病院は全国で約8,000件ありますが、その中には医師が集まりやすい病院もあれば集まりにくい病院もあります。医師が勤務先となる病院を選ぶとき、どのような条件を重視しているのでしょうか?
医師1,662名へのアンケート結果をもとに、医師の病院選びの条件について紹介します(回答者の属性)。

医師が働きたい病院の条件ランキング
医師は自身の勤務先を選ぶ時、どのような条件を重視するのでしょうか。10項目の条件について調査した結果、ワークライフバランスと給与・福利厚生について「重視する」「どちらかといえば重視する」と答えた医師が9割を超えていることがわかりました。
ランキング結果は下記表のとおりです。
| 医師が勤務先選びで重視する条件ランキング | ||
|---|---|---|
| 1 | ワークライフバランス |
96.4% |
| 2 | 給与・福利厚生 |
94.8% |
| 3 | 医師やスタッフの体制 |
90.0% |
| 4 | 立地・アクセス |
89.3% |
| 5 | 経営の安定性 |
81.2% |
| 6 | 院内の設備・機器 |
70.9% |
| 7 | 症例・専門性 |
64.9% |
| 8 | 病院の理念や経営方針 |
58.4% |
| 9 | 研究や教育への取り組み |
36.8% |
| 10 | 大学医局との関連性 |
27.8% |
「ワークライフバランス」と「給与・福利厚生」に次いで、「医師やスタッフの体制」を重視する医師の割合も90.0%と高くなっています。どれくらいの世代の医師やスタッフが何人いるか、また勤務の際どのように連携しているかは、自分に回ってくる仕事量や、指導や協力を仰げる環境かどうかなどを予測するのに欠かせない情報です。
続く「立地・アクセス」(89.3%)と「経営の安定性」(81.2%)も、8割超と多くの医師が重視していることが分かりました。自宅から病院までのアクセスの良さは仕事とプライベートの両立を図る上で重要です。また、病院の経営が安定しているかどうかは、安心して長く働き続けることができるかどうかに関わってくるため重視されているとみられます。
上記5つの条件に比べて、「院内の設備・機器」(70.9%)、症例・専門性(64.9%)、病院の理念や経営方針(58.4%)の3つは、重視する医師の割合がやや減少しています。診療科や年代、診療への姿勢など、医師によって異なる属性にやや関わってくる部分であることが関係しているのではないでしょうか。
最新の設備や機器が揃っていることは魅力的ですが、診療科によっては診療に必要な医療機器が少ないケースもあり、そこまで重要でない場合もあります。また、「幅広い症例を経験したい」「地域医療に貢献したい」といった医師にとっては、症例・専門性は必ずしも重視する条件ではないといえるでしょう。病院の理念や経営方針についても、医師個人の診療方針と大きく外れていなければ、日々の診療や患者との関わりにより重きを置く医師も多いとみられます。
重視する医師の割合が半数を割り込んだ条件は、「研究や教育への取り組み」(36.8%)と「大学医局との関連性」(27.8%)の二つでした。研究や教育は医療の発展のため欠かせない取り組みですが、ある程度経験を積んだ上で臨床を重視する医師など、必ずしも重視しない考え方の医師が多いようです。
大学医局に関しては、かつては医師が勤務先を選ぶ上で強い影響力を持っていましたが、近年では個人のキャリアプランを重視する医師が増え、医局に縛られない働き方を求める傾向が強まっていることが推測できます。
2024年4月から医師の働き方改革が施行され、長時間労働の是正や医療の質向上を目指す動きが進む中で、医師自身も自己犠牲的な働き方から決別しようとしている傾向が見て取れます。
自身のライフスタイルやキャリアプランに合った働き方を実現できる環境を求めて、勤務する病院選びにおいても、従来の価値観にとらわれない柔軟な視点を持つようになっているのではないでしょうか。
世代別などで病院選びのポイントは変わる?
医師が勤務先に求める条件の中で、世代や性別、勤務先種ごとに傾向に差があったものについて紹介します。
給与・福利厚生
「重視する」「どちらかといえば重視する」と答えた医師の割合は若年層で顕著に高く、29歳以下で100%、30代で97.2%でした。40~60代も90%台と高い割合で推移していますが、70歳以上になると72.3%とやや下がる傾向にあります。
定年後は高齢になるにつれて給与相場が下がる傾向にあること、また働き方をセーブすることを優先して給与の優先順位が下がることなどが原因だと考えられます。
立地・アクセス
立地・アクセスについて見てみると、女性の方が男性よりも約1割高くなっています。さらに世代別で見ると30~60代で同様の傾向が見られ、特に乳幼児の子育て世代である30代で最も顕著に差が出ていることが分かります。
子どもの送迎や世話を夫婦で分担する風潮は世間でも広がりつつありますが、今回の結果を見ると、医師という仕事をしている方々においては女性の方が男性よりもやや多く育児を担当しているのかもしれません。
院内の設備・機器/症例・専門性/研究や教育への取り組み
3つの条件について、重視する割合が最も多かったのは大学病院に勤務する医師でした。より専門性の高い医療を提供する大学病院ならではの傾向といえます。
また多様な症例が集まりやすいこと、資格取得やスキル習得を志す若手医師が多く所属していることなどから、研究や教育への取り組みに関心が高い医師が多いこともうかがえます。
大学医局との関連性
全体的に重視する割合が低かった条件ですが、29歳以下と30代、また大学病院勤務医においては、他と比べて重視している医師の割合がやや高い傾向が見られました。
大学医局に所属していると、勤務先の病院は大学病院もしくは関連病院に限定されるため、必然的に若手世代や大学病院勤務医で回答割合が高くなったものとみられます。
【自由回答】医師が「こんな病院なら働きたい」と思える病院の条件とは
実際、医師はどのような病院で働きたいと考えているのでしょうか。医師から寄せられた意見をカテゴリごとに分類してまとめました。
給与
-
- 勤務内容に見合う以上に給与がある病院 (60代男性、健診・人間ドック)
- 休みが多くて給与が高い (40代男性、麻酔科)
- 給料が良い、上司の人柄が良い、当直がない (30代男性、在宅診療)
- 手術(腹腔鑑やダビンチ)が出来て、今の病院より給料が良い (50代男性、消化器外科)
- 売り上げに応じ、設備投資をしてくれたり、給与にインセンティブをつけてくれる(50代男性、耳鼻咽喉科)
- 手術のインセンティブがある。救急体制がしっかりしてる (30代男性、泌尿器科)
- 医師年数だけでなく個人の評価により年俸を考慮してくれる病院 (30代男性、麻酔科)
十分な休暇、有給の取りやすさ
-
- 有給取得率が高い (40代男性、小児科)
- 有給が十分に取れる (20代女性、産婦人科)
- 柔軟に休める (50代女性、その他診療科)
育児や家庭との両立
-
- 育児とのバランスがとれるかどうか (40代女性、小児科)
- 子どもの発熱時などの時の代診体制 (50代女性、皮膚科)
- 子供の体調不良時に休みやすい (30代女性、美容外科)
- 給与面が良く、家族との時間も大切にできる勤務内容の病院 (40代男性、一般内科)
- 院内保育(病児保育含む)の充実 (30代女性、一般内科)
- 子育てをしやすい病院(病院内に病児保育、当直免除もしくは外部発注、時短勤務あり) (30代女性、その他診療科)
- 時短勤務が小学生の間まで継続できる病院 (40代女性、眼科)
勤務時間の長さや忙しさ
-
- あまり忙しすぎない、残業が少ない (60代女性、一般内科)
- 勤務時間の融通が利くこと、診察患者数を医師が決められること (40代女性、精神科)
- 定時に終わる (50代男性、麻酔科)
- 無理に手広く・長時間やるのではなく, 従業員の勤務時間・勤務負担まで考慮したりするところ (30代男性、耳鼻咽喉科)
- あまりバタバタと激しい急性期ではなく、地元に密着して必要な医療だけを提供しているところ (60代男性、麻酔科)
勤務体制
-
- 主治医制でなくクレーマーには病院が対応する (50代女性、腎臓内科)
- 休日や勤務時間外の呼び出しや問い合わせの電話が一切こない。主治医ではなく当番制がしっかり確立しているところ (30代女性、健診・人間ドック)
- 当直やバックアップの体制。しない権利、する人にはしたいと思えるほどの給与や見返り (30代女性、麻酔科)
- 勤務の頻度や体制について柔軟性があるかどうか (60代女性、婦人科)
- 主治医制ではなく平日夜間や土日や連休の休みが確保されている (30代男性、一般内科)
- 協力体制が整っていて、負担が分散されるが頼りにもされる状況 (60代男性、循環器内科)
- 時間外は些細なことで主治医が呼び出されないような体制作りができている、病院のトップが専門性のある分野に対して理解がある (50代女性、消化器内科)
- 医師として患者とかかわる時間的な余裕のある体制を作られていること。=医療としてのチーム体制が良い事 (60代男性、老年内科)
医師の雑務負担軽減
-
- 面倒な手書きを極力無くしているところ、DX化が進んでいるところ (30代男性、脳神経外科)
- 医師の雑務が少ない、タスクシェアが進んでいる、経営陣が有能 (30代男性、産婦人科)
- クラークなどを採用し予診や診断書などの書類業務を分担させ、医師の業務に専念できること。カルテ記載や指示簿などについてもフォーマットを使うなど標準化されて短時間で記載できるようになっていること (30代男性、精神科)
- 無駄な仕事が少ない病院(できるだけ診療に注力できる病院) (50代男性、神経内科)
- シュライバー(カルテ補助)がいるかどうか (30代女性、耳鼻咽喉科)
上司、同僚の人柄や人間関係
-
- 院長、副院長の診療態度が人間として医師として社会人として尊敬に値する病院 (50代男性、一般内科)
- 職員のコミュニケーションがよく取れている (50代女性、血液内科)
- 病院を見学に行った際に、スタッフが笑顔で働いている。殺伐とした感じがない (30代女性、在宅診療)
- 医師同士の交流、連携がスムース、各科が快く依頼を受けてくれるなど (50代男性、乳腺外科)
- 尊敬できる先生がいるなら多少給料が安くてもいいです (50代男性、精神科)
- 「私は診ない。他の医師に診させろ」的な医師がいない。評論するばかりで働かない医師がいない (60代男性、在宅診療)
離職率
-
- 次世代を担う若手から中堅の離職率の低さは気にしています。医局に属さない病院のベテランたちの一部には実力が伴わない古い医療しかしてないのに年功序列というだけで高い給料もらってる郡が一部には存在します。当院ではそれに嫌気がさして、若手が多く抜けている現状が有ります (30代男性、麻酔科)
- 職員が長く勤務している (60代男性、一般外科)
- 長く勤めているひとが多いところ (50代男性、呼吸器内科)
スキルアップ
-
- 新たな専門医資格がとれる (40代男性、リウマチ科)
- 自分の医療技術の維持・向上になる病院 (50代男性、内分泌・糖尿病・代謝内科)
- 多くの先生が専門医や知識の向上を意識している (40代女性、精神科)
診療方針
-
- 医療に対しての積極性と患者本位の医療の実行をしている病院 (70歳以上男性、小児科)
- 病院として、医療に対する信念を持って診療を行っているところ (40代女性、形成外科)
- 患者さんを物としてではなくいつまでも苦しくても生きてる人として扱う医療機関であって欲しいですね (70歳以上男性、老年内科)
- 患者様ファーストの病院 (60代男性、産婦人科)
- 病院のミッションが明確で、地域貢献のできる施設 (50代男性、リウマチ科)
さいごに
環境の変化に伴ってキャリアを見直す時、どんな病院で働きたいのか、どんな条件を重視するのか、なかなか優先順位の付け方が難しいと感じる医師もいるかもしれません。他の医師がどのように勤務する病院を選んでいるのか参考にしつつ、自身の状況に合わせて重視する条件を絞り込んでみてはいかがでしょうか。
【参考】回答者の属性
調査概要
| 調査内容 | 医師の病院選びに関するアンケート |
|---|---|
| 調査対象者 | 株式会社メディウェルに登録している医師会員 |
| 調査時期 | 2024年12月16~24日 |
| 有効回答数 | 1,662件 |
年齢
| 年齢 | 回答数 | 割合 |
|---|---|---|
| 29歳以下 | 35 |
2.1% |
| 30代 | 436 |
26.2% |
| 40代 | 507 |
30.5% |
| 50代 | 393 |
23.6% |
| 60代 | 244 |
14.7% |
| 70歳以上 | 47 |
2.8% |
性別
| 性別 | 回答数 | 割合 |
|---|---|---|
| 男性 | 1,234 |
74.2% |
| 女性 | 428 |
25.8% |
診療科
地域
| 地域区分 | 回答数 | 割合 |
|---|---|---|
| 北海道・東北 | 141 |
8.5% |
| 関東 | 662 |
39.8% |
| 中部 | 245 |
14.7% |
| 近畿 | 347 |
20.9% |
| 中国・四国 | 97 |
5.8% |
| 九州・沖縄 | 170 |
10.2% |
| 不明・海外 | 0 |
0.0% |
主たる勤務先
| 現在の主たる勤務先 | 回答数 | 割合 |
|---|---|---|
| 病院(大学病院以外) | 921 |
55.4% |
| 大学病院 | 188 |
11.3% |
| クリニック(勤務医) | 328 |
19.7% |
| クリニック(開業医) | 103 |
6.2% |
| 一般企業 | 51 |
3.1% |
| 介護施設 | 14 |
0.8% |
| 休職中 | 26 |
1.6% |
| その他 | 31 |
1.9% |








