皮膚科の開業医が得る年収の本音、直面する理想と現実とは

開業に関する最新情報は「ファイナンス視点で考える、失敗しない“開業”のススメ 第1回:データからみるクリニックと医師」をお読みください。

皮膚科医であれば誰でも考える「開業」

現在、皮膚科医として勤務している方は、必ず「開業」という事を考えることがあると思いますが、皮膚科を開業するメリットとは一体何でしょうか。
開業医となれば、当然、「年収が上がる」可能性や、「希望する医療を自由に」行うことが出来る可能性があります。
「開業」後押しするコンサルティング会社のホームページ等を見ると、開業医としてのメリットばかりがクローズアップされがちですが、果たして実際に開業した皮膚科医が求めていた“理想”と“現実”とは一体どのようなものでしょうか。

皮膚科を開業する上での理想とは

皮膚科グラフ1
皮膚科グラフ2(修正版)
グラフでも分かる通り、皮膚科の開業医というのは、個人・法人共にかなりの収益率(法人の場合は給与費に収入が含まれています)を上げております。(個人開業医の場合、2659万円が年間の収益ですので、月収にすると約221万円)内科勤務医の年収はおよそ1200万円から1800万円程と言われていますので、1.5倍から2倍近い年収を稼ぐ計算になります。特に皮膚科は入院診療などがほぼなく、殆どの場合が外来診療からの収益となり、救急外来等の可能性も少ないため、他の医科に比べても、開業が軌道に乗れば良い意味で“楽に稼げる”と言えます。
また、保険診療を扱う皮膚科としての開業だけでなく、美容皮膚科など自由診療を行うことで、更なる年収の向上を期待できます。

皮膚科開業の成功とは

皮膚科の開業を成功させる秘訣としては、立地条件やプロモーションの手法など様々なものがあります。皮膚科を受診される方は、老若男女問わず幅広く居りますので、定期的な外来診療を受けることが出来れば、皮膚科医として困ることは無いでしょう。
また、先に述べたとおり、美容皮膚科など自由診療に特化し上位顧客の獲得が出来れば、診療時間や患者数を多くせずとも、高年収が期待できます。

開業後の皮膚科医は楽に稼げるという風潮

一部メディアで、「皮膚科医は他の医科に比べて楽で高年収である」という事が言われたことがありますが、ここまでの統計や実際に“成功”している開業皮膚科医のデータを見ると、確かにそういった側面があるのは事実です。
しかし、いざ開業しようとするとそこには様々な厳しい現実が待ち受けているのも事実です。

開業資金と設備

第一に直面する厳しい現実は、最初にして最大の課題になるであろう、「開業資金」の問題です。
開業資金と一言で言っても、開業する予定の土地や、設備で全く変わってきます。
先に述べたように、通常の皮膚科では、外来診療による収益を主とします。そのため、立地条件などは、かなり人通りの多い所やアクセスの良い場所に限られてきます。そういった土地は当然地価も高い可能性があります。
また、保険診療で収益を多く上げるには、より多くの患者数を受け持つ必要があります。そのため、看護師や受付等のスタッフの雇用資金も大きくなってきます。

自由診療をメインに行い、少ない患者数でも高年収を狙う場合は、美容皮膚科として開業するという手段もありますが、その場合は美容皮膚科専用のレーザー治療器などの、非常に高額な設備の導入が必要になります。美容系の機器類は単体で1000万円程かかる物も多いため、開業当初からの導入にはかなりの負担となります。
また、美容皮膚科を利用するハイソサエティな顧客を満足させるだけの、通常の病院とはまた違った空間づくりへの投資も重要です。

皮膚科開業の資金は、最低でも2000万円程から、最初から美容皮膚科を開業する場合は5000万円以上かかる場合もありますので、例え年収が飛躍的に上がった場合でも、しばらくは開業資金の回収に追われる場合があることを覚えておきましょう。

激しい開業競争

第二に、皮膚科医数の増加、皮膚科医の開業競争が激化している現実があります。

医師会のデータによると、ここ10年で皮膚科医は15%も増加しているようです。逆に比較的“激務”と言われる小児科医や外科医、産婦人科医などは減少の傾向を強くしています。これは、医師を目指す人の意識の変化、日本の経済事情、医療制度の問題など多くの問題が関連してきます。

また、皮膚科医に限った話ではありませんが、非常に開業医が増えている現実があります。
開業医が増えているということは、同じ地域で患者の獲得競争があることを意味しています。最近では医業もサービス業であるという世間的な認識が広まってきたこともあり、適切な医療を提供するのは最低条件であり、それ以上のプラスα(待ち時間の問題、病院自体の雰囲気やスタッフの対応など)を求めている方が多くいらっしゃいます。皮膚科医としての力量はもはや当然であり、サービス事業主としての成功が求められるということです。

さいごに

勤務医に比べ開業医の方が年収も自由も手に入る可能性があることは事実です。これは医師として活躍されている方であれば、皆様ご存知のことでしょう。しかし、開業医全てが等しく成功しているわけではないことも事実です。
年収や待遇も当然重要ですが、医師としての自分の将来をしっかりと設計した上で、開業以外にも、転職などで、より良い環境でスキルアップ・キャリアアップを成功させている医師も多く存在します。
勤務医、開業医ともどちらが正しいということはありません。現在の自分の環境や待遇に悩みがある場合、貴方にとって大切なことは一体何であるのか、今一度検討し、確かな答えを導き出して頂きたいと思います。

<その他参考情報>
医師の年収1,500万は多い?少ない?ー病院経営の視点から見る、医師の年収が決まる仕組みと年収アップのヒント

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