医師のオンコールや当直「待機」は労働時間に含めるべき?―医療経済研究より

病気やケガは昼夜・休日問わず発生し状態も変化していきます。そのような患者のタイミングに合わせるため、医師には実際に診療に従事している時間以外に、オンコールや当直といった「待機」の時間も必要になってきます。

しかし、オンコールや当直は労働時間にみなされない場合もあるなど、実働時間に比べて待機の時間に対する法律や報酬の面での評価は相対的に低くなっています。果たして、この状況は適切なのでしょうか?オンコールや当直の待機の負担について勤務医はどのように感じているのでしょうか?以下では、これに関して研究した最近の論文を紹介します。

「待機」時間の負担について

 

オンコールや当直「待機」の時間は実働時間以上に医師の勤務意欲を低下させる

医療経済研究(医療経済学会雑誌/医療経済研究機構機関紙)に掲載されたこの論文[1]では、所定外の労働時間を実働時間と待機時間に分け、また待機時間の中でも当直とオンコール業務に分けて、それぞれの医師が「当直・オンコールの回数をどれだけ減らしたいと希望しているか?(夜間休日勤務の減少希望回数)」について検証しています。

常勤勤務医8,822人を対象として研究した結果、実働時間、待機時間のどちらも夜間休日勤務の減少希望回数を増加させるものの、1時間あたりの影響力は待機時間が実働時間の1.8倍となりました。

この結果から、論文では

法的・報酬的評価の低い労働時間が必ずしも医師にとって負担が軽いとは限らず、労働時間規制において実働時間の規制のみが行なわれた場合や、待機時間を完全に除外して勤務間インターバルが設定された場合、医師の勤務意欲の低下を防ぐ効果は限定的である可能性が示唆された。[2]

と考察しています。

「待機」の時間だからといって負担が軽いわけではなく、むしろ労働時間として評価されにくい分、その前後の勤務時間も含めた「待機」の時間は、医師にとって実働時間以上に身を削ることになるのかもしれません。

待機時間の中でも評価が低いオンコールの負担も軽くない

さらに待機時間の中でも一定の報酬上の評価がある当直勤務と、報酬上の評価が低いオンコール勤務を比較すると、どのような結果になるでしょうか?

過去に医師が宿日直・宅直勤務の時間外手当を求めた裁判[3]では、病院内での宿日直勤務(当直)は労働時間に認定したものの、宅直勤務(オンコール)は労働時間として認められませんでした。これを踏まえると、オンコールはあまり負担になっていないように思えます。

しかし今回の研究では、オンコールの割合が高いほど現状維持を望む医師が多いものの、減少を希望している医師に限ると、オンコールの割合が高いほど減少希望の回数が多いという結果でした。

この結果をもとに論文では、

法的・報酬的評価がなされていないオンコール業務が、必ずしも医師にとって負担が軽いわけではない事が示唆された。[4]

と考察しています。

実際に医師転職研究所を運営するメディウェルには、当直やオンコールの負担を減らしたいという希望をもつ多くの医師の方々から相談をいただいています。本研究を踏まえると、これは単に勤務時間を減らしたいというだけでなく、現在の勤務先で当直やオンコールの負担が適切に評価されていないということが影響していることも考えられます。

たとえ「待機」の時間であっても、適切な医療を届けるために欠かせない負担であれば、その負担に応じて労働時間としてしっかりと評価していくことが必要なのかもしれません。

 
<注>
[1]労働時間種別による病院勤務医の夜間休日労働の勤務意欲にもたらす影響の検討」(『医療経済研究』:医療経済学会雑誌医療経済研究機構機関紙 Vol.30 No.2 2018)、佐野 隆一郎・橋本 英樹・井元 清哉、2019年5月16日発行、68~79ページ。
[2] 同、68ページ。
[3] 奈良県(医師時間外手当)事件、最高裁第三小法廷、平成25年2月12日上告棄却。
[4] 医療経済研究、76ページ。