医師は消化器や循環器などの臓器別や内科・外科などによって多くの診療科に分かれていますが、診療は常に1科で完結するとは限らず、むしろ他科との連携がなければ真価を発揮できない診療科もあります。
それぞれの診療科の医師は他のどの診療科と連携することが多いのでしょうか?また、診療科同士でうまく連携するためには何が必要なのでしょうか?
他科連携に関する医師1,915名のアンケート結果を紹介します。

目次
他の診療科との連携は「頻繁にある」医師が最多
医師が他科の医師と連携する頻度について調査した結果は下図のようになっています。
「頻繁にある」が41%と最も多く、「ときどきある」が40%と次いで多くなっています。
多くの医師にとって他の診療科との連携は日常業務に欠かせないものになっているといえます。
診療科別では美容や健診では他科医師との連携の機会少なく
さらに診療科別に他科連携の頻度を見ていくと、下表のようになっています。
多くの診療科では連携の機会が多いことが見て取れますが、美容や健診などでは「ほとんどない」という回答が多くなっており、他科連携の機会は比較的少ない状況と考えられます。
勤務先別では病院、とくに大学病院で最も他科連携の機会が多い
また、主たる勤務先別での結果は下表のようになっています。
大学病院では「頻繁にある」が60%と最も多くなっており、大学以外の病院で次いで49%と多くなっています。一方でクリニックでは勤務医・開業医ともに「ほとんどない」が3割程度を占めている状況となっています。
医師の連携先として最も多い診療科 上位20科目
連携する他科で最も多い診療科について医師に調査を実施したところ、回答の多かった上位20科目は下表のようになりました。
最も多かったのが一般内科で、次いで、循環器内科、消化器内科の内科系科目が続きます。外科系では整形外科が最も多く、次いで消化器外科が多い状況となっています。
各科の医師が最も連携することの多い診療科
麻酔科であれば外科系と連携することが多いなど、医師自身の診療科によって連携先の診療科も異なると考えられます。
そのため、医師自身の主たる診療科別に、連携することが最も多い診療科を集計した結果が下表となります(細かいためクリックで拡大してご確認ください)。
消化器外科、呼吸器外科はそれぞれ対応する内科との連携が多い、眼科では内分泌・糖尿病・代謝内科との連携が多い、精神科では一般内科との連携が多いなど、診療科別に傾向が分かれていることが見て取れます。
なお、上記は「最も連携することが多い診療科」として質問しているため、0%の箇所でも連携する機会が0であるということを意味しているわけではないことはご留意ください。
他科の医師との連携するタイミング
診療科間の医師の連携はどのようなタイミングで行われるのでしょうか?自由回答では以下のような回答がありました(一部紹介)。
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- 急患患者における腹痛の鑑別等で相談することがある。 (40代男性、産婦人科)
- 入院患者の内科的疾患の治療が必要な時 (50代男性、精神科)
- 併存疾患・合併症診療 (40代女性、整形外科)
- 泌尿器科疾患のコンサルト 多いのは頻尿での紹介、ときおりPSA高値 (30代男性、泌尿器科)
- 担当患者さんの当該疾患の判断について (50代男性、一般外科)
- 心不全と肺炎の合併症例 (40代男性、呼吸器内科)
- 心疾患疑いの患者のコンサルタント (40代女性、消化器内科)
- 高齢者の周術期の管理 (40代男性、整形外科)
- 心房細動等循環器疾患との併発。 (60代男性、脳神経外科)
- 予後が比較的保たれている患者さんの,慢性疾患のコントロール (50代男性、緩和ケア)
- 手術前の診断・治療、併存疾患の周術期管理 (40代女性、消化器外科)
- がん終末期の患者の診療の引継ぎ (50代男性、緩和ケア)
- 術前・術後の評価と管理について (40代男性、一般外科)
- 内視鏡的緊急処置が必要な場合、肝炎などの内科的な管理が必要な場合 (60代男性、消化器外科)
- 両科の疾患を併せ持つ患者の場合に、それぞれの科のリエゾンコンサルテーション (50代女性、一般内科)
- 間欠性跛行、下肢浮腫の患者さんのやり取りです。術前術後管理もあります。 (50代男性、循環器内科)
- 癌の診療をめぐって (30代男性、泌尿器科)
- 高齢者の治療 (40代女性、一般内科)
- 周術期のトラブル全般 (40代男性、麻酔科)
- 手術や急性期後リハビリ (50代男性、リハビリテーション)
- 内科的疾患でなかった場合 (50代男性、一般内科)
- 手術や外科的判断を仰ぐとき (40代男性、消化器内科)
- 詳しくない分野での専門的知識・判断を仰ぐ。 (40代男性、泌尿器科)
- 手術応援 (30代男性、産婦人科)
- 手術中 (20代女性、麻酔科)
- DMコントロールの問い合わせ (50代女性、眼科)
- 血糖管理 (50代男性、一般外科)
- 手術予定患者の評価 (60代男性、整形外科)
- 境界領域の疾患への対応 (60代男性、耳鼻咽喉科)
- 不妊治療の初期検査での甲状腺機能異常や糖尿病の治療をおねがいするとき (50代女性、産婦人科)
- 外来に来た手術適応と思われる患者さんを紹介する (30代女性、一般内科)
- 救急患者引継ぎ (60代男性、呼吸器内科)
- 消化管出血の時 (50代男性、消化器内科)
- 退院時におけるの在宅診療導入時 (50代男性、在宅診療)
- 手術に関して、ICU管理に関して (30代男性、麻酔科)
- 睡眠関連の診療についての相談 (40代男性、精神科)
- 呼吸管理 (50代男性、麻酔科)
- 患者さんの他科受診紹介を通じて (60代男性、消化器内科)
- 肺癌の治療方針決定 (50代男性、呼吸器外科)
- 特定の臓器病変のマネジメント (30代男性、リウマチ科)
- てんかんの患者さんがいる時 (30代女性、精神科)
- コンサルテーション (40代女性、救命救急)
- 内科的疾患の連携、救急患者の引継ぎなど (30代男性、脳神経外科)
- 脳梗塞の診療 (30代男性、老年内科)
- 合併症、境界領域の症状 (30代男性、整形外科)
- 専門外の病状の治療 (40代男性、産婦人科)
- 診療や処置をする上で、自分の専門科では対応が難しい時。 (40代女性、消化器内科)
- 在宅での皮膚疾患 (40代女性、神経内科)
- 外傷による、皮膚欠損の再建 (40代男性、形成外科)
- 帯状疱疹 (30代男性、眼科)
一般内科との連携のタイミング
循環器内科との連携のタイミング
消化器内科との連携のタイミング
整形外科との連携のタイミング
消化器外科との連携のタイミング
内分泌・糖尿病・代謝内科との連携のタイミング
一般外科との連携のタイミング
呼吸器内科との連携のタイミング
神経内科との連携のタイミング
皮膚科との連携のタイミング
診療科間の連携「取れている」が9割以上
他科との診療科間の連携についてうまく取れているかどうか医師に質問したところ、結果は下図のようになりました。
「うまく連携が取れている」が39%、「どちらかといえば連携が取れている」が52%と、合わせて91%の医師が診療科間の連携については取れていると回答している状況です。
「下請け程度にしか考えていない」「イニシアティブがはっきりしない」…診療科間の連携で医師が課題に感じること
他科医師との連携は取れていると考える医師が多い一方で、課題に感じることも少なからずあるようです。医師の自由回答では以下のようなものがありました(一部紹介)。
自分は特に負の感情を持っていないが、受け入れる相手が凄く嫌そうな感じで嫌味を言ってくる。 (30代男性、一般内科)
糖尿病手帳を活用しており、頻繁な問い合わせをしなくて済むようになった。しかしDM患者全員が所有しているわけではないので、スマホアプリとの連携などで携帯しやすくなれば良いと思う。 (50代女性、眼科)
内科医が常勤ではないため、十分な連携は取りづらい。 (50代男性、精神科)
手術枠が限られているのでそれの取り合いになる (50代男性、整形外科)
ドクターによって快く引き受けてくれる人とそうでない人がいる。 (40代男性、産婦人科)
プライドの高い医師が多い特定の診療科とはやりにくさを感じる (30代女性、麻酔科)
相手側の医師により対応がバラつくことがあること。外科疾患なのにスムーズに受け入れてもらえないなど。 (50代男性、消化器内科)
大学病院では連携まで時間かかることも多い (30代男性、泌尿器科)
知識が古くフットワークの重い老人たちを上手くおだてなくてはいけないこと (40代男性、消化器外科)
他科へのコンサルト枠がないときに、無理やり頼む感じになるがそのハードルを下げてほしい。 (30代男性、呼吸器外科)
放射線科を下請け程度にしか考えず、態度が横柄だったり、検査依頼文が適当だったりする医師が一定数いること (30代男性、放射線科)
臨床系は当直明けやローテーションが頻繁で連絡が取りにくい。 (70歳以上男性、病理診断科)
骨転移があるけど整形外科医が全く相談に応じてくれない (40代女性、乳腺外科)
整形外科の中でも専門領域が細分化されており、相談したい疾病に関連したDrが外来に出ていない時がある。 (60代男性、リハビリテーション)
肺炎と心不全の合併例に対してどちらがイニシアチブを取るかどうか (40代男性、呼吸器内科)
ガイドラインがあっても診療科間でその解釈が異なるため治療方針が一致しない。 (40代男性、循環器内科)
こちら(施設や在宅)の医療機能を理解されずに、「その程度の状態ならそちらで診られませんか」と言われて診療を渋られてしまうことがたびたびあること (50代男性、老年内科)
どちらの科がイニシアティブをとるのかはっきりしない場合がある (40代男性、一般外科)
先方の医師が忙しく診療情報提供書が退院時に間に合わず、医師間の病状申し送りがタイムリーにきない時がある。 (50代男性、在宅診療)
こちらの意図を十分に理解してくれない 子供なのに威圧的な態度をとる (30代女性、小児科)
「日常のコミュニケーション」「お互いへのリスペクト」…他科の医師とうまく連携していく上で重要なこと
医師の診療科間の連携の課題に対しては、どのように対処していくのが良いのでしょうか?他科の医師とうまく連携していく上で重要なことについて自由回答を募ったところ、医師からは下記の回答が寄せられました(一部紹介)。
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- 依頼を受けた医師が依頼した医師の顔を思い浮かべる事が出来るような信頼関係の構築。 (60代男性、一般内科)
- 日頃からコミュニケーションをとっておく (40代女性、婦人科)
- 普段から仲良くすること (40代男性、小児科)
- 普段からのきちんとした文書もしくは口頭でのコミュニケーション (40代男性、精神科)
- 日頃からの良好な関係 (50代男性、消化器内科)
- お互いに敬意をもつ。 (40代男性、呼吸器内科)
- 他科に対して敬意を持って接すること (50代男性、リハビリテーション)
- やはり「リスペクト」が大事だと思います (50代男性、整形外科)
- 互いの専門性へのリスペクト。診療科に貴賤無しという態度 (50代男性、精神科)
- 経験年数関係なく、他科の先生はそれぞれの科の専門家として意見を尊重する。依頼状だけでなく、時間があれば、他科の先生と直接話すことが重要だと思う。 (40代女性、泌尿器科)
- 低姿勢で、謙虚な気持ち (60代男性、一般内科)
- 餅は餅屋に任せる、という謙虚な姿勢。相手の立場になって物事を考えること。 (30代女性、麻酔科)
- 腰を低くすることとお礼を必ず言いに行く (40代男性、産婦人科)
- 謙虚な気持ちで接する。 (20代男性、一般内科)
- 愛想よく下手に出ること (30代女性、形成外科)
- お互いの立場を理解し、尊重する事と思う。要するに、「お互い様」の精神。 (30代男性、一般内科)
- 相手の専門性を理解し、互いに尊重し合うこと (40代男性、脳神経外科)
- 相手の科の知識がある程度あること (30代男性、リハビリテーション)
- 他科でも疾患の眼科部分の予後を理解してくれている時はとても助かると思います。 (40代男性、眼科)
- お互いの立場になって考えること (50代男性、呼吸器外科)
- 過不足のない情報共有 (40代男性、一般外科)
- 連携室も含めて、病状のみならず患者様の背景もしっかり情報共有すること。 (60代女性、在宅診療)
- 専門外の医師にも伝わりやすいカルテ記載や口頭での説明 (30代男性、精神科)
- 診療情報を正確に伝える (50代男性、一般外科)
- どのようなリスクがどのような状況で起こりうるか、どの程度の確率で起こるかを説明していくことだと思います。 (50代男性、循環器内科)
- 人間性とコミュニケーション力 (60代男性、一般内科)
- コミュニケーションスキル (50代男性、泌尿器科)
- コミュニケーション能力 (50代男性、放射線科)
- 上手なコミュニケーション、相手へのリスペクト (50代男性、精神科)
- しっかりとコミュニケーションをとる (40代男性、眼科)
- 相手の科の領分に踏み込まない (50代女性、精神科)
- お互い相談し合う文化 (30代女性、一般内科)
- 起こりうる連携パターンを予め想定して、仕組み化しておくこと (40代男性、産婦人科)
- 他科の要望に応えること (60代男性、放射線科)
- できるだけ時間の都合をつける (50代男性、形成外科)
日常的なコミュニケーション、関係構築
敬意をもって接する
謙虚さ
相手の立場の理解
適切で丁寧な情報提供
コミュニケーション能力
その他
他科医師との連携で印象に残っているエピソード
他の診療科の医師との連携に関して、印象に残っているエピソードについて募ったところ、自由形式で以下のようなエピソードが寄せられました(一部紹介)。
新しいガイドラインで根拠にされていた文献を主治医に教え、健康保険の査定が復活したこと。 (40代男性、放射線科)
転移性腫瘍だったのに原発のある科がみてくれなかった (50代男性、整形外科)
緊急の内視鏡を依頼しようと、その医師を探して直接頼もうとしたら、すごい嫌な言い方をされて不愉快になった。 (50代男性、消化器外科)
大腿骨のオリゴ転移患者さんで、整形外科、臓器別診療科の先生方と患者さんとSDMの上で治療方針を決定できた。 (30代男性、放射線科)
手術が必要になりうる疾患を経過観察入院させる際に、休日中のため内科でそのまま入院管理を求められた。 (50代男性、消化器内科)
視神経の疾患など、治療が内科と重なる場合、内科に任せると当科の診察になかなか来なくなり、治療評価が判断しづらくなることもまれにありました。 (40代男性、眼科)
腸腰筋膿瘍の患者のドレナージを内科の私が主体で外科の先生に手伝ってもらい行った。 (30代女性、一般内科)
勤務する病院により、他科との連携具合が異なるが、今勤務している病院ではたらき始めた頃に、複数の疾患を合併している患者さんが入院され、6科兼科がついた。気軽に兼科してみんなで一人の患者さんを見る雰囲気に感動した。 (40代女性、泌尿器科)
精神科分野のことに精通した整形外科医や小児科医がいて大変良い連携が取れた (50代男性、精神科)
腸が破けた瀕死の子供を小児外科医師と助けて、今も元気で後遺症がないこと (50代女性、小児科)
診療情報提供書が届く前に訪問診療が開始され、1週間後に癌末期で死亡されたがその1週間後に診療情報提供書が届いた。 (50代男性、在宅診療)
整形外科で手術目的の入院患者さんが、弁膜症が高度で見合わせたところ、数日で心不全をきたして危ない状態になった。手術を延期して幸いだった。 (60代男性、循環器内科)
予後や治療方針に係る特殊な組織型について直接説明し、急遽治療方針を変更したことがあります。主治医を通して、患者さんにすぐに来院するよう促し、専門施設へ急ぎ紹介しました。当初、患者さんには不信がられたそうですが、その選択が功を奏したため、大変感謝されたそうです。各科との連携の大切さを実感出来た例でした。 (40代男性、病理診断科)
勉強会などで直接医師に会えると意見交換ができて、連携が深まる (40代男性、産婦人科)
腸管損傷で困ったときに助けてくれた。逆に尿管損傷でこちらも助けになれた。 (30代男性、泌尿器科)
医療知識や技術が進展し専門分化していくにつれて、各専門分野の医師が連携する必要性は以前よりも高まってきていると考えられます。本アンケートが、医師が診療科間でより良い連携を取るための一助になれば幸いです。
【参考】回答者の属性
調査概要
調査内容 | 他科・他職種連携に関する医師アンケート調査 |
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調査対象者 | 株式会社メディウェルに登録している医師会員 |
調査時期 | 2023年2月21日~2023年3月1日 |
有効回答数 | 1,915件 |
調査公開日 | 2023年3月16日(他科連携分) |