女性医師にとって働きやすい病棟対応の体制とは?:主治医制に関する医師1,883名のアンケート結果より

【性年齢別】主治医制に関するアンケート結果

 
主治医制や複数主治医制といった病棟対応の体制に関する医師の考え方は、性別や年齢によって違ってくるのでしょうか?また、違うとすればそこにはどのような理由が考えられるのでしょうか?2019年6月~7月にかけて実施した主治医制に関する医師アンケートをもとに検証していきます。

<前提:本調査における病棟対応の体制の分類>

体制の分類 体制の説明(詳細)
主治医制 休日や夜間を含め何かあれば主治医が対応
当直医制 主治医は1人だが、休日や夜間は当直医が対応
複数主治医制 スタッフ医師は1人であとは初期・後期研修医
チーム主治医制 スタッフ医師が複数おり、完全交代制

性別では女性医師で、よりチーム主治医制が望まれる傾向

医師の病棟対応において一般的に(自身の業務に限らず)望ましいと思う体制について、男性医師(N=1,460件)・女性医師(N=423件)それぞれの回答結果は下図のようになっています。


【男性医師】望ましい病棟対応の体制


【女性医師】望ましい病棟対応の体制

チーム主治医制を望ましいと思う医師が男性の場合は44%なのに対して、女性では57%と多くなっています。

年齢別では若手医師でややチーム主治医制がより望まれる傾向

同様に年齢別に20代・30代(N=660件)、40代(N=629件)、50代以上(N=594件)の3区分で検証したところ、以下のような結果となりました。


【20代・30代】望ましい病棟対応の体制


【40代】望ましい病棟対応の体制


【50代以上】望ましい病棟対応の体制

チーム主治医制を望ましいと考える医師の割合で比較すると、20代・30代は51%、40代は47%、50代以上は43%と、年齢が若いほどチーム主治医制を望ましいと考える医師の割合が高くなっています。ただし、男女間の違いと比べると年齢別の違いはそれほど顕著ではないといえます。

チーム主治医制(交代制)を望ましいと考える女性医師の自由回答

女性医師でチーム主治医制(交代制)を望ましい考える場合が多いのには、どのような背景があるのでしょうか?チーム主治医制を望ましいと考える女性医師に、その理由について自由回答を募ったところ、以下のような回答(一部)がありました。

一人主治医制は負担が大きい

    • 24時間主治医が対応することは医師自身を犠牲にしているから。 (29歳以下女性・眼科)
    • 元々内科で病棟対応(主治医制)もしていたが、家庭の事情で夜間や土日の対応ができなくなり、内科をやめる事になった。肉体的、精神的にもチーム主治医制にかえていかないと医者が減ると思う。 (30代女性・病理診断科)
    • 一人主治医だと休みがない。しかし当直医の対応のみだと分からないことも多いと思う (30代女性・内分泌・糖尿病・代謝内科)
    • 休日に主治医が呼び出されず、休みが確保できるように。 (40代女性・婦人科)
    • 365日オンコールだとキツすぎる (40代女性・耳鼻咽喉科)
    • 患者サイドの医療要求は以前よりはるかに複雑かつ面倒になっており一人で全て抱え込むこと自体限界になっている。 (40代女性・一般内科)
    • 一人が昼夜休日を問わずに患者を担当するには無理がある。 (30代女性・消化器外科)

 

チームで治療方針を相談して決定できる

    • 協議しながら対応できるから (50代女性・呼吸器内科)
    • 以前の勤務先でチーム主治医制だったが、オンオフがはっきりし、また勤務中も忙しい外来の途中で病棟に呼ばれることがなく、治療方針も複数の医師の意見を参考にできて患者にもメリットが大きいと感じた。 (30代女性・内分泌・糖尿病・代謝内科)
    • 客観的な評価など、患者の状態把握や評価、治療にも生かされる。 (30代女性・消化器内科)
    • 多様な意見を議論しつつより良い治療選択や判断が可能 (30代女性・小児科)
    • 主治医制は医師にとっても患者にとっても安全ではない (40代女性・腎臓内科)
    • 様々な意見がある方が良い (40代女性・婦人科)
    • 複数の目があった方が安全性も担保されやすいし、お互い色々カバーできる。 (30代女性・皮膚科)

 

子育て中の医師でも勤務しやすい

    • 子育て中の医師も治療に参加できる (30代女性・老人内科)
    • 妊娠や子育てなどフルタイムでは時短でないと働けない人が多くなって来ている。その状態で完全主治医制を実施すると、フルタイムで働けるスタッフにばかり負担がかかることになるから。 (30代女性・小児科)
    • 育児中や介護のあるスタッフでも勤務しやすくなる。当直医制だと専門外の対応が難しい場合がある。 (30代女性・呼吸器外科)
    • 子育て中等の医師も働きやすい様に (40代女性・麻酔科)
    • 自身の子供の教育、親の介護などの転機が次々とおとずれ、自己完結は到底難しい。 (50代女性・精神科)
    • 子育て中のため、複数スタッフでの体制は安心して勤務できるため。 (40代女性・一般内科)
    • 私生活と仕事の両立のため (30代女性・婦人科)

 

女性医師が仕事と家庭を両立する上で交代制勤務は有効か?

上記の自由回答にも見られるように、女性医師においてチーム主治医制(交代制)の勤務がより望まれる背景の一つには、子育てなどの家庭の事情があると考えられます。

実際、子どもがいる場合、既婚女性の常勤勤務医は勤務時間が短くなる傾向がある一方、既婚男性の常勤勤務医は勤務時間が長くなる傾向にあるという厚生労働省の調査[1]があります(下図)。


既婚女性の常勤勤務医は子どもがいると勤務時間が短くなるが男性の場合は逆に長くなる

これは男性医師に比べて女性医師において家庭での家事や育児の負担が大きくなっており、その分女性医師の勤務時間が制約されているためと考えられます。

このような状況に対して、厚生労働省の「女性医師のさらなる活躍を応援する懇談会」の報告書では、病院での診療体制に関して以下のような課題と取り組みをまとめています。

【課題】

・医師の業務は、勤務時間外でも患者の急変への対応などにより、業務が不規則になりやすく、これらの診療に加え、様々な業務により、特に病院勤務医が厳しい勤務環境に置かれていることは既に指摘されているところである。
・また、1人の患者につき1人の主治医が担当する主治医制をとる中で、育児等を抱えた医師が主治医として多数の患者を担当する場合、夜間の急変を含め対応することが難しく、結果として、周囲の負担が増える場合がある。

【取組の方向性】

・多職種が相互に連携し、業務分担を図るチーム医療の推進や、事務補助職を活用することは、育児等を抱える医師を含めた医師全体の負担を軽減するとともに、職場全体の勤務環境の改善にもつながる。
・また、育児等を抱える医師を含めた複数の医師が、チームとなって診療を行うことにより、主治医制では患者を担当することが難しい医師でも診療に参加することができるなど、本人の状況に応じて役割を果たすことができる。また、急な欠勤等が生じても必要な医療が提供できるように、全体の診療体制を整備することも重要である。
・医療機関等やその中の診療科の医師が少ない職場では、地域の医療機関との連携や集約化を進めることにより、診療体制の効率化を図ることも必要と考えられる。

【取組例】

・医療関係職や事務職員の役割分担の確認
・事務補助職の活用
・複数主治医制の導入
・カンファレンスの勤務時間内実施
・説明用のパンフや動画を用いた診療の効率化

女性医師のさらなる活躍を応援する懇談会 報告書」厚生労働省、平成27年1月23日、13ページ
※太字は筆者。

 

上記に見られるように、1人主治医制からチーム主治医制(交代制)へ移行することが育児中の医師にも働きやすい環境を整える上で有効な取り組みとされています。

ただし、医師1,883名のアンケートでは、主治医制とチーム主治医制それぞれにメリット・デメリットがあることや、チーム主治医制の実現を難しいと考えている医師も多いという結果も出ていました(参考:主治医制に関する医師1,883名のアンケート結果)。診療科によっても、チーム主治医制でなく当直医制を理想とする医師が多い科もあり、一概には言えない状況です。

しかし、女性医師の割合は年々増えてきており、今後も確実に増えていきます。 現時点の女性医師の比率は全体では21.1%ですが、30代では31.4%、20代では34.6%を占めています[2]

現在はいわば、男性医師がほとんどを占めていた職場環境から、女性医師も含めて働きやすい環境への転換が迫られている時期といえます。

チーム主治医制(交代制)への移行も選択肢の一つとして検討しつつ、より多くの病院が、子育て中の女性医師を含めた、様々な状況にある医師が活躍できるような職場になっていくことを後押しできるよう、今後も医師転職研究所では一次情報に基づく確かな情報を発信していきます。

 
<注>
[1]医師の勤務実態等について」第1回 医師の働き方改革に関する検討会(厚生労働省) 資料3、平成29年8月2日、11ページ
[2] 厚生労働省「平成28年 医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」より。