新型コロナの感染拡大に伴って、様々な分野で業務のテレワーク化ないしリモートワーク化が進んできています。
医療においても「オンライン診療」や「遠隔医療」といった名のもとに業務のオンライン化(リモート化)は少しずつ進んでいましたが、4月10日に厚生労働省が時限的措置として初診でのオンライン診療を解禁したことで、さらにそのオンライン化に拍車がかかってきています。
一方で、医師の業務には検査・処置や手術など、オンライン化することが難しいように思われるものもあります。実際に医療のオンライン化・遠隔化の現状はどのようになっていて、今後の可能性について医師はどう捉えているのでしょうか?2020年8月に実施した医師1,846名のアンケート結果を紹介します(回答者の属性)。

目次
- 1. 調査した医師の勤務先と担当業務の内訳
- 2. 71%は全くオンライン化していない―医師の業務のオンライン化(遠隔化)の現状
- 3. 「オンライン化は難しい・不可能」が8割弱―医師の担当業務のオンライン化の可能性
- 4. 医師が担当業務のオンライン化を「難しい」「不可能」と考える理由
- 5. 担当業務のオンライン化が「可能」「恐らく可能」と考える医師の理由
- 6. 業務をオンライン化した医師の感じているメリット
- 7. 医師の業務のオンライン化のデメリット
- 8. オンライン化してよかったエピソード・困ったエピソード
- 9. 医師の業務のうち、オンライン化しやすいもの、難しいものは?
- 10. 医師の業務のオンライン化・遠隔化に関する医師の自由回答
調査した医師の勤務先と担当業務の内訳
まず、調査した医師の主たる勤務先と担当業務の内訳はそれぞれ以下のようになっています。
現在の主たる勤務先
勤務先で担当している業務(複数回答、休職中除く)
71%は全くオンライン化していない―医師の業務のオンライン化(遠隔化)の現状
休職中を除く医師を対象に、業務のオンライン化(遠隔化/リモートワーク化)の現状について調査したところ、以下のような結果となりました。
「全面的にオンライン化している」が1%、「業務の多くはオンライン化している」は3%、「一部のみオンライン化している」が25%、「全くオンライン化していない」が71%という状況です。
未だに大半の医師の業務において、オンライン化(リモート化)は実現できていないようです。
「オンライン化は難しい・不可能」が8割弱―医師の担当業務のオンライン化の可能性
現在の担当業務が全くオンライン化していない医師を対象に、今後のオンライン化への可能性について調査した結果は以下のようになりました。
業務のオンライン化が「可能だと思う」は9%、「恐らく可能だと思う」は11%、「可能かもしれないが難しいと思う」が51%、「不可能だと思う」が27%となっています。
「難しい」「不可能」を合わせると78%となり、担当業務のオンライン化に関する見通しは、多くの医師にとってまだまだ厳しいようです。
医師が担当業務のオンライン化を「難しい」「不可能」と考える理由
担当業務のオンライン化が「難しい」「不可能」と回答した医師にさらにその理由を尋ねたところ、自由回答として以下のようなものがありました(一部紹介)。
細隙灯検査、眼底検査などの主な検査がオンラインでは難しい (眼科、担当業務:外来)
麻酔術前診察のみは、オンラインも不可能ではないが、麻酔管理および術後診察(入院中)については、物理的に不可能なので。 (麻酔科、担当業務:麻酔管理)
救急車の対応をオンラインでやるのは不可能 (一般内科、担当業務:外来, 病棟管理, 救急)
外来処方は別として、分娩や手術はその場にいる必要があるから。 (産科、担当業務:外来, 病棟管理, 手術, 救急, 健診・人間ドック, 分娩)
精神科の患者は対面で診察することに安心感を得る人が多い。また、知的制限があり、オンラインのシステムを理解できない人もいるため。 (精神科、担当業務:外来, 病棟管理)
顔色やにおいなど、患者から得られる情報が少なくなるため診断に狂いが生じるから。 (一般内科、担当業務:外来, 病棟管理)
一部のロボット手術以外は、手術・麻酔はオンライン化が不可能だと思う。 (麻酔科、担当業務:麻酔管理)
患者さんに触れずに手術や処置をすることはできないから。 (皮膚科、担当業務:外来, 病棟管理, 手術)
内視鏡検査を主とするクリニックのため患者さんが来院しないと始まらないから (消化器内科、担当業務:外来, 検査)
外科の特性上、オンライン化は難しいと思います。ただし手術症例のデスカッション、紹介などをオンラインでやる意義はあると思います。 (一般外科、担当業務:外来, 病棟管理, 手術, 救急)
担当業務のオンライン化が「可能」「恐らく可能」と考える医師の理由
一方で、担当業務のオンライン化を「可能」「恐らく可能」と考えている医師も2割程度います。そのように考える医師にも理由を尋ねたところ、以下のような自由回答(一部)がありました。
読影業務は、遠隔読影と言う形態が既にあるので、業務形態としては可能。しかし、診療のコンサルトと言う面は遠隔では困難で、全面的には難しい。 (放射線科、担当業務:読影, 放射線部門の管理)
Teams等のICTが発展しているため。zoomで話題に上がっている情報漏洩のみ注意している。臨床の専門は精神科だが、外来もオンライン化が進むことを期待している。 (その他診療科、担当業務:産業医)
救急受診の多くは軽症。不安での受診も多い。オンラインでトリアージし、診断可能なものは病歴のみで判断する。それも受診が必要な場合は非緊急なら紹介、緊急ありなら受診を推奨する流れが可能と思われる (救命救急、担当業務:外来, 救急)
皮膚科は画像である程度判断できるため (皮膚科、担当業務:外来, 病棟管理, 手術)
施設に入所している方の在宅管理は、施設の協力により可能と考える。特に今回の新型コロナ感染症のようなケースでは施設に出入りすることによるウイルスの持ち込みリスクを減らすことができると考える。 (一般内科、担当業務:外来, 健診・人間ドック, 在宅医療)
透析の穿刺はオンライン化できないが、それ以外はオンライン管理で、急変時や必要時に患者のもとに行く形にできる。在宅透析ができているので、同じように可能と思う。 (腎臓内科、担当業務:透析管理)
精神科の所見については映像と情報のみで確定するものが多くあるから。 (精神科、担当業務:外来, 病棟管理, デイケア担当医)
読影はオンラインでしている病院もある。外来はテレワーク、FAX処方箋が可能な患者がたくさんいる。手術はオンラインでは現時点ではできないが…システム化されれば可能なはず。 (脳神経外科、担当業務:外来, 病棟管理, 検査, 手術, 救急, 読影)
病棟管理も、当番の一人が駐在し、その他の主治医はリモートで指示を出し、現場で必要な処置や診察などは駐在している当番医が行う、などは可能と考えます。 (神経内科、担当業務:外来, 病棟管理, 検査, 産業医)
特定行為看護師、専門看護師等を利用すればリモートワークは可能 (整形外科、担当業務:外来, 病棟管理, 手術, 麻酔管理)
業務をオンライン化した医師の感じているメリット
実際に担当業務を一部でもオンライン化している医師を対象にオンライン化のメリットを尋ねたところ、自由回答として以下のようなものがありました(一部紹介)。
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- 感染リスクのありうる患者と直接会わずに診療・処方できる。 (精神科、担当業務:外来, 病棟管理, 救急)
- コロナ疑いの患者のオンライン診察での、医療者のリスク低減。 (一般内科、担当業務:外来)
- オンライン診察をすることがありますが、対象になる患者さんにとっては新型コロナウィルス感染のリスクが軽減されるので良いと思います。 (耳鼻咽喉科、担当業務:外来)
- 内分泌代謝内科では、血糖自己測定器や家庭血圧計などが身近に使われているため、オンライン診療が行いやすい科かと思います。この家庭で計測可能なパラメーターを使い、今回のコロナ感染蔓延期に、患者さんをコロナウイルスに暴露させないですむオンライン診療(今回は電話診療でしたが)大変有用と考えました。また甲状腺機能検査は患者さんが受診いただけないと検査ができないのですが、採血検査のみ短時間来院いただき、結果が判明した時点でオンライン診療を行うことで、診断治療が進められることも判明しました。 (内分泌・糖尿病・代謝内科、担当業務:外来, 健診・人間ドック)
- 感染リスクを減らし、物理的な接触を減らす事ができる (神経内科、担当業務:外来, 病棟管理)
- 通勤時間削減、子供を見ながら仕事できる (救命救急、担当業務:救急)
- 出勤しなくていいぶん、時間の節約になるし、感染のリスクも減少する。 (放射線科、担当業務:読影, IVR)
- 外部に出歩く時間が減り, 自分の時間が多く取れるようになった (小児科、担当業務:外来, 病棟管理, 検査, 救急)
- 通勤混雑を回避できる。 (内分泌・糖尿病・代謝内科、担当業務:産業医)
- 往診までの移動時間が節約できた。 (神経内科、担当業務:外来, 在宅医療)
- セカンドオピニオンに対して患者さまが他県からこなくてもいい。 (呼吸器内科、担当業務:外来, 病棟管理, 検査)
- 遠隔地の人と面談ができる。 (小児科、担当業務:外来, 産業医)
- 感染リスクの軽減 遠方の患者診察が可能になる 患者サービスの向上 (精神科、担当業務:外来, 産業医)
- 互いに遠い距離を移動しなくてよい利便性 (その他診療科、担当業務:産業医)
- 遠隔地でもOK。予定が組みやすい (健診・人間ドック、担当業務:健診・人間ドック, 産業医)
- 時間を拘束されずに仕事ができる (脳神経外科、担当業務:外来, 病棟管理, 検査, 手術)
- 産業医先がオンラインとなり、業務がない時間が自由に使えるようになった。また、移動の必要がなくなり、楽になった。 (精神科、担当業務:外来, 在宅医療, 産業医)
- 自由に自宅から診療を行うこともできるようになった。フレキシブルに仕事ができるようになった (小児科、担当業務:外来, 病棟管理)
- web会議が多くなったことで職場に拘束される時間が少なくなり働きやすくなった (その他診療科、担当業務:病棟管理, 救急)
- 拘束時間の減少、帰宅時間が早くできる (小児科、担当業務:外来, 教育)
- いつでもどこでもカルテ確認ができる (一般外科、担当業務:外来, 病棟管理, 検査, 手術, 救急, 健診・人間ドック, 読影, 在宅医療)
- 会議や症例検討会の参加者増加 (心臓血管外科、担当業務:外来, 病棟管理, 検査, 手術, 透析管理)
- より情報伝達がはやい (緩和ケア、担当業務:外来, 病棟管理)
- わざわざ会議室まで出向く必要がない (小児科、担当業務:外来, 病棟管理, 検査, 学生指導)
- 会議が参加しやすくなりました。 (内分泌・糖尿病・代謝内科、担当業務:外来)
- マスクなしで表情が良く観察出来ること (その他診療科、担当業務:産業医)
- 白衣を着ないでもよいのでラク。コロナ感染の心配も少ないです。 (放射線科、担当業務:読影)
- 場所を気にせず業務可能であること (精神科、担当業務:外来)
- 迅速検査では,上級医によるチェックが受けられる. (病理診断科、担当業務:迅速検査,診断業務,検体切り出し)
- 事務がリモートで操作や入力ができること (一般内科、担当業務:外来, 検査, 在宅医療)
感染リスクの減少
通勤時間・移動の手間の削減
遠隔地の患者にとっての利便性
時間的な拘束を受けにくい
資料や会議における情報共有のしやすさ
その他
医師の業務のオンライン化のデメリット
医師の業務がオンライン化されて逆にデメリットとなっていることは何かあるのでしょうか?医師の回答を募ったところ、以下のような自由回答がありました(一部)。
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- 面談をWebで実施するしかない場合、所見を得るのに不便が生じることがある。 (その他診療科、担当業務:産業医)
- 全身状態がみれない (リハビリテーション、担当業務:外来, 病棟管理)
- 患者の表情から読み取りにくくなった。 (泌尿器科、担当業務:外来, 透析管理)
- 直接会って診察できないので顔色やバイタルサインなどが取れない。検査ができない。 (一般内科、担当業務:外来, 病棟管理, 救急)
- 診療が十分でなくなる可能性がある (呼吸器内科、担当業務:外来, 病棟管理, 検査, 読影)
- 生理検査は患者との対面業務なのでオンライン化は不可能 (その他診療科、担当業務:検査, 検査部の管理医師、技師管理など)
- 触診、聴診が不能 (老人内科、担当業務:外来, 在宅医療)
- 患者の様子が今一つつかめない。血液検査ができない。 (内分泌・糖尿病・代謝内科、担当業務:外来, 病棟管理)
- 問診のみで診察ができない (一般内科、担当業務:外来, 病棟管理, 救急)
- 採血などの検査ができない。 (消化器内科、担当業務:外来, 検査, 健診・人間ドック)
- 相手に自分の意思が正しく伝えられているか、心配である。 (病理診断科、担当業務:検査)
- 会議や面談以外での何気ない会話が減った (その他診療科、担当業務:産業医)
- 直接のコミュニケーションがとれずストレスになるケースがある (小児科、担当業務:外来, 製薬企業の新薬開発業務)
- 対面でのコミュニケーションや細かい指示出しが出来ない (救命救急、担当業務:外来, 病棟管理, 検査, 手術, 救急, 麻酔管理)
- 対人関係が希薄化 (精神科、担当業務:外来, 病棟管理, 救急)
- パソコンやネットワークが壊れるとみれない (腎臓内科、担当業務:外来, 病棟管理, 透析管理)
- 個人情報漏洩の可能性 (緩和ケア、担当業務:外来, 病棟管理)
- 端末が空いていないと使えない。 (呼吸器外科、担当業務:外来)
- 途中で回線が途切れたりしてなかなか集中できない (人工透析科、担当業務:病棟管理, 透析管理, 在宅医療)
- 機械をうまくつかいこなせない (一般内科、担当業務:外来, 検査, 健診・人間ドック)
- 仕事と家庭の区別がつきにくい (放射線科、担当業務:読影)
- オンとオフが区別なくなった (一般内科、担当業務:研究)
- 面談を夜間でも行いやすくなってしまった (耳鼻咽喉科、担当業務:外来, 産業医)
- いつでも、呼ばれる (神経内科、担当業務:外来, 病棟管理, 救急, 健診・人間ドック, 産業医)
- 仕事と私生活の区別が曖昧になった (精神科、担当業務:外来)
- 電話再診等は、訪問診療よりは診療報酬が安い (在宅診療、担当業務:在宅医療)
- 診療報酬が安く、収益にならない。 (耳鼻咽喉科、担当業務:外来, 病棟管理, 検査, 手術)
- 遠隔の仕事は給与が少ない傾向にあります。 (放射線科、担当業務:読影)
- 多少、医療機関の利益が減る。事務の業務量は確実に増えている。 (内分泌・糖尿病・代謝内科、担当業務:外来)
- 診療報酬が低くなる (皮膚科、担当業務:外来)
- 高齢者の中にはネット環境がない人もいる (救命救急、担当業務:外来, 病棟管理, 救急)
- 口頭で伝えていた内容を文章やメールで入力する手間が増えた (リウマチ科、担当業務:外来, 産業医)
- 処方責任の所在 (精神科、担当業務:外来, 病棟管理, 検査)
- オンライン診療の際に電話が通じない人がいる (神経内科、担当業務:外来, 病棟管理)
- 耳が遠い患者への対応が困難 (消化器内科、担当業務:外来, 病棟管理, 検査, 手術, 救急)
診療の質の低下
オンラインでできない対応
コミュニケーションや関係構築がしづらい
操作もしくは設備・システム・セキュリティ上の問題
オンとオフの区別がつきにくい
給与・収益への影響
その他
オンライン化してよかったエピソード・困ったエピソード
メリット・デメリットに加えて、業務のオンライン化をしている医師を対象に、オンライン化してよかった・困ったといった具体的なエピソードを募ったところ、以下のようなものが寄せられました(一部紹介)。
オンライン化してよかったエピソード
オンラインであれば産業医面談に対応できるという社員さんがいた。 (健診・人間ドック、担当業務:外来, 健診・人間ドック, 読影, 産業医)
カンファレンスが朝7時から開催されても自宅から参加可能 (消化器外科、担当業務:外来, 病棟管理, 検査, 手術)
患者さんが病院へ出向く必要がないので、通院負担が減ると喜ばれました。 (皮膚科、担当業務:外来, 病棟管理, 検査, 手術, 健診・人間ドック, 読影, 在宅医療, 産業医)
リモートワーク日は夕食を日中に作ることができるようになり、子供を早く寝かせることができた。 (精神科、担当業務:外来, 在宅医療, 産業医)
学生に講義してます。ズームによる講義をしました。感染症の心配をしながら、対面授業をするよりも安心でした。教室での授業よりも、学生も発言しやすいようで、予想外に良い面もありました。 (耳鼻咽喉科、担当業務:外来, 病棟管理, 検査, 健診・人間ドック, 講義)
普段は育児家事のためミーティングに参加しにくい同僚がオンラインで参加できた。 (産科、担当業務:外来, 病棟管理, 検査, 手術, 救急, 分娩, 研修医医学生教育)
コロナ肺炎疑い患者をリモート診察した際、感染のリスクを避けて診察ができたことなど (放射線科、担当業務:外来, 読影)
遠方の地域医療で活躍している方々との意見交換が出来る様になった (リハビリテーション、担当業務:外来, 病棟管理)
遠隔地に居住する社員の復職面談が遅滞なく出来たこと (その他診療科、担当業務:産業医)
icu面会時間外でも患者家族間で連絡とれる (救命救急、担当業務:外来, 病棟管理, 救急)
オンライン化して困ったエピソード
患者さんが画面操作に慣れず、操作に時間をとられることが多いこと。 (皮膚科、担当業務:外来, 病棟管理, 検査, 手術, 健診・人間ドック, 読影, 在宅医療, 産業医)
いつでも面談しやすくなったことからついつい仕事しすぎてしまう (耳鼻咽喉科、担当業務:外来, 産業医)
一人20分で枠をとっていてもいろいろトラブルで時間が足りない (一般内科、担当業務:外来, 検査, 健診・人間ドック, 産業医)
薬が発生しない場合、電話相談は診察じゃないと思われるのか、支払い拒否がいる (皮膚科、担当業務:外来, 病棟管理, 手術)
平時と変わらないと問題ないが、異なる症状を言われた際に、検査もできず結局再来を促さなければならなくなった。 (内分泌・糖尿病・代謝内科、担当業務:外来, 病棟管理)
普段は門前薬局が多数だが、電話再診だと家の近所の薬局を指定する患者も多く薬の在庫ががあるないの問題が起きた (リウマチ科、担当業務:外来, 病棟管理, 検査, 救急, 健診・人間ドック, 読影)
カンファレンスで相談したいことがある場合にタイミングが少なくなった。 (呼吸器外科、担当業務:外来, 病棟管理, 手術)
入退室の様子などで判断できたことが、座っている姿だけなのでわからないことがある。においとか気配とかもわからず、デリケートなことが不明。 (健診・人間ドック、担当業務:健診・人間ドック, 産業医)
患者さん、相談者の表情が見えないので、お気持ちが読み取りにくいこともよくあった。 (婦人科、担当業務:オンライン相談、診療)
CT検査などで合併症がおきた場合に対応が困難 (放射線科、担当業務:読影)
医師の業務のうち、オンライン化しやすいもの、難しいものは?
上記の回答を踏まえると、医師の仕事の中には、オンライン化しやすい業務とオンライン化が難しい業務がそれぞれあると考えられます。そこで、業務別にオンライン化の可能性を医師に調査した結果、下表のようになりました。
オンライン化が「可能だと思う」という回答の割合が最も高かったのは「読影」業務で、71.0%となっていました。読影領域では、遠隔画像診断がオンライン診療より前から実施されているため、現状としても可能になっているという面が大きいと考えられます。
また、「産業医」業務も「可能だと思う」が35.6%、「恐らく可能だと思う」が38.9%と「可能」という意見が多くなっています。実際に、主たる勤務先が一般企業で産業医業務を担当している医師では、現状で業務のオンライン化を一部もしくは全部取り入れている割合が80%と高くなっていました(関連情報:「産業医の業務内容や年収・求人事情」)。
一方で、オンライン化が「不可能だと思う」という回答の割合が最も高かったのは「分娩」で85.2%となっており、次いで「手術」(78.5%)、「救急」(73.4%)、「麻酔管理」(70.7%)となっています。
一部ロボットを使った遠隔手術などの取り組みも進められているとはいえ、医師が実際に手を使って治療的な介入をする領域でのオンライン化は、まだまだ厳しいのかもしれません。
医師の業務のオンライン化・遠隔化に関する医師の自由回答
他にも、業務のオンライン化・遠隔化に関して様々な意見が医師から寄せられました。その一部を以下にご紹介します。
可能な領域は全てオンライン診療で良いと思うが、医療過誤の可能性のある領域では従来の面対応を堅持すべきである。メリハリが必要である。学会なども行きたい人は行けばいいが、忙しい人や遠方ではweb開催も導入したハイブリッド形式が望ましいと思われる。 (60代男性、消化器外科)
積極的に勧めてよいと思うが適切な診療報酬と環境調整が必要だと思う。 (30代男性、一般内科)
患者側すると楽だから、オンライン化を推進したいという世間の風潮は理解できる。しかし、医師側からすると、現状では、長年診察してきた患者が安定しており、自覚症状にも変化なく、対面でなくてもその状態を把握できる(体温、血圧、脈拍など)ような状態でないと、何でもオンラインのみというのは承服し難い。政府はオンライン診療を、通常診療の報酬より減額しようとしているが、そうすると、これまで以上にコンビニ受診が増えると思われる。最低限、設備導入分の支出を賄えるだけの診療報酬も必要とある。また、オンラインで、対面より質の落ち、誤診リスクも高い医療を提供するから安価で当然と思われるが、誤診などの際の免責は必要と思われる。一方で、病棟管理の際、担当医が院外にいる際に、緊急で検査を行い、それをオンラインで把握できるのは心強く、この場合は患者の状態はもともと把握できている場合が多いので、対面診療しないでもよいこともあるというメリットもあるし、自院他院の他医師へのコンサルテーションもしやすくなる。その際コンサルテーションであっても、現在行われている放射線読影遠隔診療のように診療報酬もしっかり設定すればよいと思う。 (40代男性、神経内科)
オンライン化が進むことで、AIでも良いのではないかという的外れなことを言い出す人が出ないようにすべきだと思う。現場の医師が言い出すことはないと思うが、例えばマスコミ関係者がそのようなことを言い出すと、間に受けた患者の対応がめんどくさいし、そのような事態は容易に想像できるため。 (30代女性、健診・人間ドック)
新型コロナ感染を避けるためだけではなく、将来的にもオンラインでの業務ができるようになると便利になると思われる。 (40代男性、病理診断科)
女性活用にはオンライン化できる業務はオンライン化することが望ましいと考えます。 (30代女性、精神科)
身体診察が必要とされる科はオンライン化は困難と思う (30代男性、一般内科)
是非推奨してほしい、特定行為看護師・専門看護師の助力が必要 (30代男性、整形外科)
田舎では専門外来のオンライン化があれば助かると思います。 (40代男性、一般外科)
早くオンライン化が進んで欲しいが、古い業界なのでなかなか進まないのが現状と思う。 (30代女性、腎臓内科)
結局、無理であると思う。可能ならまずは僻地医療へ活かすべき。 (30代男性、泌尿器科)
読影や検査値の評価、精査の必要性の判断などはオンラインでも十分可能だと思います (50代女性、眼科)
収益、利便性を考えると24時間対応など拘束時間が延びる懸念がある。 (60代男性、麻酔科)
診療のオンライン化よりも日常業務雑務のIT化を進めてほしい。 (30代男性、小児科)
オンライン化が進んで、医療業界でもテレワークなど、仕事の選択肢が増えると良い (30代女性、循環器内科)
オンライン化には患者さんと医師の間に信頼関係が必要と考える。 (30代女性、耳鼻咽喉科)
保険や福祉関係の診断書類、公的機関への届け出書類の記載等は、オンライン化が可能であり、オンライン化での業務負担軽減の度合いも高いため、推進してほしい。 (40代男性、腎臓内科)
学会や研究会などはリモートの方が良いと実感しています。MRとの面談もリモートで良いのでは。 (50代男性、一般外科)
画像診断はオンライン化を進めば、放射線科の読影医のいない病院は助かる。 (50代男性、消化器外科)
今回の状況を機に、少し極端でもオンライン化が進むくらいがよいのではないか、と思いました。 (40代男性、神経内科)
上記の医師のアンケートに見られるように、医療のオンライン化に関してはまだまだ難しい部分もあり、メリット・デメリットそれぞれあります。一方で、社会的な状況や技術的な状況も変わりゆく中で、医療の提供方法で何らかの変化が求められつつあることも否定しがたいといえます。
今後技術的な面を含め医療のカタチが変わっていく中、こうした医療現場の声も反映されて、多忙な医師にとってもより働きやすい環境が実現できると良いですね。
【参考】回答者の属性
調査概要
調査内容 | 医師の業務のオンライン化に関するアンケート調査 |
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調査対象者 | 株式会社メディウェルに登録している医師会員 |
調査時期 | 2020年8月10日~2020年8月28日 |
有効回答数 | 1,846件 |
調査公開日 | 2020年9月15日 |
年齢
性別
診療科
地域