複数主治医制やチーム主治医制に移行すべき?主治医制に関する医師1,883名のアンケート結果

主治医制に関するアンケート結果

 
医師の働き方改革に関する検討会がとりまとめた「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」[1]では、複数主治医制の導入が項目として挙げられていました。これに関して、2019年3月の日経メディカルが実施したアンケート[2]でも、医師の7割が「複数主治医制にすべき」と回答した結果となっています。

しかし、主治医制・複数主治医制それぞれにメリット・デメリットがあると考えられ、また同じ主治医制でも夜間・休日に主治医がどこまで対応するかなどは、病院や診療科の状況によって変わってきます。複数主治医制でもスタッフ医師は1人ということもあれば、複数のスタッフ医師がいて完全に交代制となっている場合もあります。

そこで株式会社メディウェルでは、病棟対応の体制について以下4つの場合を想定して医師へのアンケートを実施しました。

<本調査で想定した病棟対応の体制の分類>

体制の分類 体制の説明(詳細)
主治医制 休日や夜間を含め何かあれば主治医が対応
当直医制 主治医は1人だが、休日や夜間は当直医が対応
複数主治医制 スタッフ医師は1人であとは初期・後期研修医
チーム主治医制 スタッフ医師が複数おり、完全交代制

2019年6月~7月にかけて実施したこのアンケートでは、1,883名の医師の有効回答を得ました。以下にその結果について紹介します。

<結果の概要>

    • 病棟対応をしている医師のうち、当直医制で勤務している医師が53%と最も多く、主治医制は25%、チーム主治医制、複数主治医制はそれぞれ12%、8%だった。
    • 現在の病棟対応の体制への満足度は、いずれの体制でも半数以上が「満足」と回答していたが、最も満足度が高かったのはチーム主治医制(90%)で、次に満足度が高かったのは当直医制(84%)だった。
    • 病棟業務を担当する上で理想とする体制としては、チーム主治医制(41%)あるいは当直医制(40%)という回答が多かった。
    • 当直医制が理想と回答した医師は、72%がその体制を「実現できると思う」と回答した一方、チーム主治医制が理想と回答した医師では32%となっており、チーム主治医制の実現は難しいと考えている医師が多い結果だった。
    • 当直医制の実現に必要なこととしては「患者や患者家族の理解」などが挙げられ、チーム主治医制については「医師の絶対数」といった回答が寄せられた。

アンケートの詳細は以下のようになっています(回答者の属性)。

病棟対応をしている医師の割合

有効回答の1,883件のうち、主たる勤務先が「病院」で「病棟対応をしている」医師は1,180名(全回答者中の62.7%)でした。詳細は下表および下図のようになっています。


病院勤務の割合


病棟対応をしている割合

勤務先での病棟対応の体制

病院での病棟対応をしている医師のうち、現状でどれぐらいの医師が複数主治医制やチーム主治医制を採用しているのでしょうか?医師の回答結果は下図のようになっています。


病棟対応の体制

当直医制が53%と半数以上を占めており、主治医制が25%、チーム主治医制が12%、複数主治医制が8%という状況です。主治医制ではあっても、夜間・休日は当直医に任せて主治医は休めるようにしている場合が多くなっています。

<参考:(再掲)本調査での病棟対応の体制の分類>

体制の分類 体制の説明(詳細)
主治医制 休日や夜間を含め何かあれば主治医が対応
当直医制 主治医は1人だが、休日や夜間は当直医が対応
複数主治医制 スタッフ医師は1人であとは初期・後期研修医
チーム主治医制 スタッフ医師が複数おり、完全交代制

各病棟対応の体制における勤務の満足度

主治医制、当直医制、複数主治医制、チーム主治医制、それぞれの病棟対応の体制に関して、実際に勤務している医師の満足度はどう異なっているのでしょうか。以下にそれぞれ見ていきます。

主治医制

「満足している」が11%、「まずまず満足している」が44%、「あまり満足していない」が30%、「満足していない」が15%となっています(下図)。


主治医制の満足度

当直医制

「満足している」が23%、「まずまず満足している」が61%、「あまり満足していない」が13%、「満足していない」が3%となっています(下図)。


当直医制の満足度

複数主治医制

「満足している」が15%、「まずまず満足している」が64%、「あまり満足していない」が19%、「満足していない」が2%となっています(下図)。


複数主治医制の満足度

チーム主治医制

「満足している」が25%、「まずまず満足している」が65%、「あまり満足していない」が6%、「満足していない」が4%となっています(下図)。


チーム主治医制の満足度

各病棟対応の体制の満足度を「満足している」「まずまず満足している」の合計の割合として比較すると、主治医制は55%、当直医制は84%、複数主治医制は79%、チーム主治医制は90%と、チーム主治医制での満足度が最も高い結果となっています。

一方で、最も満足度が低い主治医制でも半数以上は「満足」という回答となっています。主治医制、当直医制、複数主治医制、チーム主治医制それぞれの具体的なメリット・デメリットとしてはどのようなことがあるのでしょうか?以下順に見ていきます。

「主治医制」のメリット・デメリット

主治医制に関するメリット(良いと感じている点)・デメリット(良くないと感じている点)、それぞれについて実際に主治医制で勤務している医師の自由回答(一部)は以下のようになっています。

主治医制のメリット

    • 責任感があって仕事ができる (40代男性・消化器外科)
    • 責任の所在がはっきりしているため働きやすい (60代女性・老人内科)
    • 患者が一貫した治療を受けられる (30代女性・一般外科)
    • 患者の状態を詳しく把握している (40代男性・消化器外科)
    • 患者や患者家族とのコミュニケーションが良く取れる (60代男性・一般外科)
    • 専門科に進んでしばらくは主治医制の方が予後などの流れを経験できるので後々の為になる。 (30代男性・整形外科)
    • 患者は主治医に診てもらうので意見が1つで悩まないだろう (30代男性・消化器内科)
    • 自分の患者だけの対応なのでわかりやすい。 (40代女性・形成外科)
    • 余計な横槍が入らない (30代男性・精神科)
    • 自分の考えで治療できる (30代男性・消化器内科)

 

主治医制のデメリット

    • 合併症が起こった時の主治医の負担が大きい (30代男性・整形外科)
    • 夏休みを除きずっとオンコール。遠出できない。 (30代女性・リウマチ科)
    • 主治医同士の連携がない (60代男性・精神科)
    • 基本的に休めない。夜間電話が繋がらないと非難され、疲弊する。 (30代女性・消化器内科)
    • 一人では良い医療は提供できない (40代男性・脳神経外科)
    • 外勤や休暇の間、治療計画がストップする (30代男性・精神科)
    • 24時間365日拘束されている感がある (50代男性・麻酔科)
    • 方針が独善的となりうる。相互批判をしにくい。主治医の疲弊。 (40代男性・消化器外科)
    • 夜でも病棟から細かなことで連絡がくることがある。 (30代男性・腎臓内科)
    • 主治医に能力がない場合、トラブルが起きる (40代男性・小児科)

 

上記を見ていくと、責任感をもって自分の判断で治療でき、患者との信頼も得やすいというメリットがある一方で、24時間365日拘束されていて休めず疲弊する、あるいは治療が独善的になりやすいといったデメリットがあるということが主治医制の特徴といえそうです。

「当直医制」のメリット・デメリット

続いて、当直医制に関して、実際に勤務している医師の感じているメリット・デメリットの自由回答(一部)は以下のようになっています。

当直医制のメリット

    • 主治医にはなるが、夜間、休日は当直医(大学病院などからの派遣)が見てくれるので、夜間起こされることも無い。 (60代男性・循環器内科)
    • 一人主治医制なので他人の干渉をうけずに自由にできます。 (40代男性・消化器外科)
    • 夜間や休日だと主治医の先生を休ませることが出来る。 (40代男性・一般内科)
    • 以前、主治医制で実質休みがなかったが当直医制になりリフレッシュできるようになった。 (40代男性・眼科)
    • 基本的に当直医が夜間など主治医不在時に対応してくれる所 (30代女性・眼科)
    • 夜間・休日がゆっくり休めるようになりました。 (40代男性・消化器内科)
    • 休日が比較的、ストレスフリーで過ごせる (50代女性・一般内科)
    • 夜間や休日に、不必要に呼ばれないこと。 (50代男性・精神科)
    • 主治医が時間外にあまり呼び出されない点。 (30代男性・一般外科)
    • 休日を家族と過ごせる(遠出出来る) (30代男性・消化器外科)

 

当直医制のデメリット

    • 休日に起こったことが明けにうまく伝わらない (50代女性・一般内科)
    • 当直医によって診療・対応の力量にばらつきがある点 (40代男性・一般外科)
    • 緊急の際には、呼び出される可能性はあるだろう。 (30代男性・整形外科)
    • レジデント教育には不適 (30代女性・精神科)
    • 手術対応が必要な場合は術者が限られる (40代男性・眼科)
    • 自分に何かあるときに代わってもらいにくい (30代男性・精神科)
    • 当直医体制のため、発熱しても抗生剤を使用せず解熱剤で経過観察となる。そのほか、必要な処置がされないことが多い。 (40代男性・消化器内科)
    • 患者の経過が夜間休日に変化すると主治医が病態把握できないことが有りうる。 (50代男性・麻酔科)
    • 当直医に主治医の方針と異なる家族へのICや治療を行われてしまうことがる。 (50代男性・一般内科)
    • チーム制ではないため長期休暇が取れない (40代男性・救命救急)

 

主治医制から当直医制になったことで夜間・休日にゆっくり休めるようになったといったメリットがある一方で、当直医の対応が期待と異なっている場合や長期休暇が取りづらいといったデメリットがあるというのが当直医制の特徴のようです。

「複数主治医制」のメリット・デメリット

複数主治医制に関する、実際に勤務している医師の感じているメリット・デメリットの自由回答(一部)は以下のようになりました。

複数主治医制のメリット

    • 合議で方針を決めることで教育に向いている (40代男性・内分泌・糖尿病・代謝内科)
    • 複数主治医だと緊急時の対応がやりやすい。 (40代男性・消化器内科)
    • 他の患者もみんなでみることにしているので経験が増える。 (30代女性・皮膚科)
    • 患者はいつでも尋ねることができるので安心している (50代男性・小児科)
    • 細かい仕事は下級医師がしてくれるので大局をつねに見ている事ができる (40代男性・産科)
    • 土日完全にオフの日がある (30代女性・放射線科)
    • 外勤に行くときに他の医師に対応をお願いできる。 (30代男性・脳神経外科)
    • オンオフがはっきりしている (40代女性・乳腺外科)
    • 複数医師の合議で診療が進められる点。 (40代男性・神経内科)
    • 休日に県外に外出しやすい (30代男性・消化器内科)

 

複数主治医制のデメリット

    • 3人体制なので3人揃って研究会出席が難しいことあり (40代男性・泌尿器科)
    • 休日に行かなければいけない (30代女性・リウマチ科)
    • 患者への説明が医師によって異なることがある (50代男性・小児科)
    • 当直医はいるものの、実質主治医グループが時間外も診療を担当しなければならない点。 (40代男性・神経内科)
    • 対応してもらって文句だけ言う医師がいる (40代女性・乳腺外科)
    • 複数主治医であり、医師の数が多い分、需要と供給のバランスが崩れており、給料が安い (30代男性・脳神経外科)
    • 後期研修医の負担が多くなる (30代男性・消化器内科)
    • 研修医には任せられないので、結局スタッフか後期研修医のどちらかが休日も出勤しなければいけない。 (30代女性・小児科)
    • 入院中の全患者を把握する必要がある。方針が分からない時は対応が遅くなる事がある。 (40代男性・循環器内科)
    • 患者さんからの責任者の見えにくさ、研修医の当事者意識の希薄さ (40代男性・内分泌・糖尿病・代謝内科)

 

上記からは、複数人で合議制で診療を進められることや、休日にしっかり休めるといったメリットがある一方、複数人で対応している分、夜間や休日も主治医としての対応が求められ、後期研修医やスタッフ医師の負担となるといったデメリットがあるのが複数主治医制の特徴として見えてきます。

「チーム主治医制」のメリット・デメリット

最後にチーム主治医制に関する、勤務している医師の感じているメリット・デメリットの自由回答(一部)は以下のようになりました。

 

チーム主治医制のメリット

    • チーム全体で患者を把握できる 一人の主治医が不在時にも柔軟に対応できる (50代男性・消化器外科)
    • 自分が休日や外勤日でも業務がスムーズに進む点 (30代男性・整形外科)
    • 自分ひとりですべてを負わなくてもよくなり、休みの日にわざわざコールがくることもない。 (30代男性・救命救急)
    • 過労はやや防げる (40代男性・消化器内科)
    • チーム主治医の方が、患者さんの病状を把握しやすい。電カルになってますます把握しやすくなった。 (40代女性・皮膚科)
    • 勤務時間がフレキシブル (50代男性・救命救急)
    • 一人の医師の負担が減る。治療方針などをお互いに相談できる。後進の指導体制もとりやすい。 (60代男性・上記以外)
    • 休日、学会で不在の時にも、他の医師が診てくれる (50代男性・消化器外科)
    • 当番以外の医師は、深夜は休める (30代男性・小児科)
    • 主治医チーム内で相談できる (40代女性・産科)

 

チーム主治医制のデメリット

    • 個々の能力にばらつきがあるので監督が大変 (50代男性・呼吸器外科)
    • 患者をみんなでみているが、ICや方針は必ず外来担当主治医が担当し、病棟医のみ先生と比較すると外来担当医(病棟もみている)の負担が大きい。 (30代男性・呼吸器内科)
    • 自分が不在な際に考えとは異なる方向に進むときもあること (30代男性・整形外科)
    • 責任の所在があいまいになり、治療が先伸ばしになることがある。 (30代男性・救命救急)
    • 集団無責任となる可能性がある (50代男性・心臓血管外科)
    • 2名体制なので月の半分は拘束されてしまう (30代男性・眼科)
    • 複数医師によるカンファレンスで診療方針を決定するが、強引な医師の意見が通りやすくなってしまう。医師同士が意見の対立を回避しがちであるため、その場限りのカンファレンスで深みのある診療にならない。その結果、医師の保身に近いような、患者のためにならない診療内容になってしまうことがある。 (40代男性・救命救急)
    • 複数人いるため、決定事項があればそのたびに全員に周知させる必要があり、大変 (30代女性・皮膚科)
    • 患者を一貫してみれないことがある (40代男性・麻酔科)
    • 結局、若者のバックアップは上級医がしなくてはいけない(致し方ないが) (30代男性・小児科)

 

上記を見ると、自分がいない間でも業務がスムーズに進むため安心して休める点や、チーム内で治療方針の相談ができるというメリットがある一方、責任の所在が曖昧になったり、情報共有や意思決定において上手くいかない可能性といったデメリットがあることが、チーム主治医制の特徴といえそうです。

病棟対応の体制に関して印象に残っているエピソード

主治医制・当直医制・複数主治医制・チーム主治医制それぞれに上記のようなメリット・デメリットがあるとすると、それに関連するエピソードもありそうです。医師の自由回答では、実際に以下のようなエピソード(一部)が寄せられました。

主治医制で勤務している医師のエピソード

    • 重症患者がICUに入った時は、3日間で計5時間も眠れず、自宅にも帰れなかった。 (30代女性・消化器内科)
    • 休日に、この日は当直。と、話しても、看護師は”先生”ですよね?と、連絡をする (50代男性・麻酔科)
    • 体調不良で医師が休んでいる間に状態が悪化した患者がいた (30代男性・精神科)
    • 1年前から予定し、おやすみをお願いしていた自分自身の結婚式があったのですが、その時に重症患者がおり、結婚式当日も対応しなければならず、式場でも病院からのコールがあった。後日、患者家族にも自分のお祝いをこんな時にしてという内容の叱責を受けました。患者さまには陳謝し、説明をし、納得はしていただいたのですが、ほかに対応をお願いできる医師がいればいいなと感じました。 (30代女性・血液内科)
    • 連日の呼び出しで、妻から冷たい目で見られた (30代男性・耳鼻咽喉科)

 

当直医制で勤務している医師のエピソード

    • 担当患者が夜間急変時に、当直医が適切に対応してくれた。 (50代男性・精神科)
    • 突然のCPAに対し、オンコール以外時にコールがあった。 (30代男性・整形外科)
    • 別の病棟の担当医が、状態悪化の患者を転送させないまま出張に出かけてしまった。翌日の土曜日に、当直医が増悪時に対応できず、常勤医である私が(患者と初対面でその日は休日にもかかわらず)呼ばれて転院搬送の手続きを行った。 (40代男性・リハビリテーション)
    • 夏休み明けに複数の患者が亡くなっており、衝撃を受けた。 (40代男性・一般内科)
    • ベッドサイドなどで1人主治医で不可能な検査や治療もあり。 (60代男性・循環器内科)

 

複数主治医制で勤務している医師のエピソード

    • 当直二人体制にしてもらうのが大変であった。当直回数は多くなるが、当直の負担は減るので、精神的には楽になった。 (40代男性・小児科)
    • 担当に当たっていると、土日の学会に満足に行けない (30代女性・放射線科)
    • プライベートなこと(冠婚葬祭)で急に休んでもチームに依頼できる (40代男性・消化器内科)
    • 患者にベットに書いてある主治医と会ったことがないと言われた(チームとしてみているが、主治医として記載があるのは病棟に現れない上級医のため) (30代男性・内分泌・糖尿病・代謝内科)
    • チーム以外の患者のことがよくわからない。急変対応した際に検査異常の見落としに気づいた。事前にカンファなどで共有されていれば気づけたと思う。 (30代男性・老人内科)

 

チーム主治医制で勤務している医師のエピソード

    • 誰が ICをするのが決まっていない (30代女性・腎臓内科)
    • 連休中に重症患者がいて、休めないと諦めていたが、チーム制のため他の医師が対応してくれ休みを確保することができた (30代男性・消化器内科)
    • 夜間、オペ患が術後後出血を起こしたが、オンコールが対応してくれた。自分は翌日の朝に知ったが、術者としては教えてもらいたかった気持ちもある。ただ、自分一人が単独主治医制のように動くとバランスを乱すので、難しい。 (40代女性・乳腺外科)
    • 嘔吐の高齢者をイレウスとして治療していたのを、次の医師が、脳梗塞に起因してると見抜いた (60代男性・消化器外科)
    • 自分の当番ではない時に病棟で指示を出したら、看護師に冷たい目で見られた。 (40代男性・呼吸器外科)

自身が病棟業務を担当する上で理想とする体制とその実現可能性

病棟対応のそれぞれの体制にメリット・デメリットがある中で、医師が自身で業務を担当する上で理想とする体制はどのような体制なのでしょうか?アンケートの回答では下図のような結果となりました。


病棟業務を担当する上で理想とする体制

チーム主治医制が41%と最も多く、ほぼ並んで当直医制が40%を占める結果となりました。複数主治医制は10%、主治医制は7%のみとなっています。チーム主治医制、あるいは当直医制というのが医師の病棟対応の体制上は理想とみなされることが多いようです。

それでは、その理想とする体制が自身の勤務先で実現される可能性について、医師はどのように考えているのでしょうか?主治医制・当直医制・複数主治医制・チーム主治医制それぞれを理想とする場合で分けて見ると、以下のようになりました。

主治医制を理想とする場合の実現可能性

「実現できると思う」が46%、「おそらく実現できると思う」が31%、「あまり実現は期待できない」が19%、「実現できないと思う」が4%という結果となっています(下図)。


主治医制を理想とする場合の実現可能性

当直医制を理想とする場合の実現可能性

「実現できると思う」が29%、「おそらく実現できると思う」が43%、「あまり実現は期待できない」が21%、「実現できないと思う」が7%となっています(下図)。


当直医制を理想とする場合の実現可能性

複数主治医制を理想とする場合の実現可能性

「実現できると思う」が10%、「おそらく実現できると思う」が27%、「あまり実現は期待できない」が42%、「実現できないと思う」が21%という結果です(下図)。


複数主治医制を理想とする場合の実現可能性

チーム主治医制を理想とする場合の実現可能性

「実現できると思う」が11%、「おそらく実現できると思う」が21%、「あまり実現は期待できない」が42%、「実現できないと思う」が26%という結果です(下図)。


チーム主治医制を理想とする場合の実現可能性

上記の結果を「実現できると思う」「おそらく実現できると思う」の合計で比較すると、主治医制は77%当直医制は72%の医師が実現できると考えているのに対して、複数主治医制では37%チーム主治医制では32%のみとなっており、複数主治医制ないしチーム主治医制を実現することの難しさを窺わせます。

勤務先の病院で理想の病棟対応の体制を実現するために必要なこと

上記のような難しさもある中、医師が理想とする病棟対応の体制が勤務先の病院で実現されるためには、何が必要になってくるのでしょうか?医師の自由回答(一部)では以下のような意見が寄せられました。

主治医制を実現するために必要なこと

    • 医師の指示の範囲でできる仕組み (50代男性・小児科)
    • 家族の立場に立てば完全主治医制が、話も一貫していて齟齬もなくいいと思う。急性期病院は本来かくあるべき。今勤めている病院は老人病院なので、現状でいいと思われる。 (40代男性・一般内科)
    • 現行のままでいいと思います (50代男性・整形外科)
    • 常勤医師数を増やして、夜間休日の当直を非常勤医師に頼らず回せるようになる。病棟ナースが主治医からあらかじめ指示があっても当直医に念のために確認する、という慣習があるが、これを改める。複数主治医制は医師間で意見や方針がほぼ同じでなければ弊害の方が大きい。 (40代男性・老人内科)
    • 夜間休日は専門医がいない状況を患者さんに理解してもらうこと。 (40代女性・血液内科)

 

当直医制を実現するために必要なこと

    • 医者数の増加 (50代男性・乳腺外科)
    • 看護師の医学知識が不足している場合などは申し送りが不十分になる場合もあるので基礎教育も大事。私も時々講義している。 (60代男性・循環器内科)
    • 当直医のレベルが一定以上に保たれていること (30代男性・救命救急)
    • 当直医制であることの理解。科によって違うらしく、統一を。コメディカルはそうとは知らず、当直医対応時間であっても、主治医に連絡してくる。 (30代女性・内分泌・糖尿病・代謝内科)
    • 患者や患者家族の理解、いつも主治医がいると思わないでほしい。 (30代男性・腎臓内科)

 

複数主治医制を実現するために必要なこと

    • 医師数が多数必要、病院同士の統合が必要となる (40代男性・放射線科)
    • できる限り診療以外はクラークが対応 (50代男性・整形外科)
    • 患者、家族の理解 (40代女性・一般内科)
    • いわゆる屋根瓦式のDr. チームを組んだ上で他スタッフとの合同カンファレンスをもてるとよい。時間がかかりそうだが。 (30代男性・消化器内科)
    • コメディカルが行える業務の拡大 (30代男性・耳鼻咽喉科)

 

チーム主治医制を実現するために必要なこと

    • 医師の絶対数が足りない。賛同してくれるスタッフもいない。個々の医師の技量の差を埋める努力。音声入力やタブレット端末など回診やカルテ記載の時短できるシステム。院外でもグループチャット出来るようなアイテムと医師同士の関係性。 (40代女性・神経内科)
    • 意識改革は望めない。強制的に休みを取らせるように制度改革を行う。 (40代男性・一般内科)
    • 医療機関を集約し、1つの医療機関に同じ診療科の医師が複数在籍できるようにする。また、特定行為看護師数を増やし、彼らに病棟業務の補助をしてもらう。 (40代男性・一般内科)
    • チーム管理加算を創設する。 (40代男性・消化器内科)
    • 院長などの意識改革 (50代男性・一般外科)

一般論として医師が病棟対応をする上で望ましい体制とその理由

これまでは、医師が自身として病棟対応をする上での現状と理想に関する回答でした。それでは一般論として見た場合、医師が病棟対応をする際の望ましい体制はどのような体制なのでしょうか?現在病棟対応をしていない医師も含めて回答を募ったところ、下図のような結果となりました。


一般論として医師が病棟対応をする上で望ましい体制

主治医制が8%、当直医制が34%、複数主治医制が10%、チーム主治医制が47%と、チーム主治医制が半数近くで最も多い結果となりました。自身が担当する場合の理想と比べると、当直医制の割合が少なくなっています。「自分が担当する分には当直医制の方がやりやすいが、一般論としてはチーム主治医制が望ましい」ということもあるのかもしれません。

それぞれの体制を望ましいとする理由については、以下のような自由回答(一部)が寄せられました。

主治医制を望ましいと考える理由

    • 責任の所在がはっきりするから (40代女性・一般内科)
    • 患者さんは、ご家族も含めて、一人の医師に守ってもらっているという意識が強いので。 (50代男性・麻酔科)
    • ひとりの主治医が責任を持って対応する意識が必要。チーム制ではなかなか責任感を持てない。 (40代男性・小児科)
    • 患者と信頼関係を築ける (60代男性・消化器外科)
    • 急性期の入れ替わりの激しい患者の情報を100%共有は困難 (50代男性・一般外科)
    • 複数主治医制は医師間で考え方や方針がほぼ同じでなければかえって弊害が大きい。 (40代男性・老人内科)
    • 患者の立場からすればすべて一人の人間で対応したほうが安心だと思うので。 (30代男性・一般内科)
    • 一貫して患者の病態を把握出来る (40代女性・整形外科)
    • 入院患者に対しては、最もよく理解している主治医が対応するのが好ましいと思います。 (50代男性・放射線科)
    • 主治医が病状を最も正確に把握しおり、直ぐに的確な医療行為ができる。また、患者様の安心感、信頼度も高い。 (70歳以上男性・消化器内科)

 

当直医制を望ましいと考える理由

    • 主治医がしっかり休養を取ることができる (40代男性・整形外科)
    • メインに一人は決めていたほうがよいと思う。 (50代男性・眼科)
    • 主治医制を維持した上で、休みも適度にとれるから (40代男性・一般内科)
    • 精神科医療においては、主治医と患者のとの関係が重要だから。 (50代男性・精神科)
    • 主治医制は365日拘束されている感が否めず、疲弊してしまう。夜間休日は当直医に診ていただきメリハリのある診療が望ましい。 (50代男性・循環器内科)
    • 日中の業務を効率よく行う為にも、睡眠は大切であるから。 (40代女性・消化器内科)
    • 基本は主治医制、24時間365日では精神的、体力が持たないので当直医体制にてその負担軽減とす (50代男性・腎臓内科)
    • 体力がもてば主治医制がいいと思うが、一人の医師の体力に限界があるから。 (30代男性・心臓血管外科)
    • 院内にいなくても、一向に解放されない。例え電話対応であっても、それは時間外勤務だと思うから。 (30代女性・内分泌・糖尿病・代謝内科)
    • 最終的な責任は主治医が負う事になるが、勤務時間外の些細なことは当直医で対応して欲しいから (50代男性・乳腺外科)

 

複数主治医制を望ましいと考える理由

    • 年長の医師といえど単独では誤った治療を行う可能性があるから (30代男性・内分泌・糖尿病・代謝内科)
    • 若手には学ぶ機会が提供され、スタッフは休息時間ができる。 (40代男性・一般内科)
    • 1人の主治医が、365日24時間担当するのは不可能であるから。 (50代男性・眼科)
    • 初期・後期研修医の経験が深まり勉強になる (40代女性・一般内科)
    • スタッフが多いと「船頭を多くして船山に登る」可能性がある。 (40代男性・消化器外科)
    • 完全に主治医が一人で対応すると、休みが全く取れなくなってしまうから。チーム主治医では、治療方針が一本化できなくなる危険性があるので。 (50代女性・麻酔科)
    • 研修医を含めた主治医が複数いるほうが患者一人に多くの時間をかけることができるため。 (40代女性・精神科)
    • 主治医制だと年中無休となり医師の負担が大きくなるため。 (30代男性・皮膚科)
    • 複数の医師の目が入ることで、患者の診療に細かい所まで目が行き届くこと、医師の側の休みも確保できること。 (30代男性・神経内科)
    • 教育、労務分担、費用対効果のバランスがよい (40代男性・精神科)

 

チーム主治医制を望ましいと考える理由

    • 夜間の対応も交代ですることで疲労蓄積を防げる (50代男性・呼吸器内科)
    • 主治医制はやりがいがあるが、プライベートが何もできない (40代女性・乳腺外科)
    • 一人で患者さんを診療するのは医療の質が間違いなく落ちる。 (50代男性・一般内科)
    • 労働基準法を基準に考えると勤務時間外に対応することは望ましくない。 (50代男性・一般外科)
    • 複数の医師で患者把握ができるため見落としが減少する。 (40代男性・麻酔科)
    • チームで交代制だとしっかり引き継ぎができますし、患者さん自身も夜間でも主治医がいる安心がある (40代女性・眼科)
    • 情報を共有する人間が多い方が、選択肢が広がる。責任の所在が難しいが。 (40代男性・消化器内科)
    • オンオフの切替え、情報共有のためのプレゼンをするため、プレゼンスキルがおのずと上がる (30代男性・皮膚科)
    • 社長業や開業医の院長をしている人間や教授が最終責任者として24時間365日ベルを持つのはアリかなと思うし、それに見合った報酬を取れば良いと思う。しかし、被雇用者が24時間365日ずっとベルを持たない状況で、病院の半径数キロから外に出れないのは異常と思う。主治医を一人にすると必ず連絡が入るので、24時間365日ずっとベルを持たないといけないからそもそも主治医というのをつくるのがどうかと考える。 (30代男性・麻酔科)
    • 現在の主治医制は心理的にも肉体的にも主治医の負担が大きすぎると思うので。複数の視点、チェック体制が存在することは医師はもちろん患者さんにとってもメリットになる。 (50代女性・精神科)

主治医制など、医師が置かれている勤務環境に関する自由回答

最後に、主治医制など病棟対応の体制を含め、医師が置かれている勤務環境に関して自由回答を募ったところ、以下のような意見(一部)が寄せられました。

    • 当直後にはインターバルを設けて睡眠や休養時間を作らないと医療過誤や医師の労災リスクも上がる (40代女性・精神科)
    • 呼び出しの際の手当てがつきませんので、手当てをつけて欲しいです。 (40代男性・消化器外科)
    • せめて当直明けは休みまたは半休にするべき。 (50代男性・眼科)
    • 働き方改革は進めどそのために必要な医師数は絶対的に不足している (40代男性・内分泌・糖尿病・代謝内科)
    • オンコールや主治医への電話などがやすやすとされるところは、よくないと思っております。 (30代男性・神経内科)
    • 医師の増員が必要だが、リハビリ科を志望する医師が少ない上、田舎には来てくれない。 (40代男性・リハビリテーション)
    • 医療は、24時間365日対応を求められるものであるので、主治医制は負担が多すぎる。 (40代女性・一般内科)
    • on/offがはっきりしていないと、モチベーションも上がらないと思う。 (30代男性・心臓血管外科)
    • 夜間や休日を完全に休みにしないと労力の大きい科には行く人がいなくなる。現状は医師の使命感や奉仕の心で成り立っているのではないでしょうか? (50代男性・一般内科)
    • 急性期病院では完全主治医制でした。精神的にとても大変で気が休まることがなかったです。今後は急性期病院でもなるべく医師が休めるように、チーム主治医制になることを期待します。 (40代男性・消化器内科)
    • 主治医が24時間365日患者さんに責任をもつべきだと指導されてきたが、この体制は限界がきていると思う。育児中の女性医師の活用を考える上でも交代制の定着が望ましいと思う。 (30代女性・消化器外科)
    • 主治医制である限り、主治医でしかわからないことは必ずあり、緊急であれば、夜間・休日を問わず病棟からの連絡を受けざるを得ない。 (40代男性・一般内科)
    • 患者側からも休日は主治医でなくてもしかたないとの認識が必要 (60代男性・麻酔科)
    • 科によって忙しさが異なるが、科に複数の医師がいればカバーしあえるので現在はやや不公平さが感じられる。 (50代男性・循環器内科)
    • 医師側よりは、患者側からの要望で1人主治医制がなかなか改善されないと思います (30代女性・皮膚科)
    • まさに、日々、綱渡りですね。何もトラブルが起きなかったから良かった!の繰り返しです。 (60代男性・婦人科)
    • 夜間、休日まで主治医がすべて対応するのは困難。それが無くなることで日中の診療の質も上がる。ただし日本は主治医制が根強いので患者の理解も必要。 (30代男性・整形外科)
    • 患者への診療行為と違い、診療に伴う記録作成に遥かに時間を使うため、それが無ければ早く済んでいるはずの仕事がそうではなくなり、ばかばかしい。 (40代男性・耳鼻咽喉科)
    • 医療全体が労働時間を規制すれば自ずと各科で対応していくと思う。 (30代男性・精神科)
    • 土日や夜間に病状説明を求められるなど非常識な要求も患者家族からあるため、入院時に予め平日の勤務時間内以外の病状説明は急変時を除き行わないと説明している。 (40代女性・神経内科)

 

以上のアンケートで寄せられた結果や意見が、病棟対応の体制を含め、医師にとって納得のいく勤務環境を実現する上で、一つの参考になれば幸いです。

 

【参考】回答者の属性

調査概要

調査内容 主治医制に関するアンケート調査
調査対象者 株式会社メディウェルに登録している医師会員
調査時期 2019年6月24日~2019年7月4日
有効回答数 1,883件
調査公開日 2019年7月30日

 

年齢


回答者の年齢

 

性別


回答者の性別

 

診療科


回答者の診療科

 

地域


回答者の地域

 

 
<注>
[1]医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」厚生労働省 医師の働き方改革に関する検討会、2018年2月27日
[2]今後は複数主治医制に向かう、医師の7割が期待」日経メディカル、2019年3月27日