
医師の開業を取り巻く環境は変わってきています。2026年4月には管理者(院長)になるために一定の臨床経験が必要になったり、外来医師過多区域での開業には新規開設の事前届出が必要になるなど、開業に関する制度変更もありました。
また、病院やクリニックなどの医療機関の経営は厳しい状況が続いています。クリニック(一般診療所)の件数は微増傾向にあるものの、病院数は減少が続いており、医療機関の倒産、休廃業・解散は2年連続で過去最多を更新しています。
このような中、医師にとって開業という選択肢は今どのように映っているのでしょうか?2026年6月に実施したアンケートから見ていきます。(回答者の属性)
回答医師の開業に関する状況
アンケート回答医師(有効回答1,362名)のうち、「今まで開業したことがない」は87.4%と9割弱となっています。
「開業したいとは思わない」医師が増加
今まで開業したことがない医師を対象に今後の開業意向について質問したところ、以下のような結果となりました。
「開業したいとは思わない」が61.7%と最も多い状況です。4年前の2022年の調査では「開業したいとは思わない」は43.9%となっており、17.8ポイント増えています。
| 【前回比較】今後の開業意向 | 【今回】2026年調査 | 【前回】2022年調査 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 開業したいと思っており、既に開業に向けて準備している |
3.7% |
3.9% |
-0.2% |
| いずれ開業したいと思っている |
7.4% |
12.7% |
-5.3% |
| 機会や条件が合えば開業することも考えている |
27.2% |
39.5% |
-12.3% |
| 開業したいとは思わない |
61.7% |
43.9% |
+17.8% |
開業したくない医師の理由
「開業したいとは思わない」と回答した理由について医師に尋ねたところ、「経営上のリスクを負いたくない」「雇用や人事が面倒で興味がない」「年齢・体力的に今からは厳しい」「勤務医の方が気楽」「今後のクリニック経営に希望が持てない」「手術や専門診療など臨床に専念したい」「診療科的に開業に向かない」といった回答が多く寄せられました(以下に自由回答の一部を紹介)。
-
- 借り入れを返済できなくなるリスクが高い(40代男性、一般内科)
- 経営の負担が大きい。競争がある。(60代男性、心療内科)
- リスクを背負いたくない。(50代男性、一般内科)
- リスクが高いように感じている。(40代男性、内分泌・糖尿病・代謝内科)
- 自分一人でリスクを背負う覚悟がない。(40代女性、ペインクリニック)
経営上のリスクを負いたくない
-
- スタッフの人間関係のトラブルへの対応が大変そうだから(50代女性、皮膚科)
- 人を雇う、経営するといったことは自分にはできそうにないから(50代男性、健診・人間ドック)
- 周囲が開業しているがスタッフの雇用など大変そう(40代女性、精神科)
- 昔は開業も考えていたが個人病院に勤めて、他人を雇って生活の責任を持つことの大変さを知ったので、開業するのをやめた。(60代女性、呼吸器内科)
- 経済的損失、人間関係の問題、患者家族との軋轢やクレーム対応、地域や医師会の中でがんじがらめになるなど、良いことが全くない。小児科のような非採算部門ならなおさら。(40代男性、小児科)
雇用や人事が面倒で興味がない
-
- 年齢的にも経営・管理していくのが大変(50代男性、循環器内科)
- 58歳だから(50代男性、一般内科)
- もう年なので開業する気力がない(50代男性、精神科)
- 年齢が過ぎている、大きな借金は負えない。(60代男性、婦人科)
- 年齢的に無理です(50代男性、消化器内科)
年齢・体力的に今からは厳しい
-
- 勤務医が気楽なので(40代男性、整形外科)
- 今の勤務で十分な給料をもらっているから(40代男性、消化器内科)
- 勤務医の方が気楽で、バイトでも稼げるから(50代女性、小児科)
- 自分のこどもが精神疾患あるため、開業にかける時間があるなら、こどもに時間をかけてあげたいから。(40代男性、泌尿器科)
- 休みなど含め、自由がなくなるから。(40代男性、精神科)
勤務医の方が気楽
-
- 国を挙げて開業医潰しにかかっているのに、わざわざ開業する意味がわからない。(40代男性、一般内科)
- 診療報酬が低く、あらゆるコストが高くなっており、リスクも高い(40代男性、精神科)
- 医療費削減の傾向が続くなかで開業しても成功するイメージがわかないから。(40代男性、リウマチ科)
- 診療報酬が開業医に不利になると思うから(30代男性、耳鼻咽喉科)
- 物価が上がっているのに、診療報酬は上がらず、クリニック開業は困難だから(50代女性、皮膚科)
今後のクリニック経営に希望が持てない
-
- 手術麻酔がしたいから(40代女性、麻酔科)
- 経営にまで頭が回らないしリスクも高いと考える。純粋に診療のことだけを考えたい。(40代男性、一般外科)
- 外科医として継続して診療を行いたいから。(30代男性、消化器外科)
- 面倒だから、臨床の方が楽しいから(30代男性、整形外科)
- 経営などに興味や自信がなく診療業務に専念したいから(40代女性、呼吸器内科)
手術や専門診療など臨床に専念したい
-
- 小児外科のキャリアで開業を想定していないため(40代男性、小児外科)
- 放射線科での開業は難しいから(50代男性、放射線科)
- 病理は開業が難しいから(30代男性、病理診断科)
- 専門科的に難しい(30代男性、呼吸器外科)
- 麻酔科でペインクリニック以外で開業するのは難しいと考えているから。(40代女性、麻酔科)
診療科的に開業に向かない
-
- 一人の患者にかけられる時間が短くなりそうだから。(50代男性、精神科)
- 自分なりの社会貢献の考え方として開業は合致しないため(40代男性、一般内科)
- 親が開業医で家をつげ圧力がありとてもめんどくさかったから(40代女性、産業医)
- 転居、転職が気軽にできなくなるから(30代男性、血液内科)
- 親の開業当初に子供ながら苦労したから。(転校、軌道にのるまで親が忙しい+イライラしていて、家庭内の空気が悪かったから。)(40代女性、婦人科)
その他
開業したい・開業を考えている医師の理由
上記とは逆に、今後のキャリアの中で開業したい医師や開業も視野に考えている医師の理由としては、「自分の裁量で自由に働きたい」「収入を増やしたい」「自分のペースで無理なく働きたい」「自分の理想の医療を提供したい」「定年を気にせず長く働きたい」「良い条件や機会があれば」といった回答が多く挙げられました(自由回答の一部を紹介)。
-
- 自分のやりたいようにやれるから(30代男性、在宅医療)
- 現在の職場上層部の方針や価値観と合わない、自分のやりたい医療が見つかった、家庭とのバランスをとりたい、等の理由からです。(40代女性、精神科)
- 自分の方針で仕事が出来そうだから。(40代男性、整形外科)
- 今の法人にやとわれているのが苦痛になってきたので(50代男性、整形外科)
- 自分のスタイルで進むには開業しかないと考えたから。(40代男性、一般内科)
自分の裁量で自由に働きたい
-
- 収入を増やせるから(40代男性、泌尿器科)
- リスクはあるが、努力した分自分に返ってくるところ。(40代男性、一般内科)
- 収入が増えるから。(30代男性、皮膚科)
- 働いた分の給与をもらえるから(50代男性、消化器外科)
- 今より収入を増やしたいから(40代女性、婦人科)
収入を増やしたい
-
- ゆっくり働きたいから(40代男性、精神科)
- 当直勤務のない外来中心の勤務形態に切り替えたいため.(30代男性、内分泌・糖尿病・代謝内科)
- 自分のペースで仕事をしたいから。(40代男性、総合診療科)
- 勤務医のやりがい搾取に疲れたため(40代男性、脳神経外科)
- 自身のペースで外来診察など行いたい(30代女性、整形外科)
自分のペースで無理なく働きたい
-
- 自分の提供したい医療サービスが実現できるから(50代女性、神経内科)
- 診療を自分が望む形で行いたいため(40代男性、眼科)
- 自分で好きな診療を責任を持って行えるから(40代男性、循環器内科)
- すべての面で自身の思う方針で医療を行える(50代男性、腎臓内科)
- 自分の理念に沿った訪問診療を展開できるため。(30代女性、在宅医療)
自分の理想の医療を提供したい
-
- 定年退職になった時に、働くところがなかったら、開業でも良いかな(60代男性、神経内科)
- 現職に定年制があるから(50代男性、循環器内科)
- 定年後も仕事ができる(50代男性、消化器内科)
- 定年がないから、自由度高く働けそうなイメージのため(40代女性、循環器内科)
- 定年気にせず行ける(50代男性、泌尿器科)
定年を気にせず長く働きたい
-
- 開業の可能性がないとは現状言い切れないから(40代男性、精神科)
- 現在雇用されている病院の経営状況が今後悪化するような場合は開業も選択肢として考えたい。(50代男性、人工透析科)
- 診療報酬の流れを見て(40代男性、心療内科)
- チャンスがあるなら、小さい規模からと考えている(40代男性、精神科)
- デジタルパソロジーが普及すればクリニックで働くことも考える(40代女性、病理診断科)
良い条件や機会があれば
-
- 性に合ってそう(60代男性、脳神経外科)
- 現在のバイト先の院長が高齢のため 継承 考えてると話を聞いたから(50代男性、呼吸器内科)
- 親が開業したので引き継ぐ可能性があり、地域医療にも貢献できるため。(40代女性、腎臓内科)
- 患者の生活にも関わるような診療がしたい(50代男性、リハビリテーション)
- より患者さんに貢献することを考えた際、開業した方が良いと考えたため(40代男性、眼科)
その他
開業の方法では新規開業よりも継承開業が好まれる傾向
医師の開業の方法としては、新規で一から開業する方法と、他の医師が運営していたクリニックを継承する方法とがあります。今後開業したい医師や開業を考えている医師にどちらの方法が良いかを聞いたところ、以下のような結果となりました。
最も多いのは「条件が合えばどちらでも」で53.1%となっています。一方、新規と継承で比較すると、継承での開業が28.7%と、新規での開業の9.9%に比べて3倍近く多くなっています。
継承での開業を希望する理由としては、初期コストを抑えられることや、患者さんを引き継げるなど、初期のコストや集患上・経営上のリスクを減らせることなどが多く挙げられました(自由回答の一部を紹介)。
初期投資が少なくて済むから、スタッフを探す手間が減るから(50代男性、整形外科)
初期投資やリスクを抑えることができるから。(40代男性、一般内科)
患者がある程度ついてるから(30代男性、精神科)
ゼロから始めるのは大変そうだから(40代女性、小児科)
継承のほうが新規よりは様々な計算ができそう(50代男性、一般内科)
患者さんを引き継げる可能性があるから(40代男性、乳腺外科)
新規開業での苦労は望まない(60代男性、一般内科)
安全性が高そう(50代男性、循環器内科)
新規開業は規制がかかっている地域であり、0から築くより効率が良いため。(50代男性、消化器内科)
初期投資を節約できるから。(60代男性、一般内科)
セカンドキャリアとしての開業が主流?医師の開業のタイミング
今後のキャリアで開業を考えている医師はどのタイミングで開業しようと思っているのでしょうか?多かったのは定年前後や退職・退局後などセカンドキャリアとしてのタイミングでした。その他、専門医・学位取得後など早い段階での開業を考えているケースや、家庭の都合がついたタイミング、開業資金の目途が立ったタイミング、特にタイミングは決めず良い物件があればという回答もありました(自由回答の一部を紹介)。
-
- 定年後または直前(60代男性、放射線科)
- 60歳手前(50代男性、消化器内科)
- 定年退職迎える65歳時(50代男性、循環器内科)
- 臨床において手術治療をしなくなったタイミング。(30代男性、消化器外科)
- 現在の施設を退職するタイミング(60代男性、消化器外科)
- 地域医療に十分貢献してから(40代男性、泌尿器科)
定年前後や退職・退局後などセカンドキャリアのタイミング
-
- 専門医取得後3-4年(40代男性、整形外科)
- 学位取得後(30代男性、泌尿器科)
- 大学院を卒業して数年後(30代男性、腎臓内科)
- できるだけ早く(30代男性、救命救急)
- 各種資格を取得したあと(30代男性、麻酔科)
専門医・学位取得後などの早いタイミング
-
- 子供の大きくなったタイミング(40代男性、一般内科)
- 末子が小学校高学年以上かつ自身が60歳以下で新しいことを始めるのに耐えうる状態(30代女性、リウマチ科)
- 子供が社会人になってから(50代男性、リハビリテーション)
- 育児が落ち着いたタイミング.(30代男性、内分泌・糖尿病・代謝内科)
- 子供が手がかからなくなるタイミング(40代女性、循環器内科)
家庭の都合がついたタイミング
-
- 開業準備資金のあてが出来た時。(60代男性、一般内科)
- 資産形成できた時(50代男性、放射線科)
- 自己資金に余裕がある時(30代男性、消化器内科)
- 条件が整ったら(40代男性、精神科)
- 資金ができたタイミング(40代男性、乳腺外科)
開業資金の目途が立ったタイミング
-
- 良い案件があれば(40代男性、精神科)
- いい物件があったら(40代男性、美容外科)
- 手頃な継承物件があれば(60代男性、内分泌・糖尿病・代謝内科)
- 求める条件にあう物件がみつかった時(50代女性、神経内科)
- いい物件に出会ったタイミング(30代男性、整形外科)
特にタイミングは決めず良い物件があれば
-
- 親の体調が不安定になったとき(40代女性、腎臓内科)
- 開業に向けて自分のやりたいことの方針が具体的に見えてきたとき。(40代女性、精神科)
- 現在の病院理事長が交代するときに、自分にとって次の理事長がふさわしくないと思ったとき。(50代男性、人工透析科)
- 総合病院の部長職に昇進しそうなタイミング(30代男性、リウマチ科)
- 周りが閉院したら(40代男性、耳鼻咽喉科)
その他
今回のアンケートでは、リスクや大変さから開業したいと思わない医師が増えている状況や、開業するとしても継承で初期投資のコストや集患上のリスクを避ける傾向が見られました。
最近では初期投資を最小限に抑えるミニマム開業や、軌道に乗ってきた後に譲渡が可能な分院クリニック求人、開業のように裁量を持ちつつ勤務できる求人など多様な形態も出てきています。
「キャリアの中で実現したいことはあるものの、そのためのコストやリスクを抱えるのが不安」という医師の方は、まずは最近のニーズや他の医師の事例をチェックして参考にしてみてはいかがでしょうか。
【参考】回答者の属性
調査概要
| 調査内容 | 医師の開業に関するアンケート |
|---|---|
| 調査対象者 | 株式会社メディウェルに登録している医師会員 |
| 調査時期 | 2026年6月24日~2026年6月30日 |
| 有効回答数 | 1,362名 |
年齢
| 年齢 | 回答数 | 割合 |
|---|---|---|
| 29歳以下 |
20 |
1.5% |
| 30代 |
317 |
23.3% |
| 40代 |
458 |
33.6% |
| 50代 |
297 |
21.8% |
| 60代 |
217 |
15.9% |
| 70歳以上 |
53 |
3.9% |
性別
| 性別 | 回答数 | 割合 |
|---|---|---|
| 男性 |
995 |
73.1% |
| 女性 |
367 |
26.9% |
地域
| 地域区分 | 回答数 | 割合 |
|---|---|---|
| 北海道・東北 |
127 |
9.3% |
| 関東 |
532 |
39.1% |
| 中部 |
183 |
13.4% |
| 近畿 |
289 |
21.2% |
| 中国・四国 |
88 |
6.5% |
| 九州・沖縄 |
141 |
10.4% |
| 不明・海外 |
2 |
0.1% |
診療科
| 現在の主たる診療科 | 回答数 | 割合 |
|---|---|---|
| 一般内科 |
180 |
13.2% |
| 総合診療科 |
28 |
2.1% |
| 消化器内科 |
72 |
5.3% |
| 呼吸器内科 |
39 |
2.9% |
| 循環器内科 |
59 |
4.3% |
| 腎臓内科 |
17 |
1.2% |
| 神経内科 |
26 |
1.9% |
| 内分泌・糖尿病・代謝内科 |
35 |
2.6% |
| 血液内科 |
11 |
0.8% |
| 腫瘍内科 |
2 |
0.1% |
| 老年内科 |
11 |
0.8% |
| 人工透析科 |
11 |
0.8% |
| リウマチ科 |
12 |
0.9% |
| 一般外科 |
31 |
2.3% |
| 消化器外科 |
40 |
2.9% |
| 呼吸器外科 |
10 |
0.7% |
| 心臓血管外科 |
7 |
0.5% |
| 脳神経外科 |
30 |
2.2% |
| 乳腺外科 |
6 |
0.4% |
| 泌尿器科 |
30 |
2.2% |
| 整形外科 |
75 |
5.5% |
| 形成外科 |
25 |
1.8% |
| 美容外科 |
7 |
0.5% |
| 小児外科 |
3 |
0.2% |
| 現在の主たる診療科 | 回答数 | 割合 |
|---|---|---|
| 眼科 |
40 |
2.9% |
| 皮膚科 |
49 |
3.6% |
| 美容皮膚科 |
9 |
0.7% |
| AGA |
2 |
0.1% |
| 耳鼻咽喉科 |
32 |
2.3% |
| 精神科 |
112 |
8.2% |
| 心療内科 |
6 |
0.4% |
| 放射線科 |
31 |
2.3% |
| 小児科 |
50 |
3.7% |
| 産婦人科 |
40 |
2.9% |
| 婦人科 |
14 |
1.0% |
| 麻酔科 |
48 |
3.5% |
| 救命救急 |
17 |
1.2% |
| ペインクリニック |
4 |
0.3% |
| 緩和ケア |
6 |
0.4% |
| 病理診断科 |
13 |
1.0% |
| 臨床検査科 |
4 |
0.3% |
| 在宅医療 |
17 |
1.2% |
| 健診・人間ドック |
39 |
2.9% |
| リハビリテーション |
16 |
1.2% |
| 産業医 |
32 |
2.3% |
| 社医 |
2 |
0.1% |
| 上記以外 |
12 |
0.9% |
主たる勤務先
| 現在の主たる勤務先 | 回答数 | 割合 |
|---|---|---|
| 病院(大学病院以外) |
684 |
50.2% |
| 大学病院 |
108 |
7.9% |
| クリニック |
454 |
33.3% |
| 企業 |
46 |
3.4% |
| 介護施設 |
21 |
1.5% |
| 休職中 |
22 |
1.6% |
| その他 |
27 |
2.0% |


