医師は臨床・研究・教育などの業務に日々携わる中で、どのようなスキル上の課題を感じているのでしょうか?医師のスキルアップに関する1,500人のアンケート結果を見ていきます(回答者の属性)。

目次
調査した医師の診療科
今回アンケートで回答した医師の主たる診療科の内訳は下表のようになっています。
回答の多い上位10科目は、一般内科、精神科、消化器内科、小児科、整形外科、麻酔科、皮膚科、消化器外科、産婦人科、循環器内科となっています。
医師がスキル面で課題に思っていることや改善したいこと
現在の業務について、スキル面で課題に思っていることや改善したいことを医師に質問したところ、診療科に応じた専門・関連領域のスキルの習得などが多く挙げられました。そのため、以下診療科別で自由回答を紹介します(回答上位10科目の診療科5つずつと、その他の診療科5つの回答を紹介)。
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- 糖尿病患者のインスリンコントロールについて知識がやや乏しいと自覚している。 (60代男性、一般内科)
- 診療のスピード (40代男性、一般内科)
- 胃透視の読影 (50代男性、一般内科)
- もっと総合診療の知識を深めたい (40代女性、一般内科)
- スキルを要することが少なく、スキル低下が心配になる (50代男性、一般内科)
- ときに非典型的な画像所見を認めたときの診断が困難である事例が存在する。ついては知識をもっと増やし、診断できるようにしたい。 (60代男性、消化器内科)
- 外来をやっていないので最近の薬の知識がない。 (40代女性、消化器内科)
- ERCPの技量 (30代男性、消化器内科)
- 腸管エコー検査の更なる鍛錬 (30代女性、消化器内科)
- 内視鏡検査診断、検査能力の向上 (40代男性、消化器内科)
- 新しい治療方針や処方などに遅れを取らないよう、日々の勉強が必要。 (50代女性、循環器内科)
- 心エコー技術を高めたい (30代女性、循環器内科)
- カテの技術のスキルアップ (40代男性、循環器内科)
- CTOの手技を確立したい (40代男性、循環器内科)
- もう少し丁寧に患者さんに関わりたい (40代男性、循環器内科)
- 手術執刀数が少なめ。 (40代男性、消化器外科)
- 自分の専門分野の患者が少ない。 (60代男性、消化器外科)
- 腹腔鏡/ロボット支援下手術の技術向上 (40代男性、消化器外科)
- 初めて出会う疾患は診療に時間がかかる (30代男性、消化器外科)
- 自分の領域以外の手術に携わる機会が減り、経験が少ない分野があることが不安。 (40代女性、消化器外科)
- 手術スキルの向上 (50代男性、整形外科)
- 手肘関節鏡のスキルアップ (30代男性、整形外科)
- 慢性疼痛への対応 (30代男性、整形外科)
- 手術時間の短縮、臨床研究 (40代男性、整形外科)
- 専門領域以外の疾患・外傷のマネジメント (60代男性、整形外科)
- 皮膚科専門医を取得後のキャリアアップ (30代男性、皮膚科)
- 症例に偏りがあるため、外来での勤務を増やすことを考えている (40代女性、皮膚科)
- 患者数が多くて時間内に終わらない (50代女性、皮膚科)
- 美容についてなかなか学ぶ機会が持てない (30代女性、皮膚科)
- フットケア指導や、機器を用いない診察のノウハウ (60代女性、皮膚科)
- 内科的な合併症管理 (50代女性、精神科)
- コミュニーケーションスキル (30代男性、精神科)
- 専門医、指定医の取得 (30代女性、精神科)
- 認知症についてさらなる専門性を高めたい (40代男性、精神科)
- 発達障害の診療は、万全とは言いかねる。 (60代男性、精神科)
- アレルギーや発達障害をもう少し自分で診られるようになりたいです。 (40代女性、小児科)
- 新生児しか診療しないので、小児科医として年長児の診療もしたいと思っている。 (50代女性、小児科)
- 業務におけるAIの活用法 (30代男性、小児科)
- エコーのスキルアップがしたい (40代女性、小児科)
- 発達障害について知識が浅いので、勉強会やセミナーには積極的に参加しようと思っている(事実そうしている)。 (40代男性、小児科)
- 硬膜外麻酔が達人並みに上手くなりたい (40代男性、産婦人科)
- 超音波検査の精度を上げたいと思っています。 (60代男性、産婦人科)
- 専門医試験勉強 (30代女性、産婦人科)
- スキルアップの時間がとれない (30代男性、産婦人科)
- ドライラボでの練習 (30代女性、産婦人科)
- 心臓麻酔の経食道エコーのスキル (50代男性、麻酔科)
- 神経ブロックとICUの管理を本格的に勉強したくても、どうしても片手間や自己流になってしまう (40代女性、麻酔科)
- 集中治療領域に関しては専門医がいないため、まだ診療の質を上げる努力が必要だと思う。 (30代男性、麻酔科)
- ペインクリニック研修 産科麻酔研修 (40代女性、麻酔科)
- 大学病院に異動して専門分野以外に触れる機会がなくなり,漠然とした不安を感じている. (30代男性、麻酔科)
- 手術指導が多く、実際に手を動かす機会が減っている (40代男性、泌尿器科)
- 美容外科はある程度できるようになると、1人ドクターの勤務なので、他のオペを学べる機会がない。 (40代男性、美容)
- 蛍光眼底撮影画像の読影 (60代男性、眼科)
- 新たに在宅医療の勉強をしたいがどこで勉強したらいいかわからない。 (30代女性、耳鼻咽喉科)
- 論文などの文献の探し物を効率的にしたい (30代男性、腎臓内科)
一般内科
消化器内科
循環器内科
消化器外科
整形外科
皮膚科
精神科
小児科
産婦人科
麻酔科
上記以外の診療科
医師が今後スキルアップしていきたいことやキャリア上の目標
医師は今後のスキルアップやキャリアアップなどに関して、どのようなことを目指しているのでしょうか?科目別の自由回答では、下記のようなものがありました(回答上位10科目とその他科目のそれぞれ一部紹介)。
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- 知識のアップデートをし続けたい。 (50代男性、一般内科)
- 内科以外もある程度対応できるようになりたい (40代男性、一般内科)
- 専門医を取得する (40代女性、一般内科)
- 診察のスピードを上げていきたい (30代男性、一般内科)
- 訪問診療での緩和ケア、呼吸器管理 (40代女性、一般内科)
- 専門医の維持、知識のアップデート (40代男性、消化器内科)
- Esdなど治療内視鏡 (30代男性、消化器内科)
- もう新しいスキルアップは考えていない。人間関係改善、組織作りなどの方が重要。 (50代男性、消化器内科)
- 胆膵系処置の修練及び癌治療のスキルアップ (30代女性、消化器内科)
- 総合内科専門医、腸管エコー検査の鍛錬 (30代女性、消化器内科)
- 知識の維持・update・コミュニケーションスキルの向上など。 (50代女性、循環器内科)
- 新しい治療法の技術 (40代男性、循環器内科)
- 心臓リハビリ指導士 (40代男性、循環器内科)
- 心臓超音波の専門医と成人先天性心疾患の専門医を取るために、大学で研鑽を積むが、どこかで留学も検討 (30代女性、循環器内科)
- カテーテル治療 (30代男性、循環器内科)
- ロボット手術の執刀 (40代男性、消化器外科)
- 化学療法のスキル (60代男性、消化器外科)
- ERCP技術の取得、肛門疾患の手術技術取得、健診の知識の会得 (30代男性、消化器外科)
- いつまで手術を主に働けるか分からないので、内視鏡技術を習得し、できれば専門医を取得したい。 (40代女性、消化器外科)
- 大学病院以外の病院で手術の研鑽を積むこと (30代男性、消化器外科)
- 外来、保存療法での治療域拡大 (30代女性、整形外科)
- 脊椎センターの部長が目標 (30代男性、整形外科)
- エコー手技の習得 (50代男性、整形外科)
- 手肘関節鏡のスキルアップ (30代男性、整形外科)
- スポーツ整形資格 (30代男性、整形外科)
- アレルギー専門医など (30代男性、皮膚科)
- 質の良い論文をたくさん書く (40代女性、皮膚科)
- 美容ボトックス、ヒアルロン酸注入、レーザーなど自費 (40代女性、皮膚科)
- 自由診療領域のスキルアップ (50代男性、皮膚科)
- 一般の救急外来を勉強したい (50代男性、皮膚科)
- まずは精神保健指定医および専門医を取得し、その後学位取得を目指すかサブスペシャリティを目指すかを検討したい。 (20代男性、精神科)
- 臨床能力向上 (30代女性、精神科)
- 司法精神医学の研究をすること (30代女性、精神科)
- 睡眠専門医 (40代男性、精神科)
- 認知症の診療レベルを上げたい。 (50代男性、精神科)
- 開業予定なので苦手をなくしたいです。 (40代女性、小児科)
- 周産期専門医は取得したが、育児のため休職したため数年で失効してしまう。家庭の状況から元の業務に戻ることは難しく、目標は見失ってしまったが、また新しいことにトライしたいと思っている。 (30代女性、小児科)
- 小児血液がん専門医取得 (30代男性、小児科)
- タイミングを逃してしまったが、海外留学をあきらめていない。 (40代男性、小児科)
- 発達外来を開きたい (40代女性、小児科)
- 腹腔鏡技術認定医、生殖医療専門医取得 (30代男性、産婦人科)
- 超音波診断、遺伝診療 (40代女性、産婦人科)
- 不妊治療分野 (30代女性、産婦人科)
- ロボット手術の経験を重ねたい (60代男性、産婦人科)
- 子宮鏡認定医,生殖補助医療専門医 (30代女性、産婦人科)
- 総合診療領域の知識 (50代女性、麻酔科)
- ペインクリニック 緩和医療 (40代女性、麻酔科)
- 透視下ブロックやSCSの技術向上、心臓血管麻酔 (50代男性、麻酔科)
- 集中治療専門医の取得 (30代女性、麻酔科)
- エコーガイド下神経ブロックの上達 (60代男性、麻酔科)
- 僻地医療に携わりたいと考えています (40代男性、救命救急)
- 乳癌の治療以外にも、遺伝性腫瘍の専門にもなりたい。 (40代女性、乳腺外科)
- 骨髄像を読む技術をアップさせたい (30代女性、血液内科)
- 硝子体手術の手技取得 (30代男性、眼科)
- 育児中なので、まずは家庭との両立をうまくして、細く長くでも臨床を続けること。 (30代女性、呼吸器内科)
一般内科
消化器内科
循環器内科
消化器外科
整形外科
皮膚科
精神科
小児科
産婦人科
麻酔科
上記以外の診療科
専門性をより高めたい、より幅広い領域への対応力を高めたい、専門医資格を取得したい、ライフステージに合わせた働き方をしていきたいなど、医師によってさまざまな目標があることがわかります。
医師がスキルアップやキャリア上の目標実現のために取り組んでいること
スキルアップやキャリア上の目標達成などのために、医師はどのような取り組みをしているのでしょうか?日々の学習や学会・研修会出席など、自由回答では下記のようなものが挙げられました(一部紹介)。
他の診療所などへ非常勤としていく (30代女性、在宅診療)
病理結果などで、自分の画像診断での結論の正否を確かめる (30代男性、放射線科)
臨床遺伝専門医を取得するために月1回研修に行っている。学会の勉強会に参加している。 (40代女性、乳腺外科)
学会活動や論文執筆 (50代男性、呼吸器外科)
学会(Web含む)参加、専門誌購読。 (50代男性、眼科)
日々文献検索 (60代男性、神経内科)
英語学習 (40代男性、内分泌・糖尿病・代謝内科)
症例集め、論文、症例発表 (20代女性、乳腺外科)
同僚の内科医から謙虚に学ぶ (60代男性、リハビリテーション)
セミナー受講、大学院入学 (30代男性、リウマチ科)
医師のスキルアップに対する職場からの理解・支援は?
医師がスキルアップやキャリアの目標を目指していく上で、勤務先からの理解や支援はどの程度あるのでしょうか?医師から勤務先への満足度は下図のようになっていました。
「満足している」が20%、「どちらかといえば満足している」が47%となっており、合計67%の医師が満足しているという結果となっています。
勤務先にしてほしい理解や支援としては下記自由回答(一部)のように、学会や研修会、資格取得への資金補助などが多く挙げられました。
出張扱いで研修に出してくれる (50代男性、心臓血管外科)
電子カルテやクリティカルパスを含めた診療システムの改善、研究支援体制 (50代男性、循環器内科)
試験代や移動費など金銭的支援 (40代男性、循環器内科)
手術を増やす、2診以上の勤務体制 (30代女性、形成外科)
学会や講習会参加費の援助 (50代男性、眼科)
子育てと仕事を両立できる環境 (30代女性、乳腺外科)
資格取得のための資金援助 (50代女性、緩和ケア)
オーベンをつけて欲しい (30代女性、眼科)
学会参加費や研修費の補助金 (40代男性、救命救急)
海外出張の形での海外支援のサポート (50代男性、心臓血管外科)
医師は一人前になるまでに10年程度かかり、勤務をしつつも専門研修や最新知識・技術の習得などに取り組むことの多い職種です。医師の働き方改革では自己研鑽は労働時間に換算されないとなっていますが、出来る限りは勤務先から医師の研鑽へのサポートもあると良いのかもしれません。
【参考】回答者の属性
調査概要
| 調査内容 | 医師のスキルアップに関するアンケート調査 |
|---|---|
| 調査対象者 | 株式会社メディウェルに登録している医師会員 |
| 調査時期 | 2023年8月23日~2023年9月1日 |
| 有効回答数 | 1,500件 |
年齢
性別
診療科
地域
主たる勤務先





