクが軽減され、必要なところに十分な人的リソースを割けるようになる(30代男性、呼吸器外科)

診療に集中できるようになる

    • 書類やサマリー作成の負担が軽減されより医療に集中できる (30代男性、小児科)
    • 医師が、医師としての本来の仕事に専念できるようなる可能性はあると思う。しかし、現状では、あまり期待していない。 (60代男性、麻酔科)
    • 医療スタッフは、患者さんへの心理的サポート、患者さんによって変えるべき細かい部分(例・麻酔導入時の薬剤投与量や速度)により集中できるようになる (50代女性、麻酔科)
    • 人力作業が機械化され、治療方針決定という医師本来の業務に専念できるようになる (60代男性、呼吸器外科)

安全性が高まる

    • 誤診やミスが減る。 (60代女性、一般内科)
    • 安全な手術が可能に (40代男性、整形外科)
    • 診療にFocusでき、かつ診断面での誤診は少なくなると思います (40代男性、心臓血管外科)
    • ヒューマンエラーが減る (60代男性、整形外科)

 

医師の業務が一部なくなっていく

また、業務内容の具体的な変化を予想する声として、「診断業務がなくなり、手技メインになる」「最終確認業務が主になる」「専門性が高まる」などの意見が出ています。

診断業務がなくなり、技術のみを医師が担当する

    • 診断学は、AIにとって変わり、技術系の主義のみ残っていくと思います。 (40代男性、形成外科)
    • 医者の仕事のうち診断に関するものはどんどんAIに代えていく方がよい (60代男性、泌尿器科)
    • 医療手技、外科的手技が熟練している者が生き残るのでは、 (70歳以上男性、麻酔科)
    • 内科診断はAIにとってかわられる。 (50代男性、泌尿器科)
    • 検査、問診などは自動化が進み、手技の習得が必要性を増す。 (40代男性、耳鼻咽喉科)

医師の業務が最終判断に縮小される

    • 最終チェックなどに縮小される (50代男性、健診・人間ドック)
    • 診断に至るプロセスをAIが理解し進化すればするほど医師の裁量分野が狭められて行くことは避けられない思いに囚われる。その中では、医療者は治療技術やコミニュケーション能力を高める以外に方策は残されないのではと考えられる。 (70代男性、一般内科)
    • より最終判断に近い仕事のみになる (30代女性、病理診断科)
    • 実施から事後の正誤チェックに。つまらない単純作業者と化すでしょうな。 (70代男性、病理診断科)
    • AIの診断を医師が確認するという流れになる。AIと医師は共存できるかもしれないし、医師が失業するかもしれない。 (60代男性、放射線科)
    • 最終の判断の仕事は残る。それまでの作業等の手間や時間は省力化される。 (40代男性、一般外科)

専門性が高まる

    • 高度な技術や人にしかできない仕事にシフトする (30代男性、消化器外科)
    • 臨床診断の効率化で総合診療科の存在意義は低下。技術を要する部門のニーズは変わらない。 (60代男性、緩和ケア)

 

必要な医師の数が減少する

一方で、「医師の仕事は必要なくなる」「医師の数が減る」「対応できない医師は淘汰される」といった、医師の仕事がAIにとってかわられることを危惧する声もあがっていました。

仕事がなくなる

    • 医師が必要でなくなる (40代男性、皮膚科)
    • 内科は仕事がなくなる (50代男性、一般内科)
    • 医師やメディカルスタッフの仕事に替わる部分があり、職をなくす場合も出てくる (60代男性、一般内科)
    • 一部診療科を除いて、役割は低下する (40代男性、精神科)

医師の数が減る

    • 必要医師数が減り、効率が上がる (60代男性、消化器外科)
    • 多くが自動化されて人が要らなくなる (40代男性、病理診断科)

対応できない医師は淘汰される

    • AIを活用できない人は淘汰されていく (30代男性、呼吸器外科)
    • 専門性が担保できなければ、医者は淘汰されると思います。簡単な診断やカウンセリングは、もはや生成AIのほうが上手ですから。 (40代男性、小児科)
    • 技術を使いこなす能力が必要とされたり、医師の仕事の一部がAIに行われるようになり、能力の低い医師は淘汰されていくと思う。その一方で、医師の働き方などは多様化していくと思う。 (30代女性、その他診療科)
    • 診断はAIにとってかわられる (40代男性、循環器内科)
    • より難化、専門性が要求される上にコミュニケーション能力のない人間は淘汰されると思います。 (40代女性、小児科)

 

今後さらに必要とされる能力とは

今後も新技術の進歩は進んでいくと考えられますが、医師はこれからどのような能力を求められると考えているのでしょうか。中でも多く見受けられた「新技術の活用能力」「対人スキル」の2点を指摘する医師の意見をご紹介します。

新技術を活用する能力が求められる

    • これまでのように、いかに知識を身に付けるかではなく、膨大な情報をいかに選択し活用していくかという能力が重視されていくと思います。 (30代女性、健診・人間ドック)
    • 入力するデータの確かさ確信度の確認が必要になると思われます。科や疾患によっては医師の治療選択のばらつきが大きすぎ、中には妥当と思えないものもある。治療内容が標準に近づくのではないだろうか。 (50代男性、精神科)
    • AIや器械を操る意識と技術が必要になる (60代男性、腎臓内科)
    • 人間でしかできない内容の仕事が増え、いかに機械を使いこなせるのかという能力が問われると思う。 (40代女性、麻酔科)
    • 技術をつないこなせる医者が活躍していく。医師の指示でAIを操作する技術者も出てくる。 (50代女性、呼吸器外科)

対人スキルの向上が求められる

    • AIでは対応困難な患者に対しての心理的サポートスキルが、医師にはさらに必要になると思う。 (60代男性、一般内科)
    • 内科医はよりコミュニケーション力が試される。 (30代男性、一般内科)
    • より対人間としての仕事が増えると思う (30代女性、腎臓内科)
    • 患者の感情面に対する対応が増えてくる。 (40代男性、脳神経外科)
    • より人間的な部分の重要性が増すと思われます (40代男性、腎臓内科)
    • AIが診断の補助をするに従い医師の役割は話を聞くといった安心感や寄り添いの部分がより求められる様になると考える (30代男性、精神科)
    • 患者の精神的な支えとしての役割が重要になる。 (40代男性、消化器外科)

 

新技術によって医師の役割は変化するのか

このような業務内容の変化が予想される中、医師の役割はどのように変わっていくのでしょうか。変化すると考える医師からは「監督的な立ち位置に変化する」という見立てが多かった一方で、「変わらない」と答える医師も多数いました。

診療における監督的な立ち位置になっていく

    • 定型的な医療行為は新技術が担っていくだろうが、新しい発想や人と人とのコミュニケーションを通じて「医療」全体をコントロールする立場になっていくのではないか (50代女性、一般内科)
    • トリアージやAI技術の利用等のマネージが中心となっていく (50代男性、精神科)
    • 医師は診療そのものよりコーディネート業務がメインとなっていく (40代男性、消化器外科)

変わらない

    • 役割は変わらず、業務がラクになると思います。特に内科問診が最初に実用レベルになるかと。 (30代男性、放射線科)
    • 少なくとも、病理の分野ではあまり変化がないのではないかと思います (70代男性、病理診断科)
    • 正直なところ、経験や勘などがものをいう分野であるため、あまりAIに仕事がとられることはないと思う。 (40代男性、消化器内科)
    • 代わらないといいなあ (50代男性、神経内科)
    • 逆に雑用も増えるのでトータルの仕事量は変わらない (30代女性、一般外科)

「変わらない」という意見の中でも、医師が医療行為の責任者である事実はどんなに技術が発達しても変化し得ないという指摘が多く上がっています。

診療の責任を負うのは医師

    • 世がどう変わろうと、医療においては最終責任は医師にかかってくるので、覚悟の持ち方だけは変えてはいけない。 (60代男性、消化器外科)
    • 責任を負うという意味で医師の仕事はなくならないと思います。 (40代女性、一般内科)
    • AIに取って代わられる業務は多いが、その判断の責任は現場の医師が負うことになる。よってAIのみで全てが完結するのはしばらくは非常に限られたもののみになると思う。 (40代男性、一般外科)
    • 最後に責任を取らされるのは医師なので、役割は変わらないと思います。ただ、必要な数は減っていくでしょう。 (50代男性、整形外科)
    • あまり変わらないと思う。結局責任は診療医師にあるからダブルチェックが必要だから。 (60代男性、一般外科)

 
新技術の進歩によって、医師の業務負担の改善や医療の質向上に期待を寄せる雰囲気が醸成されつつある一方で、新技術を使いこなすことができなければ仕事を失いかねないという危機感を持つ医師もいることがわかりました。
こうした環境下で今後も長く患者に選ばれ続ける医師になるためには、新技術への理解をできるだけ深めて自身の医療に活用していく姿勢が重要なのかもしれません。

 

【参考】回答者の属性

調査概要


調査概要

 

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回答者の年齢

 

性別


回答者の性別

 

診療科


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地域


回答者の地域区分

 

主たる勤務先


回答者の主たる勤務先

 

 

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